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第68話 神の心臓を砕け
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「フレアボム!」
僕はサテュロスの胸元を狙って魔術を撃った。
サテュロスにもミルウードにも、半端な技は通用しない。彼らの肉体は既に死んでおり、生半可な攻撃では死を盾に相殺されてしまうからだ。
しかし、サテュロスが持つペンダントは別だ。強い衝撃を加えれば宝石が砕けるはず。
僕の狙いは、ペンダントを破壊することだ。サテュロスを倒すことではない。
相手の隙を突いて宝石を砕くことくらいなら、僕にでもできるはず。
召喚されたアンデッドはアラグが、ミルウードはシャオレン、フラウ、マテリアさんがそれぞれ抑えてくれている。
これは、僕にしかできないことなのだ。
恐怖心はない。僕の中にある決意が、ありったけの勇気を奮い起こしてくれていた。
必ず、やってみせる!
高速で宙を横切る茜色の光を、サテュロスは杖で弾き飛ばした。
あさっての方向に飛んでいった光は、たまたまそこにいたスケルトンを吹き飛ばした。背骨を砕かれ、ばらばらになってスケルトンは床に散らばった。
「……私を倒すのが目的ではないな」
杖を胸の前で構えながら、サテュロスは言った。
どうやら、彼は僕の狙いに気付いたらしい。
僕は息を胸一杯に吸い込んで、右の人差し指を彼へと向けた。
「ライティングレイ!」
「そのような小技など……と思っていたが、そちらがそのつもりなら話は別だ」
サテュロスは僕が放った光を半歩横にずれてかわすと、杖で足下をとんと突いた。
「シャドウファング」
サテュロスの足下にある影が不自然に大きく歪んで、竜の頭を形作る。
あれは、自らの影に魔力を込めて標的を噛み砕く竜を生み出す魔術だ。
あれに食われたら人間の体など簡単に真っ二つになってしまう。
影が床を抜け出して、口を大きく開きながら僕に迫ってくる。
その口めがけて、僕は魔術を放った。
「ファイアボール!」
ばんっ!
火球が炸裂し、竜の頭が吹き飛ぶ。
魔力を失った影は床に落ち、元の人の形へと戻った。
ほう、と声を漏らして杖を真横に構えるサテュロス。
「我が影を砕くとは、なかなかに優れた魔力だ」
「トルネード!」
相手のペースに合わせる必要はない。僕は立て続けに魔術を放った。
サテュロスを中心に発生した竜巻が、彼の装束を大きく巻き上げる。
乱れた装束の間から、例のペンダントがぽろりと零れて床に落ちた。
「ぬっ……」
「ストーンバレット!」
落ちたペンダントに気を取られたサテュロスの動きが止まる。
僕はペンダントの宝石を狙って魔術を撃った。
石礫はペンダントの金具に当たり、金具を破壊した。
宝石が弾かれてスケルトンの群れの中に落ちる。
そこにいたのはスケルトンを斬り伏せたアラグ。
彼は倒したスケルトンを踏みつけながら、次の標的を探して視線を周囲に彷徨わせているところだった。
僕は彼に向かって叫んだ。
「アラグ! その宝石を壊せ!」
「!」
僕の言葉に気付いたアラグの目が足下の宝石に向く。
サテュロスは慌てた様子で彼に杖の先端を向けた。
「させるか──」
「アイシクルアロー!」
僕が咄嗟に撃った氷の矢が、杖の先端に当たって大きな氷の戒めと化す。
手ごと杖を凍らされたサテュロスが、驚愕の視線を僕へと向けた。
その間に、アラグは行動を起こしていた。
「砕けろ!」
垂直に突き落とされたアラグの剣が、宝石を粉々に砕く。
やった!
赤い欠片となって床に散らばった宝石を見た僕の口元に、勝利を確信した笑みが浮かんだ。
僕はサテュロスの胸元を狙って魔術を撃った。
サテュロスにもミルウードにも、半端な技は通用しない。彼らの肉体は既に死んでおり、生半可な攻撃では死を盾に相殺されてしまうからだ。
しかし、サテュロスが持つペンダントは別だ。強い衝撃を加えれば宝石が砕けるはず。
僕の狙いは、ペンダントを破壊することだ。サテュロスを倒すことではない。
相手の隙を突いて宝石を砕くことくらいなら、僕にでもできるはず。
召喚されたアンデッドはアラグが、ミルウードはシャオレン、フラウ、マテリアさんがそれぞれ抑えてくれている。
これは、僕にしかできないことなのだ。
恐怖心はない。僕の中にある決意が、ありったけの勇気を奮い起こしてくれていた。
必ず、やってみせる!
高速で宙を横切る茜色の光を、サテュロスは杖で弾き飛ばした。
あさっての方向に飛んでいった光は、たまたまそこにいたスケルトンを吹き飛ばした。背骨を砕かれ、ばらばらになってスケルトンは床に散らばった。
「……私を倒すのが目的ではないな」
杖を胸の前で構えながら、サテュロスは言った。
どうやら、彼は僕の狙いに気付いたらしい。
僕は息を胸一杯に吸い込んで、右の人差し指を彼へと向けた。
「ライティングレイ!」
「そのような小技など……と思っていたが、そちらがそのつもりなら話は別だ」
サテュロスは僕が放った光を半歩横にずれてかわすと、杖で足下をとんと突いた。
「シャドウファング」
サテュロスの足下にある影が不自然に大きく歪んで、竜の頭を形作る。
あれは、自らの影に魔力を込めて標的を噛み砕く竜を生み出す魔術だ。
あれに食われたら人間の体など簡単に真っ二つになってしまう。
影が床を抜け出して、口を大きく開きながら僕に迫ってくる。
その口めがけて、僕は魔術を放った。
「ファイアボール!」
ばんっ!
火球が炸裂し、竜の頭が吹き飛ぶ。
魔力を失った影は床に落ち、元の人の形へと戻った。
ほう、と声を漏らして杖を真横に構えるサテュロス。
「我が影を砕くとは、なかなかに優れた魔力だ」
「トルネード!」
相手のペースに合わせる必要はない。僕は立て続けに魔術を放った。
サテュロスを中心に発生した竜巻が、彼の装束を大きく巻き上げる。
乱れた装束の間から、例のペンダントがぽろりと零れて床に落ちた。
「ぬっ……」
「ストーンバレット!」
落ちたペンダントに気を取られたサテュロスの動きが止まる。
僕はペンダントの宝石を狙って魔術を撃った。
石礫はペンダントの金具に当たり、金具を破壊した。
宝石が弾かれてスケルトンの群れの中に落ちる。
そこにいたのはスケルトンを斬り伏せたアラグ。
彼は倒したスケルトンを踏みつけながら、次の標的を探して視線を周囲に彷徨わせているところだった。
僕は彼に向かって叫んだ。
「アラグ! その宝石を壊せ!」
「!」
僕の言葉に気付いたアラグの目が足下の宝石に向く。
サテュロスは慌てた様子で彼に杖の先端を向けた。
「させるか──」
「アイシクルアロー!」
僕が咄嗟に撃った氷の矢が、杖の先端に当たって大きな氷の戒めと化す。
手ごと杖を凍らされたサテュロスが、驚愕の視線を僕へと向けた。
その間に、アラグは行動を起こしていた。
「砕けろ!」
垂直に突き落とされたアラグの剣が、宝石を粉々に砕く。
やった!
赤い欠片となって床に散らばった宝石を見た僕の口元に、勝利を確信した笑みが浮かんだ。
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