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第29話 店主は日常を生きる
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それから。薬草泥棒は無事に警備兵に引き渡され、畑に平穏が戻ったことをギルベルトさんから聞かされた。
泥棒を捕まえた御礼として、後日僕の元にはジールさんから薬草の詰め合わせが送られてきた。
ポーションの材料となる薬草だけじゃない。ハイポーションの材料になる薬草や毒消し草まで入っている。
錬金術師としては嬉しい詰め合わせの御礼だ。
遠慮なく使わせてもらうことにしよう。
そんな感じで日常の生活に戻った僕は、普段と同じように作業台で商品を作りながら訪れる客たちの相手をしながら過ごしている。
泥棒事件が解決したこともあってポーションの売り上げが若干落ちたことが商売人としては残念なところだけど、これも街に日常が戻った証だと思って受け入れることにしている。
そして──
「シルカ、これを頼む」
ギルベルトさんは、相変わらず大量のポーションを買い付けに僕の店に訪れていた。
ポーションの流通量が元に戻ったとはいっても、冒険者たちからの需要は相変わらずのようだ。
僕はギルベルトさんが運んできたポーション入りの木箱を受け取った。
「最近ギルドの方の経営はどうですか?」
「相変わらずだな。仕事を受けてくれる冒険者が大勢いてくれるお陰でギルドの資金も潤ってる。今なら竜の素材も丸ごと買えそうだ」
「それは凄いですね」
木箱に入ったポーションの本数を数えて、値札を取り外し、ギルベルトさんへと渡す。
「二百四十ダイルです」
「二百四十な。ちょっと待っててくれ」
ギルベルトさんは受け取った木箱を足下に下ろして、取り出した財布から金貨と銀貨を出してカウンターに置いた。
金貨が二枚に銀貨が四枚。うん、ちゃんとある。
「確かに、受け取りました」
「なあ、シルカ」
金庫に代金をしまう僕に、彼は言った。
「お前さんは、錬金術師として名を売ろうとか、冒険者になって一花咲かせようとか、そういうことは考えてないのか?」
「僕ですか?」
僕はゆるりとかぶりを振って、答えた。
「僕は、今の生活が気に入ってるんです。お客さんと世間話をしたり、店で売る商品を錬金術で作ったり、そういうことをしながら暮らすのが性に合ってるんですよ」
ゆったりと、小川を流れていく花びらのように。
太陽の暖かさを当たり前のように暖かいと感じて、そよ風を心地良いと思って、それを味わわせてくれるこの街を愛して。
街と共に生きて、いつか僕が年老いて眠る時が来た時に、この街で暮らすことができて良かったと思えるように。
そうして暮らしていくのが、今の僕にとって掛け替えのない日常なのだ。
僕は、世界を自分の足で見て回るのには少し歳を取りすぎた。
でも、此処に来てくれる人たちが持って来てくれる話を聞くことで、冒険したような気分に浸ることはできる。
それで、十分なのだ。
「……そうか」
ギルベルトさんは微笑んだ。
「まあ、人の人生には色々ある。此処でお前さんがよろず屋の店主として暮らすのも、立派な人としての人生だ。それを咎める奴は誰もいないだろうよ」
「……はい」
僕は彼に、微笑みを返した。
こうして此処でこういう話をするのも、僕にとっては大事にしたい日常のひとこまとなる。
守ろう。この日常を。また明日、笑って生きていくことができるように。
それが、僕、シルカ・アベルフォーンの人生なのだから。
泥棒を捕まえた御礼として、後日僕の元にはジールさんから薬草の詰め合わせが送られてきた。
ポーションの材料となる薬草だけじゃない。ハイポーションの材料になる薬草や毒消し草まで入っている。
錬金術師としては嬉しい詰め合わせの御礼だ。
遠慮なく使わせてもらうことにしよう。
そんな感じで日常の生活に戻った僕は、普段と同じように作業台で商品を作りながら訪れる客たちの相手をしながら過ごしている。
泥棒事件が解決したこともあってポーションの売り上げが若干落ちたことが商売人としては残念なところだけど、これも街に日常が戻った証だと思って受け入れることにしている。
そして──
「シルカ、これを頼む」
ギルベルトさんは、相変わらず大量のポーションを買い付けに僕の店に訪れていた。
ポーションの流通量が元に戻ったとはいっても、冒険者たちからの需要は相変わらずのようだ。
僕はギルベルトさんが運んできたポーション入りの木箱を受け取った。
「最近ギルドの方の経営はどうですか?」
「相変わらずだな。仕事を受けてくれる冒険者が大勢いてくれるお陰でギルドの資金も潤ってる。今なら竜の素材も丸ごと買えそうだ」
「それは凄いですね」
木箱に入ったポーションの本数を数えて、値札を取り外し、ギルベルトさんへと渡す。
「二百四十ダイルです」
「二百四十な。ちょっと待っててくれ」
ギルベルトさんは受け取った木箱を足下に下ろして、取り出した財布から金貨と銀貨を出してカウンターに置いた。
金貨が二枚に銀貨が四枚。うん、ちゃんとある。
「確かに、受け取りました」
「なあ、シルカ」
金庫に代金をしまう僕に、彼は言った。
「お前さんは、錬金術師として名を売ろうとか、冒険者になって一花咲かせようとか、そういうことは考えてないのか?」
「僕ですか?」
僕はゆるりとかぶりを振って、答えた。
「僕は、今の生活が気に入ってるんです。お客さんと世間話をしたり、店で売る商品を錬金術で作ったり、そういうことをしながら暮らすのが性に合ってるんですよ」
ゆったりと、小川を流れていく花びらのように。
太陽の暖かさを当たり前のように暖かいと感じて、そよ風を心地良いと思って、それを味わわせてくれるこの街を愛して。
街と共に生きて、いつか僕が年老いて眠る時が来た時に、この街で暮らすことができて良かったと思えるように。
そうして暮らしていくのが、今の僕にとって掛け替えのない日常なのだ。
僕は、世界を自分の足で見て回るのには少し歳を取りすぎた。
でも、此処に来てくれる人たちが持って来てくれる話を聞くことで、冒険したような気分に浸ることはできる。
それで、十分なのだ。
「……そうか」
ギルベルトさんは微笑んだ。
「まあ、人の人生には色々ある。此処でお前さんがよろず屋の店主として暮らすのも、立派な人としての人生だ。それを咎める奴は誰もいないだろうよ」
「……はい」
僕は彼に、微笑みを返した。
こうして此処でこういう話をするのも、僕にとっては大事にしたい日常のひとこまとなる。
守ろう。この日常を。また明日、笑って生きていくことができるように。
それが、僕、シルカ・アベルフォーンの人生なのだから。
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