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第18話 店主は色仕掛けに泣く
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遺跡調査。それは僕にとって、ダンジョン調査に匹敵する厄介度を誇る仕事だ。
遺跡といえば付き物なのが罠。先も述べた通り、古代文明が作り出した罠は時に熟練冒険者のパーティを壊滅させるほどの被害を生み出す厄介なものなのである。
ただの学者とよろず屋の店主が簡単にどうにかできるような代物ではないのだ。
マテリアさんが僕の過去を何処で知ったのかは知らないが、僕が魔術師だったのは過去の話。今はそよ風ひとつ起こせない一般人なのである。
いや、例え僕が今でも魔術師だったとしても、古代文明の罠を破るのは難しいだろう。
それで、どうして調査ができると思っちゃったんだろう、この人は。
「仕事の依頼料として二千ダイル用意したわ。依頼、引き受けてくれる?」
二千ダイルか……古代遺跡の調査の仕事料としては、まあ妥当な金額ではある。あくまで冒険者に仕事を依頼した場合の話ではあるが。
金額はそれなりに魅力的ではあるが、それだけでは僕の心を動かす材料にはならない。
やはり、命は大事だ。危険が伴う調査だと分かっていて、わざわざ首を突っ込むのは命知らずの馬鹿がやることだ。
僕は平穏に生きたい。この仕事、意地でも引き受けてなるものか。
僕は深呼吸をして、微笑みを浮かべて、マテリアさんに告げた。
「お断りします」
マテリアさんは目をぱちくりさせて、僕の方にずいっと身を乗り出してきた。
「ひょっとして、依頼料が足りなかったのかしら? そこまで言うのなら何とか三千ダイルまでなら出せるけど、流石にそれ以上は……」
「いや、金額の問題じゃなくて、この仕事を引き受けるのは嫌だって言ったんだよ」
僕はきっぱりと言った。
ここで甘い顔を見せればそこに付け込まれる。相手のペースに飲まれないためにも、ここは毅然とした態度で振る舞わねば。
「僕はもう魔術師じゃない。此処はよろず屋であって何でも屋じゃないから、冒険者がやるような仕事は引き受けてないんだよ」
「……調査してる遺跡はレオノア高原──この街から馬車で三日くらいかかる場所にあるわ」
僕の言葉を無視して話を進め始めるマテリアさん。
……こいつ……僕の言い分を聞こえないふりをしてきたか。
「移動にかかる経費、調査に必要な道具や滞在中の食事、全部こちらで用意するわ。貴方は何も用意しなくていい。楽な仕事だと思って私に任せてちょうだい」
「だから、僕はこの仕事を引き受けないって言ってるだろ」
「貴方の役目は調査中に出土した遺物の錬金文字を解読することと、錬金術が関係する仕掛けが発見された時の対処。私は錬金術は専門外だから、頼りにしてるわよ」
「……だから、僕は」
「実入りのある調査にしましょう」
「…………」
「…………」
横たわる沈黙。
がば、とマテリアさんは僕に飛びついて、その豊満な胸を僕の頭に押し付けてきた。
「お願い、貴方以外に頼れる人がいないの! 引き受けてちょうだい!」
「ちょっと! 胸当たってる! 話が突っぱねられそうだからって色仕掛けするな!」
「後生だから!」
「誰か、助けて! 此処に変態がいます! 誰かー!」
僕の叫びが、店内全体に響き渡った。
遺跡といえば付き物なのが罠。先も述べた通り、古代文明が作り出した罠は時に熟練冒険者のパーティを壊滅させるほどの被害を生み出す厄介なものなのである。
ただの学者とよろず屋の店主が簡単にどうにかできるような代物ではないのだ。
マテリアさんが僕の過去を何処で知ったのかは知らないが、僕が魔術師だったのは過去の話。今はそよ風ひとつ起こせない一般人なのである。
いや、例え僕が今でも魔術師だったとしても、古代文明の罠を破るのは難しいだろう。
それで、どうして調査ができると思っちゃったんだろう、この人は。
「仕事の依頼料として二千ダイル用意したわ。依頼、引き受けてくれる?」
二千ダイルか……古代遺跡の調査の仕事料としては、まあ妥当な金額ではある。あくまで冒険者に仕事を依頼した場合の話ではあるが。
金額はそれなりに魅力的ではあるが、それだけでは僕の心を動かす材料にはならない。
やはり、命は大事だ。危険が伴う調査だと分かっていて、わざわざ首を突っ込むのは命知らずの馬鹿がやることだ。
僕は平穏に生きたい。この仕事、意地でも引き受けてなるものか。
僕は深呼吸をして、微笑みを浮かべて、マテリアさんに告げた。
「お断りします」
マテリアさんは目をぱちくりさせて、僕の方にずいっと身を乗り出してきた。
「ひょっとして、依頼料が足りなかったのかしら? そこまで言うのなら何とか三千ダイルまでなら出せるけど、流石にそれ以上は……」
「いや、金額の問題じゃなくて、この仕事を引き受けるのは嫌だって言ったんだよ」
僕はきっぱりと言った。
ここで甘い顔を見せればそこに付け込まれる。相手のペースに飲まれないためにも、ここは毅然とした態度で振る舞わねば。
「僕はもう魔術師じゃない。此処はよろず屋であって何でも屋じゃないから、冒険者がやるような仕事は引き受けてないんだよ」
「……調査してる遺跡はレオノア高原──この街から馬車で三日くらいかかる場所にあるわ」
僕の言葉を無視して話を進め始めるマテリアさん。
……こいつ……僕の言い分を聞こえないふりをしてきたか。
「移動にかかる経費、調査に必要な道具や滞在中の食事、全部こちらで用意するわ。貴方は何も用意しなくていい。楽な仕事だと思って私に任せてちょうだい」
「だから、僕はこの仕事を引き受けないって言ってるだろ」
「貴方の役目は調査中に出土した遺物の錬金文字を解読することと、錬金術が関係する仕掛けが発見された時の対処。私は錬金術は専門外だから、頼りにしてるわよ」
「……だから、僕は」
「実入りのある調査にしましょう」
「…………」
「…………」
横たわる沈黙。
がば、とマテリアさんは僕に飛びついて、その豊満な胸を僕の頭に押し付けてきた。
「お願い、貴方以外に頼れる人がいないの! 引き受けてちょうだい!」
「ちょっと! 胸当たってる! 話が突っぱねられそうだからって色仕掛けするな!」
「後生だから!」
「誰か、助けて! 此処に変態がいます! 誰かー!」
僕の叫びが、店内全体に響き渡った。
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