アメミヤのよろず屋

高柳神羅

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第87話 茸狩りのお誘い

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 荷台の上に、大量に山積みにされたマッシュルームが載っている。
 大きく貼り出された広告には、インパクトのある文字で『今が旬! 本日のお勧め品』と書かれていた。
 茸か……そういえばそろそろ茸が美味しい季節なんだよな。
 マッシュルームをひとつ手に取って、僕はそのようなことを考えた。
 街の食品店にて。僕は今日の夕飯に使う材料の買出しに来ていた。
 僕は、基本的に食品の買い物は毎日している。食品は日持ちしないものが多いから、その日食べるものはその日に買うようにしているのだ。
 久しぶりに茸でシチューでも作ろうかな。そう思ってマッシュルームを籠に入れようとした、その時。
 不意に、誰かが僕の肩をぽんと叩いた。
「?」
「やっぱり! シルカちゃん、久しぶりー」
 怪訝に思って振り向いた僕の目に、大振りの剣を二本背負った小柄な冒険者が手を振っている姿が飛び込んできた。
 要所のみを防護するパーツの寄せ集めのような形状の鎧に、肩から下がる焦げ茶色のマント。腰に差した細身の剣。ショートカットにした赤毛は燃える炎のように逆立っている。一見すると子供のような出で立ち。
 こんな姿をした冒険者を、僕は一人だけ知っていた。
「……ナナイ?」
「この街でお店をやってるって言うから行ったのに、お店は閉まってるし、ひょっとして引っ越しちゃったのかなって思ってたよ」
「買い物に来てたんだよ。帰ったらまた店開けるから」
 僕はマッシュルームを籠に入れて、荷台に集まっている人の群れから抜け出した。
 ナナイ・バーンモン。僕が冒険者をやっていた時代に知り合った剣士の女性で、直接パーティを組んだことはないが、二刀流の使い手として結構名が知られている人物だということは知っている。
 子供のように見えるが、これでも歳は僕よりも上で、記憶が正しければ確か今年で三十になるはずだ。
 まだ現役で冒険者やってたんだな。元気な人だ。
「僕に何か用か?」
「うん、大あり。実はちょっと困ったことになっちゃってねぇ」
「……買い物済ませてくるから話はちょっと待ってくれるか」
 僕はナナイに店の外で待つように言って、食品を入れた籠を持って会計所に行った。
 ……あ、オレンジ買い忘れた。まあいいか。
 食品を詰めた袋を背負って、僕は店を出た。
 ナナイは荷台に貼り出されている広告を興味津々と見つめていた。
「この時期、茸料理が美味しいんだよねー。キッシュにシチュー、ピッツァに串焼き」
「ごめん、待たせた。……で、話って何だ?」
 店に戻る道を歩き始める僕の斜め後ろを付いて歩くように、ナナイが付いて来る。
「先に言っとくけどダンジョンに付いて来てくれって類の話はお断りだからな。僕はもう冒険者じゃないんだから」
「んー、ダンジョンじゃないとは思う。ダンジョン特有のにおいがしないし。多分ただの洞窟なんじゃないかな」
 ……今、何か不穏な言葉が聞こえたんだけど。洞窟?
 眉を顰める僕に、ナナイは笑顔で言った。
「シルカちゃん、ナナイと一緒に茸狩りに来てくれないかな?」
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