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第88話 商売人の性
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ナナイは今、ある街の冒険者ギルドからある仕事を請け負っていた。
デザートドラゴンの駆除。主に砂漠地帯に生息する竜で、空は飛べないが発達した脚で砂地を高速で走り回る危険な生き物である。その討伐だ。
問題の竜がいるというアンゴラ砂漠──そこは灼熱の土地で、生身の人間はものの数時間で高温にやられてしまうため探索もままならない。
そんな環境下の活動を可能にするため、錬金術師はある秘薬を開発した。
それが、コールドドリンク。服用することによって高温地帯の環境に体が適応するようになる錬金薬である。
しかし、この薬。材料に使うアイスマッシュルームという茸が収穫してすぐに枯れるという困った特性を持っているせいで、街の店なんかではまず手に入らないレアな代物なのだ。
ナナイは材料の茸を求めてあちこちを探し回り、遂に、アイスマッシュルームが群生している場所を発見した。
しかし、彼女は錬金術師ではない。目的の茸を見つけることができても、その場で茸を薬にできる技術がないと意味がない。
それで、僕のところに来たらしい。薬を現地で調合してもらうために。
「シルカちゃん、この通り。ナナイにはどうしても薬が必要なの」
「…………」
僕は頭を掻いた。
彼女が茸を発見したという洞窟、彼女はダンジョンじゃないと言っているが僕にはどうもそうは思えない。
仮に本当にダンジョンではなかったとしても、だからといってその洞窟が安全だということにはならない。
ダンジョンでなくても危険な場所は山のようにあるのだ。魔物が棲んでいたり、地形が険しかったり。
いつもの僕なら、問答無用で話を突っぱねているところである。
しかし。
コールドドリンク。こいつを手に入れられるとなると話は別だ。
先にも述べた通り、コールドドリンクは使う材料の特殊性故に普通の店ではまず扱えない代物だ。
そんな稀少な品まで扱っている店として広く認知されれば、店に来る客の数は間違いなく増えるはず。
この店は、扱っていない品物はないということを謳い文句にしている。新たな商品を手に入れられるチャンスは、逃したくないのだ。
「駄目?」
「いいよ」
上目遣いに僕のことを見てくるナナイに、僕は言った。
ナナイの顔がぱっと明るくなる。
ただし、と僕は付け加えた。
「魔物が出た時は、僕を守ってもらう。それが条件だ。僕はもう冒険者じゃないから、魔物と戦うことはできないからな」
魔術を使うことができても、怖いものは怖いのだ。使えない剣は棒切れと同じというやつである。
ナナイは僕の言葉に怪訝そうに小首を傾げたが、僕を守ることを承諾してくれた。
後もうひとつ、忘れてはいけないことがある。
僕は作業台の傍で寝そべっているシルバーを指差した。
「そいつ……シルバーっていうんだけど、そいつも一緒に連れて行く」
「犬?」
ナナイの「犬」の一言に、シルバーの耳がぴくりと動いた。
「ただの犬じゃないぞ。魔物とも戦ってくれる、僕の自慢の護衛だ」
「へぇ」
ナナイはシルバーの傍に寄って背中を撫でた。
「あったかい。もふもふだー」
「それで? 何処にあるんだ、アイスマッシュルームの群生地は」
シルバーの毛並みの感触に御満悦のナナイに、問いかける。
ナナイはシルバーの頭を撫でて立ち上がると、腰のポーチから畳んだ地図を取り出して、それを広げて僕に見せた。
「クラシュの森──奥に滝壺があるんだけどね、その滝の裏側が洞窟になってるんだ。その洞窟の奥にあるよ」
デザートドラゴンの駆除。主に砂漠地帯に生息する竜で、空は飛べないが発達した脚で砂地を高速で走り回る危険な生き物である。その討伐だ。
問題の竜がいるというアンゴラ砂漠──そこは灼熱の土地で、生身の人間はものの数時間で高温にやられてしまうため探索もままならない。
そんな環境下の活動を可能にするため、錬金術師はある秘薬を開発した。
それが、コールドドリンク。服用することによって高温地帯の環境に体が適応するようになる錬金薬である。
しかし、この薬。材料に使うアイスマッシュルームという茸が収穫してすぐに枯れるという困った特性を持っているせいで、街の店なんかではまず手に入らないレアな代物なのだ。
ナナイは材料の茸を求めてあちこちを探し回り、遂に、アイスマッシュルームが群生している場所を発見した。
しかし、彼女は錬金術師ではない。目的の茸を見つけることができても、その場で茸を薬にできる技術がないと意味がない。
それで、僕のところに来たらしい。薬を現地で調合してもらうために。
「シルカちゃん、この通り。ナナイにはどうしても薬が必要なの」
「…………」
僕は頭を掻いた。
彼女が茸を発見したという洞窟、彼女はダンジョンじゃないと言っているが僕にはどうもそうは思えない。
仮に本当にダンジョンではなかったとしても、だからといってその洞窟が安全だということにはならない。
ダンジョンでなくても危険な場所は山のようにあるのだ。魔物が棲んでいたり、地形が険しかったり。
いつもの僕なら、問答無用で話を突っぱねているところである。
しかし。
コールドドリンク。こいつを手に入れられるとなると話は別だ。
先にも述べた通り、コールドドリンクは使う材料の特殊性故に普通の店ではまず扱えない代物だ。
そんな稀少な品まで扱っている店として広く認知されれば、店に来る客の数は間違いなく増えるはず。
この店は、扱っていない品物はないということを謳い文句にしている。新たな商品を手に入れられるチャンスは、逃したくないのだ。
「駄目?」
「いいよ」
上目遣いに僕のことを見てくるナナイに、僕は言った。
ナナイの顔がぱっと明るくなる。
ただし、と僕は付け加えた。
「魔物が出た時は、僕を守ってもらう。それが条件だ。僕はもう冒険者じゃないから、魔物と戦うことはできないからな」
魔術を使うことができても、怖いものは怖いのだ。使えない剣は棒切れと同じというやつである。
ナナイは僕の言葉に怪訝そうに小首を傾げたが、僕を守ることを承諾してくれた。
後もうひとつ、忘れてはいけないことがある。
僕は作業台の傍で寝そべっているシルバーを指差した。
「そいつ……シルバーっていうんだけど、そいつも一緒に連れて行く」
「犬?」
ナナイの「犬」の一言に、シルバーの耳がぴくりと動いた。
「ただの犬じゃないぞ。魔物とも戦ってくれる、僕の自慢の護衛だ」
「へぇ」
ナナイはシルバーの傍に寄って背中を撫でた。
「あったかい。もふもふだー」
「それで? 何処にあるんだ、アイスマッシュルームの群生地は」
シルバーの毛並みの感触に御満悦のナナイに、問いかける。
ナナイはシルバーの頭を撫でて立ち上がると、腰のポーチから畳んだ地図を取り出して、それを広げて僕に見せた。
「クラシュの森──奥に滝壺があるんだけどね、その滝の裏側が洞窟になってるんだ。その洞窟の奥にあるよ」
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