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第17話 王都から来た学者
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「此処の店主って貴方?」
僕が作業台でポーション作りをしていると、店に訪れた客の一人が声を掛けてきた。
体にぴったりフィットした群青色の装束を身に着けた長い金髪の女だった。一般人には見えないので冒険者なのだろうが、格好が冒険者というよりは夜の酒場で踊っている踊り子を彷彿とさせる、あまり冒険者には見えない人物だった。
年の頃は……僕と同じくらいか、少し下。そんな感じだ。
随分と出るところが出た、目のやり場に困るスタイルだ。
「そうだけど」
「錬金術が使える人だって聞いてたけど、本当なのね」
彼女は僕の手元を見て、言った。
そう言う……ということは、彼女は客ではなく僕の錬金術を頼って此処に来た人間ということだろうか?
冒険者が錬金術師を頼る時って、大抵ろくでもない用件であることが多いからな……気を付けなければ。
まあ、話を聞くくらいなら構わないけども。
僕は火にかけていたフラスコを三脚から下ろして、彼女と目を合わせた。
「これでも並の錬金術師よりは腕はいいって自負してるよ」
「良かった。実は、折り入って頼みたいことがあるの。錬金術師である、貴方に」
女は胸元に手を入れると、何かの紋章が刻印されたブローチを取り出した。
……何処から物を出してるんだよ、この人。
「私はマテリア・シルキス。王都から来た考古学専門の学者よ」
……まさか、この格好で王都の学者だとか。
僕はびっくりしてブローチとマテリアさんの顔を交互に見比べた。
王都──世界の中心と言っても過言ではない都市で、この国を統括する王族が住む都でもある。世界中のありとあらゆる学問の書を集めた巨大な図書館を擁し、大勢の学者を抱えている学問の都なのだ。
そんな都市の学者が、一体何の用でこの辺境の街に?
僕が訝っていると、マテリアさんはブローチを懐に戻して別のものを引っ張り出し、僕の目の前に置いた。
それは、随分と古めかしい石の欠片だった。
厚さ一センチほどの板状の石で、半ばから割れている。表面にはびっしりと文字の彫刻が。
この文字は……錬金文字?
錬金文字とは、その名の通り錬金術で用いられる文字だ。魔術文字が魔術師にしか読めないように錬金術師しか読めない文字ではあるが、そんなに難しい言語ではない。
石に記された文字には、『開け』とあった。
当然これは石の欠片なので書かれている文字もただの一部分にすぎない。この一文だけでは、意味は全く分からない。
一体、何を記していた石なのだろう。
「これは、私が今調査中の遺跡で発掘したものよ。謎の像と一緒に埋もれていたの」
……ということは、その場所にこの石の他の部分がまだ埋もれている可能性があるな。
石と、像か……
遺跡が残っている古代文明で有名どころといえば、千年前に未曾有の大洪水で滅亡したルマ文明とか、六百年前に巨大な魔術帝国を築き上げたザルート文明なんかが定番だが、これらの文明が絡んだ遺跡は危険な罠なんかも数多く残っていて調査がなかなか進んでいないって聞いたことがある。
古代文明の残した罠は現代のダンジョンの罠と違って厄介な代物が多いのだ。
噂によると、遺跡調査協力を依頼された熟練冒険者のパーティが罠の解除に失敗して壊滅したとか──
二つ返事で行くような場所じゃないね。古代文明の遺跡なんてものは。
「これが錬金文字だということは分かったの。ということは、あの遺跡に眠った仕掛けは錬金術が関係する仕掛けということに他ならないはず」
「……だろうね。錬金文字は錬金術師しか使わない文字だからね」
僕は石の欠片をマテリアさんに返した。
「多分、その遺跡は錬金術師が作ったんじゃないかな。そうでなけりゃ錬金文字を使う理由が分からないからね」
「そう。私もそう思ったわ。この遺跡を詳しく調査するには、錬金術師の協力が必要不可欠だって」
マテリアさんは石を差し出す僕の手を握って、言った。
「貴方は昔、凄腕の魔術師だったって聞いたわ。……お願い、私の遺跡調査に協力してもらえないかしら?」
……やっぱり、そう来たか。
僕は複雑な表情をして、まっすぐにこちらの目を見つめてくるマテリアさんの顔を見つめ返した。
僕が作業台でポーション作りをしていると、店に訪れた客の一人が声を掛けてきた。
体にぴったりフィットした群青色の装束を身に着けた長い金髪の女だった。一般人には見えないので冒険者なのだろうが、格好が冒険者というよりは夜の酒場で踊っている踊り子を彷彿とさせる、あまり冒険者には見えない人物だった。
年の頃は……僕と同じくらいか、少し下。そんな感じだ。
随分と出るところが出た、目のやり場に困るスタイルだ。
「そうだけど」
「錬金術が使える人だって聞いてたけど、本当なのね」
彼女は僕の手元を見て、言った。
そう言う……ということは、彼女は客ではなく僕の錬金術を頼って此処に来た人間ということだろうか?
