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第39話 ヴォドエル現る
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牧場予定地に属性石を埋める。
埋めたら、メネに魔法を掛けてもらって──
「これでよし、と」
ふう、とメネは翳していた手を下ろした。
「後は完成するのを待つだけだね」
「何だか感慨深いね。これで牧場作りが終わりだなんて」
僕が言うと、メネはううんと首を振った。
「終わりじゃないよ。これからうんとたくさんのエルをお迎えして、賑やかにしていくって大事なお仕事があるんだから」
「そっか。それもそうだね」
そのためには、たくさんの卵を育てて孵していかないと。
これからが正念場だ。
僕は気合を入れ直した。
「それじゃ、家に戻ろうか」
僕たちは家に引き返そうとして──
突如として生じた謎のプレッシャーに気圧されて、その場に足を止めた。
何だ……今の。
辺りを見回す。
赤い空。荒れた大地。遠くに連なる山々。それらが順番に目に入り、
牧場予定地に立つ一人の男の姿に目が留まった。
切れ長の目に、頬には何かの文字と思わしき刺青。長い黒髪は後ろでゆったりと束ねている。
服装は、アラキエルと似ている。灰色を基調とした装束に煌びやかな宝飾品を数多く身に着け、手には黒い色の錫杖を持っている。
この世界に住んでいる人間……とは思えない姿の男だ。
「……ヴォドエル」
メネが小さな声でそう呟くのが聞こえた。
ヴォドエル……って、神界には滅多にいないというカエラの主人である神の名前だ。
いつか此処に来るかもとは思っていたが、今現れるとは。
牧場作りを邪魔しに来たのか?
今は牧場作りの魔法を土地に掛けたばかりだ。妨害されたら土地が目茶苦茶になってしまう。
警戒しながら相手を見据える僕の隣で、メネが彼に近付きながら尋ねた。
「ヴォドエルも、エルの卵を持って来てくれたの?」
……そうか。アラキエルがヴォドエルの話をしていた時メネはその場にいなかったから、彼女はヴォドエルがカエラの主人であることを知らないんだ。
僕は慌ててメネに呼びかけた。
「メネ、近寄っちゃ駄目だ! そいつがカエラの主人なんだ!」
「え?」
「……ラファニエルの計画が、此処まで進んでいるとはな」
辺りを見回して、ヴォドエルが静かに呟いた。
「カエラの説得は無駄だったか。全く、役に立たぬ奴だ……使えん下僕を持つと苦労するとはいうが、まさか私が直々に出ていかねばならなくなるとはな」
カエラを使えない下僕と切り捨てるとは、冷徹な奴だ。
まさに、僕がイメージしていた通りの邪神である。
僕は油断なくヴォドエルを見据えた。
ヴォドエルは神だから、神の掟のお陰で下界のものである僕や牧場に直接何かを仕掛けてくることはないだろうが、メネは下界の存在ではない。メネに手を出してくることは十分に考えられる。
いざという時は、僕が身を挺してメネを守らなければ。
「カエラ」
ヴォドエルがカエラの名を口にする。
すると、何処からか暗い表情をしたカエラが姿を現した。
「この有様は何だ。ラファニエルの計画を全く阻止できていないではないか」
「……後一歩というところで邪魔されるのよ。この前なんて直々にラファニエルが出てきたのよ」
「言い訳は聞かん」
カエラの言葉をすっぱりと切り捨てて、ヴォドエルはすっと錫杖を持った手を僕たちの方へと向けた。
「今度こそ確実に潰せ。ラファニエルの計画は、何としても阻止しなければならん」
「……分かってるわ」
カエラが前に出てきた。
鎌を取り出して、それを構えながら、彼女は言う。
「もう後がない……何としても此処で、この牧場を潰してみせるわ!」
「後ちょっとだっていうのに……邪魔はさせないわ!」
メネも対抗するように棒を手中に生み出した。
カエラは追い詰められている。普段は感じられる余裕が一切感じられない。
きっと、彼女はなりふり構わず向かってくるだろう。
だが、それを大人しく受け入れられるほどこちらもお人好しのつもりはない。
何としても彼女を退けてみせる。そのためには、僕もただ黙って見守っているわけにはいかない。
僕も、メネと一緒に戦う。彼女に、この牧場作りが如何に大切なことなのかということを分かってもらうのだ。
「かかってきなさい、メネ! 最後の勝負よ!」
「望むところよ!」
