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第74話 アメミヤの森の銀狼
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アメミヤの森は、今日も静謐な空気を纏って此処にある。
僕は木々の間に生えた薬草を摘みながら、木漏れ日が照らす小道を歩いていた。
此処は天気が荒れるとスプライトが湧いたり奥に入りすぎると魔物がいたりする森ではあるが、入口付近は道も整えられておりこうして錬金薬の材料になる薬草が割と生えているので街の人間もよく訪れる場所になっている。
僕もこうして、薬草目当てに時々訪れている。
錬金術師は何かと物入りなのだ。
「……よし」
籠に一杯になった薬草を見下ろして、僕は満足げに頷いた。
これだけあれば、色々な薬品が作れる。店の品揃えが更に充実するだろう。
結構歩き回って疲れたし、休憩してから街に戻ろう。
座るのに丁度良さそうな倒木があったので、そこで休んでいくことにした。
座っても大丈夫なことを確認し、肩から下げていた鞄を下ろして腰を下ろす。
籠を足下に置き、両手を組んでぐっと全身を伸ばした。
鳥の声が、森の奥から聞こえてくる。
平和の証だ。
僕は鞄からおやつ代わりに持参したサンドイッチを取り出した。
レモンハーブでソテーした鶏肉を挟んだお手製の一品だ。
水筒に入ったお茶で喉を潤し、サンドイッチを一口。
ハーブの香りと風味が鼻から抜けていく。
自然の中で食事を堪能するなんてこういう時くらいしかないから、ゆっくりと味わおう。
サンドイッチをもう一口齧ろうとした、その時。
横手にある茂みがいきなりがさがさと揺れた。
「!」
僕はびっくりして立ち上がった。
森の入口付近は魔物がいない場所ではあるが、それは絶対というわけではない。時折はぐれが迷って出てくることがあるということを、新聞なんかで読んだことがあるので知っている。
魔物だったら、逃げなくては。
僕は揺れる茂みにじっと視線を向けた。
僕は魔術も錬金術も使えるが、錬金術には魔物を追い払えるような力はないし、何より魔物と命の遣り取りをするような度胸はない。僕は四六時中魔物と戦い合っている冒険者たちとは根本的に違うのだ。
茂みの中心が左右に押し退けられる。
そして、そこから白い毛の塊がのっそりと姿を現した。
体長は一メートルほど。微妙に青味がかった銀色の長い毛には小枝や葉っぱが大量に引っ掛かっている。長い爪に、長い尻尾。宝石のような銀の瞳には、僕の姿が映り込んでいる。
シルバーウルフか? いや、あれは高原に住んでいる魔物だ。これはシルバーウルフではない。
何にせよ、犬ではない生き物であることに間違いはないので、下手に刺激をしたら命の危険がある。
狼は鼻をすんすんと鳴らしながら、こちらに近付いてきた。
その目は、僕が手にしているサンドイッチに釘付けになっていた。
……腹が減ってるのか? こいつ。
空腹となるとますます危険だ。
ここはサンドイッチを囮にして、相手が食事に気を取られている隙に逃げるのが得策だろう。
僕はサンドイッチを狼の目の前に置いた。
狼はサンドイッチの匂いを嗅いで、パンの間から肉を引っ張り出すと、食べ始めた。
その隙に僕は薬草の入った籠を持って、後ろ足に狼の傍を離れ、距離がある程度離れたところで全速力でその場から駆け出したのだった。
僕は木々の間に生えた薬草を摘みながら、木漏れ日が照らす小道を歩いていた。
此処は天気が荒れるとスプライトが湧いたり奥に入りすぎると魔物がいたりする森ではあるが、入口付近は道も整えられておりこうして錬金薬の材料になる薬草が割と生えているので街の人間もよく訪れる場所になっている。
僕もこうして、薬草目当てに時々訪れている。
錬金術師は何かと物入りなのだ。
「……よし」
籠に一杯になった薬草を見下ろして、僕は満足げに頷いた。
これだけあれば、色々な薬品が作れる。店の品揃えが更に充実するだろう。
結構歩き回って疲れたし、休憩してから街に戻ろう。
座るのに丁度良さそうな倒木があったので、そこで休んでいくことにした。
座っても大丈夫なことを確認し、肩から下げていた鞄を下ろして腰を下ろす。
籠を足下に置き、両手を組んでぐっと全身を伸ばした。
鳥の声が、森の奥から聞こえてくる。
平和の証だ。
僕は鞄からおやつ代わりに持参したサンドイッチを取り出した。
レモンハーブでソテーした鶏肉を挟んだお手製の一品だ。
水筒に入ったお茶で喉を潤し、サンドイッチを一口。
ハーブの香りと風味が鼻から抜けていく。
自然の中で食事を堪能するなんてこういう時くらいしかないから、ゆっくりと味わおう。
サンドイッチをもう一口齧ろうとした、その時。
横手にある茂みがいきなりがさがさと揺れた。
「!」
僕はびっくりして立ち上がった。
森の入口付近は魔物がいない場所ではあるが、それは絶対というわけではない。時折はぐれが迷って出てくることがあるということを、新聞なんかで読んだことがあるので知っている。
魔物だったら、逃げなくては。
僕は揺れる茂みにじっと視線を向けた。
僕は魔術も錬金術も使えるが、錬金術には魔物を追い払えるような力はないし、何より魔物と命の遣り取りをするような度胸はない。僕は四六時中魔物と戦い合っている冒険者たちとは根本的に違うのだ。
茂みの中心が左右に押し退けられる。
そして、そこから白い毛の塊がのっそりと姿を現した。
体長は一メートルほど。微妙に青味がかった銀色の長い毛には小枝や葉っぱが大量に引っ掛かっている。長い爪に、長い尻尾。宝石のような銀の瞳には、僕の姿が映り込んでいる。
シルバーウルフか? いや、あれは高原に住んでいる魔物だ。これはシルバーウルフではない。
何にせよ、犬ではない生き物であることに間違いはないので、下手に刺激をしたら命の危険がある。
狼は鼻をすんすんと鳴らしながら、こちらに近付いてきた。
その目は、僕が手にしているサンドイッチに釘付けになっていた。
……腹が減ってるのか? こいつ。
空腹となるとますます危険だ。
ここはサンドイッチを囮にして、相手が食事に気を取られている隙に逃げるのが得策だろう。
僕はサンドイッチを狼の目の前に置いた。
狼はサンドイッチの匂いを嗅いで、パンの間から肉を引っ張り出すと、食べ始めた。
その隙に僕は薬草の入った籠を持って、後ろ足に狼の傍を離れ、距離がある程度離れたところで全速力でその場から駆け出したのだった。
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