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第25話 それぞれの旅立ち
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「それじゃあ、これ。約束の報酬よ」
カウンターの上に、金貨が入った革袋が置かれる。
マテリアさんは一礼をして、カウンターに立っている僕に微笑みかけた。
「調査を手伝ってくれてありがとう。貴方のお陰で、あの遺跡のことが色々と分かったわ」
「謎が増えただけって感じもするけどね」
マテリアさんの横で、腕を組んだフラウが肩を竦める。
マテリアさんはそれでも構わないと言った。
「解かなければならない謎が、あの遺跡には数多く眠っていた……それが分かっただけでも大きな収穫よ。これから、その謎を解くためにどうすればいいかを考えることができるんですもの。無駄なことじゃないわ」
彼女はフラウの方に向き直って、右手をそっと差し出した。
「旅、頑張ってね。応援してるわ」
「ありがとう」
フラウはその手をしっかりと握り返した。
「マテリアさんはこれからどうするの?」
「王都に帰るわ。今回分かったことを仲間の学者たちに報告しなければならないし」
マテリアさんは外をちらりと見た。
店の前には、僕たちが遺跡から戻る時に乗ってきた馬車が停まっている。
彼女はあれに乗って王都に帰るつもりらしい。
「……それじゃあ、私は行くわ。貴方たちも元気でね」
彼女は顔の横で控え目に手を振って、店の外へ出た。
馬車に乗り込む前に振り向いてもう一度手を振って、馬車に乗る。
彼女を乗せた馬車はゆっくりと発車して、僕たちの視界から去っていった。
フラウは両手をぐっと伸ばした。
「……あたしも行こうかな」
「もう行くのか?」
「うん。別に今日でなくてもいいんだろうけど、思い立ったが吉日とも言うじゃない?」
彼女は棚からハイポーションの瓶をひとつ手に取って、カウンターの上に置いた。
ハイポーションはポーションよりも効き目のある薬で、値段はそれなりにするが熟練の冒険者の間では愛用されている品だ。
僕の店では、一本十二ダイルで売っている。
「これ、頂戴。幾ら?」
「ああ、それは……」
僕はハイポーションを手に取って──
ゆるりとかぶりを振って、カウンターの上に置いた。
「やるよ。持ってけ」
「……え、いいの?」
「ああ」
僕は頷いて、腕を組んだ。
「あんたの旅に協力するって、約束したからな」
──僕には、フラウに対してこれくらいしか力になれることがない。
でも、どんなに小さなことでも、彼女の旅の支えになるはずだ。僕はそう信じている。
「ありがとう」
フラウはにこりと笑って、ハイポーションを腰のポーチにしまい込んだ。
「絶対に役立つ情報を持って帰ってみせるから。期待して待っててね」
彼女は親指を立てた。
僕はそれに、同じように親指を立てて応えたのだった。
誰もいなくなった店の中で、僕は棚に並んだ商品にはたきを掛けていた。
僕は、僕のやれることをするだけだ。それが誰かの力になって、その力は大きなものに育っていずれは世界を動かす力となるだろうから。
──皆は、この広い世界の中でどんな旅をしているのだろうか。
思いを馳せながら、今日も僕はよろず屋の店主であり続ける。
カウンターの上に、金貨が入った革袋が置かれる。
マテリアさんは一礼をして、カウンターに立っている僕に微笑みかけた。
「調査を手伝ってくれてありがとう。貴方のお陰で、あの遺跡のことが色々と分かったわ」
「謎が増えただけって感じもするけどね」
マテリアさんの横で、腕を組んだフラウが肩を竦める。
マテリアさんはそれでも構わないと言った。
「解かなければならない謎が、あの遺跡には数多く眠っていた……それが分かっただけでも大きな収穫よ。これから、その謎を解くためにどうすればいいかを考えることができるんですもの。無駄なことじゃないわ」
彼女はフラウの方に向き直って、右手をそっと差し出した。
「旅、頑張ってね。応援してるわ」
「ありがとう」
フラウはその手をしっかりと握り返した。
「マテリアさんはこれからどうするの?」
「王都に帰るわ。今回分かったことを仲間の学者たちに報告しなければならないし」
マテリアさんは外をちらりと見た。
店の前には、僕たちが遺跡から戻る時に乗ってきた馬車が停まっている。
彼女はあれに乗って王都に帰るつもりらしい。
「……それじゃあ、私は行くわ。貴方たちも元気でね」
彼女は顔の横で控え目に手を振って、店の外へ出た。
馬車に乗り込む前に振り向いてもう一度手を振って、馬車に乗る。
彼女を乗せた馬車はゆっくりと発車して、僕たちの視界から去っていった。
フラウは両手をぐっと伸ばした。
「……あたしも行こうかな」
「もう行くのか?」
「うん。別に今日でなくてもいいんだろうけど、思い立ったが吉日とも言うじゃない?」
彼女は棚からハイポーションの瓶をひとつ手に取って、カウンターの上に置いた。
ハイポーションはポーションよりも効き目のある薬で、値段はそれなりにするが熟練の冒険者の間では愛用されている品だ。
僕の店では、一本十二ダイルで売っている。
「これ、頂戴。幾ら?」
「ああ、それは……」
僕はハイポーションを手に取って──
ゆるりとかぶりを振って、カウンターの上に置いた。
「やるよ。持ってけ」
「……え、いいの?」
「ああ」
僕は頷いて、腕を組んだ。
「あんたの旅に協力するって、約束したからな」
──僕には、フラウに対してこれくらいしか力になれることがない。
でも、どんなに小さなことでも、彼女の旅の支えになるはずだ。僕はそう信じている。
「ありがとう」
フラウはにこりと笑って、ハイポーションを腰のポーチにしまい込んだ。
「絶対に役立つ情報を持って帰ってみせるから。期待して待っててね」
彼女は親指を立てた。
僕はそれに、同じように親指を立てて応えたのだった。
誰もいなくなった店の中で、僕は棚に並んだ商品にはたきを掛けていた。
僕は、僕のやれることをするだけだ。それが誰かの力になって、その力は大きなものに育っていずれは世界を動かす力となるだろうから。
──皆は、この広い世界の中でどんな旅をしているのだろうか。
思いを馳せながら、今日も僕はよろず屋の店主であり続ける。
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