妖精たちが激突する。
ヴォドエルは、それを何処か冷めたような目線で見つめていた。
埋めたら、メネに魔法を掛けてもらって──
「これでよし、と」
ふう、とメネは翳していた手を下ろした。
「後は完成するのを待つだけだね」
「何だか感慨深いね。これで牧場作りが終わりだなんて」
僕が言うと、メネはううんと首を振った。
「終わりじゃないよ。これからうんとたくさんのエルをお迎えして、賑やかにしていくって大事なお仕事があるんだから」
「そっか。それもそうだね」
そのためには、たくさんの卵を育てて孵していかないと。
これからが正念場だ。
僕は気合を入れ直した。
「それじゃ、家に戻ろうか」
僕たちは家に引き返そうとして──
突如として生じた謎のプレッシャーに気圧されて、その場に足を止めた。
何だ……今の。
辺りを見回す。
赤い空。荒れた大地。遠くに連なる山々。それらが順番に目に入り、
牧場予定地に立つ一人の男の姿に目が留まった。
切れ長の目に、頬には何かの文字と思わしき刺青。長い黒髪は後ろでゆったりと束ねている。
服装は、アラキエルと似ている。灰色を基調とした装束に煌びやかな宝飾品を数多く身に着け、手には黒い色の錫杖を持っている。
この世界に住んでいる人間……とは思えない姿の男だ。
「……ヴォドエル」
メネが小さな声でそう呟くのが聞こえた。
ヴォドエル……って、神界には滅多にいないというカエラの主人である神の名前だ。
いつか此処に来るかもとは思っていたが、今現れるとは。
牧場作りを邪魔しに来たのか?
今は牧場作りの魔法を土地に掛けたばかりだ。妨害されたら土地が目茶苦茶になってしまう。
警戒しながら相手を見据える僕の隣で、メネが彼に近付きながら尋ねた。
「ヴォドエルも、エルの卵を持って来てくれたの?」
……そうか。アラキエルがヴォドエルの話をしていた時メネはその場にいなかったから、彼女はヴォドエルがカエラの主人であることを知らないんだ。
僕は慌ててメネに呼びかけた。
「メネ、近寄っちゃ駄目だ! そいつがカエラの主人なんだ!」
「え?」
「……ラファニエルの計画が、此処まで進んでいるとはな」
辺りを見回して、ヴォドエルが静かに呟いた。
「カエラの説得は無駄だったか。全く、役に立たぬ奴だ……使えん下僕を持つと苦労するとはいうが、まさか私が直々に出ていかねばならなくなるとはな」
カエラを使えない下僕と切り捨てるとは、冷徹な奴だ。
まさに、僕がイメージしていた通りの邪神である。
僕は油断なくヴォドエルを見据えた。
ヴォドエルは神だから、神の掟のお陰で下界のものである僕や牧場に直接何かを仕掛けてくることはないだろうが、メネは下界の存在ではない。メネに手を出してくることは十分に考えられる。
いざという時は、僕が身を挺してメネを守らなければ。
「カエラ」
ヴォドエルがカエラの名を口にする。
すると、何処からか暗い表情をしたカエラが姿を現した。
「この有様は何だ。ラファニエルの計画を全く阻止できていないではないか」
「……後一歩というところで邪魔されるのよ。この前なんて直々にラファニエルが出てきたのよ」
「言い訳は聞かん」
カエラの言葉をすっぱりと切り捨てて、ヴォドエルはすっと錫杖を持った手を僕たちの方へと向けた。
「今度こそ確実に潰せ。ラファニエルの計画は、何としても阻止しなければならん」
「……分かってるわ」
カエラが前に出てきた。
鎌を取り出して、それを構えながら、彼女は言う。
「もう後がない……何としても此処で、この牧場を潰してみせるわ!」
「後ちょっとだっていうのに……邪魔はさせないわ!」
メネも対抗するように棒を手中に生み出した。
カエラは追い詰められている。普段は感じられる余裕が一切感じられない。
きっと、彼女はなりふり構わず向かってくるだろう。
だが、それを大人しく受け入れられるほどこちらもお人好しのつもりはない。
何としても彼女を退けてみせる。そのためには、僕もただ黙って見守っているわけにはいかない。
僕も、メネと一緒に戦う。彼女に、この牧場作りが如何に大切なことなのかということを分かってもらうのだ。
「かかってきなさい、メネ! 最後の勝負よ!」
「望むところよ!」
妖精たちが激突する。
ヴォドエルは、それを何処か冷めたような目線で見つめていた。
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