三十路の魔法使い

高柳神羅

文字の大きさ
21 / 164

第20話 妖異狩りで儲ける人たち

しおりを挟む
 腹が膨れた俺たちは冒険者ギルドに訪れていた。
 手軽にこなせる仕事を見繕うためである。
 現在俺の手元にはそれなりの日数を不自由なく暮らせるくらいの金があるが、いつ突発的な事故が起きて大きな出費が発生するか分からないし、街に立ち寄れる間は少しずつでも堅実に稼いだ方が良いと思うのだ。
 金持ちを目指しているわけではないが、金は幾らあっても困るものじゃないからな。
 そういうわけで、先程からフォルテたちと手分けしてボードに貼られた仕事クエストを物色しているのだが……
 驚いたことに、この冒険者ギルドで斡旋している仕事クエストはダンジョンで妖異の肉や素材を手に入れてくるといった内容のものばかりで、ごく普通の薬草採集みたいな一般人でも請けられそうな内容のものが殆どないのだ。
 何でこんなに仕事内容が偏っているのかと職員のお姉さんに尋ねてみると、この街の周囲に広がっているアマヌ平原は何もない土地なので、薬草なんかの物資は基本的に他の街から仕入れているのだという答えが返ってきた。それに加えてダンジョンで調達できる物資の方が遥かに需要が高く商売になるので、自然とそちらをターゲットにした調達任務の方が数が多くなってしまうのだそうだ。
 確かに商売としてはそれが正しい考え方なのだろうとは思うが……
 この街では、楽な仕事は期待できそうにないな。
 しかし、せっかく街に来ているのだから、多少は所持金を増やしておきたいという気持ちもある。
 ここは、なるべく楽そうな内容の仕事クエストを選ぶことにしよう。
 とはいうものの。
 妖異の知識が全くない俺が受注書を見ても、その内容が楽なものなのかどうかは全く分からない。
 バイオレットヘッジホッグの針の調達依頼。
 ロックリザードの肉の調達依頼。
 スクリームバードの肉の調達依頼。
 名前から何となく蜥蜴かな、鳥かな、くらいの想像はできるのだが、分かるのはそれくらいで肝心の大きさだとか特徴については全然予想が付かない。
 そういう情報を少しくらいは書いておいてくれればいいのだが。受注書の内容は必要最低限のことしか書かれていないので本当に不親切だ。
 仕方ない。フォルテたちに楽そうな内容の仕事を選んでもらおう。
「なあ。俺は妖異の名前を見ても何なのか分からないから、あんたたちの方で仕事を選んでくれないか?」
 俺の言葉に二人は頷いて、受注書を見て回り──
 少しして、それぞれ目に適ったらしい受注書を一枚ずつ持って俺のところにやって来た。
「これなんて、どうかしら。割と有名どころだと思うわ」
 フォルテが選んだのは『ラミアの肉の調達依頼』。ラミアは妖異の中でも有名な部類に入るらしい。
 ラミアの名前は、俺もファンタジー小説で読んだことあるから知っている。あれだろ、人間の女の上半身に蛇の下半身が合体したいわゆる蛇女と呼ばれている生き物だ。
 それの肉の調達って……一体何処を食用にするんだ? 一歩間違ったら人肉と同じような扱いになると思うのだが。
 妖異の肉は栄養豊富で美味いといっても、人肉は流石に食べたくないぞ。俺は。
「一応、手堅いところを選んだつもりです」
 一方ユーリルが持ってきたのは『バレット・マンドラゴラの調達依頼』。マンドラゴラといえば普通は植物を思い浮かべるものだが、こいつは植物に限りなく近い性質を持ったれっきとした妖異らしい。
 マンドラゴラって……確か、地面に植わってるやつを引っこ抜いたらとんでもない叫び声を上げる植物だったよな。
 ダンジョンの中に畑でもあるのだろうか。いまいちイメージが沸かないな。
 ユーリル曰く、このバレット・マンドラゴラはマンドラゴラの名前は付いているが叫び声は上げないとのこと。
 俺は二枚の受注書を見比べて、考えた後、『バレット・マンドラゴラの調達依頼』の方を請けることにした。
 ラミアは人間の上半身を持ってる分知能が高そうだし、その分叫ばない植物よりも手強そうに思えたからだ。
 成功報酬は八百ルノ。バレット・マンドラゴラを三体、丸のまま冒険者ギルドに持って来て納品すれば依頼達成だ。
 俺には圧縮魔法があるから、ダンジョンから持ち帰る時は小さくして鞄に詰めてくればいいだろう。
 ダンジョンか……一体どんな場所なんだろうな。
 心躍る気持ちと不安な気持ちが入り混じった複雑な気持ちを抱きながら、俺は受注書をカウンターに持って行った。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

処理中です...