アメミヤのよろず屋

高柳神羅

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第86話 事件の終わり

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 ギルベルトさんが率いてきた冒険者たちの手によって、男は捕らえられた。
 屋敷は部屋の隅々まで調べられ、例の人魚も発見された。
 研究室で見つかった記録から男が手掛けていた魔物作成の研究が明るみに出て、僕の証言から人魚が誘拐された被害者であることも明らかになった。
 この事実に、ギルベルトさんは大分ショックを受けたようだった。
 それはそうだろう。知らなかったとはいえ、誘拐事件の被害者を殺してしまったという事実を知らされたのだから。
 人魚は王都に送られることになった。
 このまま家族の元に返すよりも、その方がひょっとしたら元の人間に戻れる方法が見つかるかもしれないという考えからの苦渋の決断だった。
 こうして、街を騒がせていた誘拐事件と魔物出没事件は、何ともやりきれない思いを残したまま終焉を迎えたのであった。

「シルカ、お前が協力してくれたお陰で事件は解決した。恩に着る」
 後日。僕の店に来たギルベルトさんは、カウンターの上に革袋を置きながら頭を下げた。
「後味の悪い事件だったな。愚かなことを考える輩は、なかなかいなくならないもんだな」
「この世で人間が一番偉いんだと勘違いしてる奴がいる限り、こういう事件はなくならないと思いますよ」
 僕は肩を竦めて、革袋の口を開いた。
 中には、マロニの苗がぎっしり詰まっていた。
 これだけの数、調達するのも大変だったろうに。
 まあ、囮調査に協力したらくれるという約束だったのだ。有難く頂戴するが。
「それにしても……よくあの場所を見つけられましたね」
「ああ、それはお前さんの犬がな」
 ギルベルトさんは店の前でひなたぼっこをしているシルバーに目を向けた。
「俺たちを案内してくれたんだ。まるで道を知ってるみたいに、あの場所まで迷わなかったんだぞ」
「へぇ」
 そんな活躍をしたことも大した労力ではないと言っているかのように、シルバーは暢気に欠伸をしている。
 道に残ってた僕の匂いを辿ったとか、そんなところだろうか。
 まあ何であれ、シルバーのお陰で僕は助かったわけだし、後で御褒美に肉を買ってきてやるとするか。
「やっぱり、錬金術師は一味違うな。警備隊が解決できない事件をあっさり解決してしまうんだからな」
「たまたまですよ。錬金術師だから特別なことができるとか、そう思われたら困ります」
 ギルベルトさんの言葉に僕は苦笑した。
 これで錬金術師は何でもできるなんてイメージが付いたら、ますます僕のところに厄介事が持ち込まれるようになってしまう。
 そんなのは御免である。
「冒険者さんの方がよほど頼りになりますよ。これからも何か事件が起きた時は、冒険者さんたちに解決をお願いすることをお勧めします」
「そうか?」
 まあいいか、とギルベルトさんは言って、カウンターの前から離れた。
「まあこれからも、相談に乗ってくれ。頼りにしてるからな」
 じゃあな、と笑って彼は店から出ていった。
 これからも……って、厄介事は御免だよ僕は。
 本当に、相談に乗るだけならいいけどさ。
 ……まあいいか。
 僕はマロニの苗を作業台に置いて、シルバーに声を掛けた。
「シルバー、今日の御飯は肉にするけど、何の肉がいい?」
『肉?』
 閉じていた目を開けてこちらを見るシルバー。
『この前食べたやつがいいな。強盗が来た時に出してくれたやつ』
「グレイボアね。はいはい」
 今は丁度客もいないし、ちょっとだけ店を閉めて買い物に行ってくるか。
 僕はシルバーに店の中にいるように声を掛けて、入口に掛かっている『営業中』の札を『閉店中』の面に裏返した。
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