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第19話 店主、腹を括る
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「それじゃあ明日、また此処に来るわ。宜しくね」
帰っていくマテリアさんを見送りながら、僕は本日何度目か分からない溜め息をついた。
……引き受けてしまった。例の遺跡調査の依頼。
だって、引き受けるって言うまで離さないって言うんだもの……
あの攻撃は独り身には辛いよ。
僕はつい思い出しそうになる彼女の胸の感触を首を振って追い払いながら、作業台の上に無造作に置かれた革袋の口を開いた。
中には千ダイル、金貨十枚が入っていた。
これは、前金だ。彼女が、依頼料の半分を先払いしてくれたのだ。
残りの半分は、遺跡調査が終わったら支払ってくれるらしい。
僕は金庫に金貨を片付けた。
──錬金術の腕しか当てにならない人間にこの仕事を頼むなら、わざわざ嫌がる僕を選ばなくても王都にいる錬金術師に頼めばいいんじゃないかって気はするのだが、決まってしまった話は仕方がない。
マテリアさんは魔術師としてもそれなりの腕前があるらしいし、万が一戦わなければならない場面に遭遇した時は、遠慮なく彼女の力を当てにすることにしよう。
僕は魔術師じゃないから戦えないって言ってあるから、そのことは彼女も承知してくれるだろう。
だけど……遺跡か……
遺跡は魔物よりも罠の方が恐ろしい場所だ。魔術師よりも罠解除のプロを雇うべきだと思うのは僕だけなんだろうか?
一人で悶々と考えていると、外から見知った顔が店に入ってきた。
「聞いてよシルカ。今そこで、凄い派手な美人とすれ違ったんだけど──」
大きな革袋を担いだフラウは、僕の沈んだ様子を見て小首を傾げた。
「……何かあったの? 眉間に皺寄せて怖い顔したりして」
「……何だ、あんたか」
僕は作業台の横に置いてあった木箱を作業台の上に置いた。
箱の蓋を開けて、中から黒い色の石を取り出す。
これは、鉄鉱石だ。鉄製品を作る時には欠かせない鉱石である。
兼業で採掘師をやっている冒険者が、時々売りに来てくれるのだ。
「仕事でね。レオノア高原にある遺跡に調査に行くことになった」
「ああ、最近発掘されたっていう遺跡ね。知ってるよ」
フラウは革袋を床に下ろしながら、言った。
「噂じゃルマの時代よりも古い遺跡なんだってね。仕掛けだらけでろくに探索ができない場所だって冒険者仲間が言ってた」
「知ってるのか」
「あたしも近々見に行こうって思ってた場所だから。情報収集はそれなりにしてるよ」
仕掛けだらけ、か……予想以上にとんでもない目に遭いそうだな。
ますます行きたくなくなった。
「そっか……遺跡に調査に、ねぇ」
そこまで言って、何かを思い付いたらしく笑顔を浮かべながらフラウは僕の隣までやって来た。
「ね。その遺跡調査、あたしも一緒に行ってあげようか」
「は?」
僕は思わず彼女の方を見た。
「一緒に、って……宝の発掘に行くわけじゃないんだぞ。儲かるような話じゃないぞ?」
「別にお金のことはいいよ。単純にあたしがその遺跡を見物したいってだけだし」
彼女の目は、好奇心で輝いていた。
……本当に、冒険者って何にでもすぐに首を突っ込みたがる人種だな。
「シルカの護衛役ってことで、連れて行ってよ。護衛料はいらないし、調査の邪魔はしないって約束するからさ」
「……それは僕の一存じゃ決められない。マテリアさんに相談しないと」
護衛料がいらない、となると反対はされないだろうとは思うけども。
とりあえず明日の朝マテリアさんと交渉するということで、フラウには納得してもらった。
「あー、楽しみ。遺跡かぁ」
フラウは鼻歌を歌いながら、持ってきた革袋の口を開けた。
中には、大量のスプライトの核が入っていた。
これだけの数……一体どれだけのスプライトを狩ったんだ。
「スプライト駆除の仕事があってね。たくさん手に入ったんだけど……買ってくれる?」
「いいよ。スプライトの核はいつでも不足気味だから、有難い」
此処に出して、と言って、僕は作業台の上を綺麗に片付けた。
不安は色々あるけれど、今はとにかく商売だ。店を何事もなく経営することを考えよう。