冒険者が錬金術師を頼る時って、大抵ろくでもない用件であることが多いからな……気を付けなければ。
まあ、話を聞くくらいなら構わないけども。
僕は火にかけていたフラスコを三脚から下ろして、彼女と目を合わせた。
「これでも並の錬金術師よりは腕はいいって自負してるよ」
「良かった。実は、折り入って頼みたいことがあるの。錬金術師である、貴方に」
女は胸元に手を入れると、何かの紋章が刻印されたブローチを取り出した。
……何処から物を出してるんだよ、この人。
「私はマテリア・シルキス。王都から来た考古学専門の学者よ」
……まさか、この格好で王都の学者だとか。
僕はびっくりしてブローチとマテリアさんの顔を交互に見比べた。
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そんな都市の学者が、一体何の用でこの辺境の街に?
僕が訝っていると、マテリアさんはブローチを懐に戻して別のものを引っ張り出し、僕の目の前に置いた。
それは、随分と古めかしい石の欠片だった。
厚さ一センチほどの板状の石で、半ばから割れている。表面にはびっしりと文字の彫刻が。
この文字は……錬金文字?
錬金文字とは、その名の通り錬金術で用いられる文字だ。魔術文字が魔術師にしか読めないように錬金術師しか読めない文字ではあるが、そんなに難しい言語ではない。
石に記された文字には、『開け』とあった。
当然これは石の欠片なので書かれている文字もただの一部分にすぎない。この一文だけでは、意味は全く分からない。
一体、何を記していた石なのだろう。
「これは、私が今調査中の遺跡で発掘したものよ。謎の像と一緒に埋もれていたの」
……ということは、その場所にこの石の他の部分がまだ埋もれている可能性があるな。
石と、像か……
遺跡が残っている古代文明で有名どころといえば、千年前に未曾有の大洪水で滅亡したルマ文明とか、六百年前に巨大な魔術帝国を築き上げたザルート文明なんかが定番だが、これらの文明が絡んだ遺跡は危険な罠なんかも数多く残っていて調査がなかなか進んでいないって聞いたことがある。
古代文明の残した罠は現代のダンジョンの罠と違って厄介な代物が多いのだ。
噂によると、遺跡調査協力を依頼された熟練冒険者のパーティが罠の解除に失敗して壊滅したとか──
二つ返事で行くような場所じゃないね。古代文明の遺跡なんてものは。
「これが錬金文字だということは分かったの。ということは、あの遺跡に眠った仕掛けは錬金術が関係する仕掛けということに他ならないはず」
「……だろうね。錬金文字は錬金術師しか使わない文字だからね」
僕は石の欠片をマテリアさんに返した。
「多分、その遺跡は錬金術師が作ったんじゃないかな。そうでなけりゃ錬金文字を使う理由が分からないからね」
「そう。私もそう思ったわ。この遺跡を詳しく調査するには、錬金術師の協力が必要不可欠だって」
マテリアさんは石を差し出す僕の手を握って、言った。
「貴方は昔、凄腕の魔術師だったって聞いたわ。……お願い、私の遺跡調査に協力してもらえないかしら?」
……やっぱり、そう来たか。
僕は複雑な表情をして、まっすぐにこちらの目を見つめてくるマテリアさんの顔を見つめ返した。
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