フラウが並べてくれるスプライトの核を品定めしながら、僕は遺跡調査のことは一旦忘れることに心に決めたのだった。
帰っていくマテリアさんを見送りながら、僕は本日何度目か分からない溜め息をついた。
……引き受けてしまった。例の遺跡調査の依頼。
だって、引き受けるって言うまで離さないって言うんだもの……
あの攻撃は独り身には辛いよ。
僕はつい思い出しそうになる彼女の胸の感触を首を振って追い払いながら、作業台の上に無造作に置かれた革袋の口を開いた。
中には千ダイル、金貨十枚が入っていた。
これは、前金だ。彼女が、依頼料の半分を先払いしてくれたのだ。
残りの半分は、遺跡調査が終わったら支払ってくれるらしい。
僕は金庫に金貨を片付けた。
──錬金術の腕しか当てにならない人間にこの仕事を頼むなら、わざわざ嫌がる僕を選ばなくても王都にいる錬金術師に頼めばいいんじゃないかって気はするのだが、決まってしまった話は仕方がない。
マテリアさんは魔術師としてもそれなりの腕前があるらしいし、万が一戦わなければならない場面に遭遇した時は、遠慮なく彼女の力を当てにすることにしよう。
僕は魔術師じゃないから戦えないって言ってあるから、そのことは彼女も承知してくれるだろう。
だけど……遺跡か……
遺跡は魔物よりも罠の方が恐ろしい場所だ。魔術師よりも罠解除のプロを雇うべきだと思うのは僕だけなんだろうか?
一人で悶々と考えていると、外から見知った顔が店に入ってきた。
「聞いてよシルカ。今そこで、凄い派手な美人とすれ違ったんだけど──」
大きな革袋を担いだフラウは、僕の沈んだ様子を見て小首を傾げた。
「……何かあったの? 眉間に皺寄せて怖い顔したりして」
「……何だ、あんたか」
僕は作業台の横に置いてあった木箱を作業台の上に置いた。
箱の蓋を開けて、中から黒い色の石を取り出す。
これは、鉄鉱石だ。鉄製品を作る時には欠かせない鉱石である。
兼業で採掘師をやっている冒険者が、時々売りに来てくれるのだ。
「仕事でね。レオノア高原にある遺跡に調査に行くことになった」
「ああ、最近発掘されたっていう遺跡ね。知ってるよ」
フラウは革袋を床に下ろしながら、言った。
「噂じゃルマの時代よりも古い遺跡なんだってね。仕掛けだらけでろくに探索ができない場所だって冒険者仲間が言ってた」
「知ってるのか」
「あたしも近々見に行こうって思ってた場所だから。情報収集はそれなりにしてるよ」
仕掛けだらけ、か……予想以上にとんでもない目に遭いそうだな。
ますます行きたくなくなった。
「そっか……遺跡に調査に、ねぇ」
そこまで言って、何かを思い付いたらしく笑顔を浮かべながらフラウは僕の隣までやって来た。
「ね。その遺跡調査、あたしも一緒に行ってあげようか」
「は?」
僕は思わず彼女の方を見た。
「一緒に、って……宝の発掘に行くわけじゃないんだぞ。儲かるような話じゃないぞ?」
「別にお金のことはいいよ。単純にあたしがその遺跡を見物したいってだけだし」
彼女の目は、好奇心で輝いていた。
……本当に、冒険者って何にでもすぐに首を突っ込みたがる人種だな。
「シルカの護衛役ってことで、連れて行ってよ。護衛料はいらないし、調査の邪魔はしないって約束するからさ」
「……それは僕の一存じゃ決められない。マテリアさんに相談しないと」
護衛料がいらない、となると反対はされないだろうとは思うけども。
とりあえず明日の朝マテリアさんと交渉するということで、フラウには納得してもらった。
「あー、楽しみ。遺跡かぁ」
フラウは鼻歌を歌いながら、持ってきた革袋の口を開けた。
中には、大量のスプライトの核が入っていた。
これだけの数……一体どれだけのスプライトを狩ったんだ。
「スプライト駆除の仕事があってね。たくさん手に入ったんだけど……買ってくれる?」
「いいよ。スプライトの核はいつでも不足気味だから、有難い」
此処に出して、と言って、僕は作業台の上を綺麗に片付けた。
不安は色々あるけれど、今はとにかく商売だ。店を何事もなく経営することを考えよう。
フラウが並べてくれるスプライトの核を品定めしながら、僕は遺跡調査のことは一旦忘れることに心に決めたのだった。
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