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第160話 一路南へ
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いつもの鞄にいつもの道具と食糧を詰め込んで。お決まりとなった魔術師のローブに身を包み。
僕はよろず屋の前で、シャーリーンさんが来るのを待っていた。
店の入口が僅かに開いており、そこからこっそりと覗き見るようにラフィナが立っている。彼女の背後にはシルバーの姿も見えた。
朝早いというのに、彼女たちは見送りのために表に出てきてくれたのだ。
僕は見送らなくていいよと言ったのだが、彼女は「師匠の晴れ舞台ですから」と言って外に出てくることを遠慮しようとはしなかったのである。
弟子に応援されているのだ。この旅、絶対に成功させないと。
肌寒さを感じる腕を擦りながら、待ち人を待つ時をしばし過ごす。
シャーリーンさんは、街の中心地に続く通りをこちらに向かって歩いてきた。
相変わらずの格好だ。外套も着ていないのに彼女は寒くはないのだろうか。
「お待たせしました」
彼女は僕の前まで来ると、控え目に頭を下げた。
そして挨拶もそこそこに、僕の脇に向けて左手を翳す。
「では、参りましょう」
すっと表情を引き締めて、力ある言葉を紡ぐ。
「サモン・ガルーダ」
彼女の全身から魔力のオーラが湧き出て、それは僕たちの目の前で大きな鳥の形になった。
大きさは四メートルほど。翼が大きく、全身が槍のようにすっとした鳥だ。
成程、彼女は幻獣使いなのか。
移動にどれほどの時間を費やすのだろうと思っていたから、これは有難い。
僕が思っていたよりも、ずっと早く旅を終えられそうだ。
「これに乗って下さい」
僕は言われた通りに幻獣の背中に乗った。
僕の後ろに、シャーリーンさんが乗る。
僕たちを乗せた幻獣は、頭を持ち上げて翼を大きく広げた。
巨体が前後に揺れながら舞い上がっていく。
以前に乗ったイオンの幻獣とは異なる乗り心地だ。あれよりも揺れはするが、転がり落ちるほどではない。
遠ざかっていく店の前で、ラフィナが懸命に手を振っているのが見えた。
「師匠、行ってらっしゃい!」
僕はそれに手を振って応えた。
一定の高度まで舞い上がった幻獣は、一路南を目指して晴れ渡った空を羽ばたき始めた。
幻獣が空を飛び始めて六時間が過ぎた。
幻獣はまだ高度を落とす素振りは見せない。
結構な速度で飛んでいるからアメミヤからは大分離れた場所まで来たのだろうが、一体何処まで行くつもりなのだろう。
「一体何処まで行くつもりなんだ?」
僕は前を向いたまま背後のシャーリーンさんに尋ねた。
彼女は僅かに身じろぎをして、言った。
「フリュー地方にあるハルマイズ山脈、そこにあるウスト遺跡という場所です」
フリュー地方……土地の約半分が砂漠地帯になっている南の熱帯地方だ。
以前ナナイがデザートドラゴン討伐に赴いていたアンゴラ砂漠がある地方である。
そんな場所に行くなんて、コールドドリンクの準備はしてないけど大丈夫なのか?
尋ねると、これから行く遺跡がある山脈は標高が高いところにあるので暑さを気にする必要はないという答えが返ってきた。
おそらく現地に到着するのは夜なので、今日は山の麓にある街で一泊して明日遺跡に向かうという。
街に泊まれるのは助かる。旅の疲れはなるべく翌日に持ち越したくはないからな。
「先を急ぐ旅ではありますが、確実にひとつずつ目の前のことをこなしていきましょう。焦って事を仕損じては意味がありませんから」
シャーリーンさんの言葉に僕は頷いて応える。
初日の旅は、平穏な移動だけで終わりそうだ。
僕たちを乗せた幻獣は、変わらぬ速度で地上から遥かに高いところを目的地を目指して翔けていった。
僕はよろず屋の前で、シャーリーンさんが来るのを待っていた。
店の入口が僅かに開いており、そこからこっそりと覗き見るようにラフィナが立っている。彼女の背後にはシルバーの姿も見えた。
朝早いというのに、彼女たちは見送りのために表に出てきてくれたのだ。
僕は見送らなくていいよと言ったのだが、彼女は「師匠の晴れ舞台ですから」と言って外に出てくることを遠慮しようとはしなかったのである。
弟子に応援されているのだ。この旅、絶対に成功させないと。
肌寒さを感じる腕を擦りながら、待ち人を待つ時をしばし過ごす。
シャーリーンさんは、街の中心地に続く通りをこちらに向かって歩いてきた。
相変わらずの格好だ。外套も着ていないのに彼女は寒くはないのだろうか。
「お待たせしました」
彼女は僕の前まで来ると、控え目に頭を下げた。
そして挨拶もそこそこに、僕の脇に向けて左手を翳す。
「では、参りましょう」
すっと表情を引き締めて、力ある言葉を紡ぐ。
「サモン・ガルーダ」
彼女の全身から魔力のオーラが湧き出て、それは僕たちの目の前で大きな鳥の形になった。
大きさは四メートルほど。翼が大きく、全身が槍のようにすっとした鳥だ。
成程、彼女は幻獣使いなのか。
移動にどれほどの時間を費やすのだろうと思っていたから、これは有難い。
僕が思っていたよりも、ずっと早く旅を終えられそうだ。
「これに乗って下さい」
僕は言われた通りに幻獣の背中に乗った。
僕の後ろに、シャーリーンさんが乗る。
僕たちを乗せた幻獣は、頭を持ち上げて翼を大きく広げた。
巨体が前後に揺れながら舞い上がっていく。
以前に乗ったイオンの幻獣とは異なる乗り心地だ。あれよりも揺れはするが、転がり落ちるほどではない。
遠ざかっていく店の前で、ラフィナが懸命に手を振っているのが見えた。
「師匠、行ってらっしゃい!」
僕はそれに手を振って応えた。
一定の高度まで舞い上がった幻獣は、一路南を目指して晴れ渡った空を羽ばたき始めた。
幻獣が空を飛び始めて六時間が過ぎた。
幻獣はまだ高度を落とす素振りは見せない。
結構な速度で飛んでいるからアメミヤからは大分離れた場所まで来たのだろうが、一体何処まで行くつもりなのだろう。
「一体何処まで行くつもりなんだ?」
僕は前を向いたまま背後のシャーリーンさんに尋ねた。
彼女は僅かに身じろぎをして、言った。
「フリュー地方にあるハルマイズ山脈、そこにあるウスト遺跡という場所です」
フリュー地方……土地の約半分が砂漠地帯になっている南の熱帯地方だ。
以前ナナイがデザートドラゴン討伐に赴いていたアンゴラ砂漠がある地方である。
そんな場所に行くなんて、コールドドリンクの準備はしてないけど大丈夫なのか?
尋ねると、これから行く遺跡がある山脈は標高が高いところにあるので暑さを気にする必要はないという答えが返ってきた。
おそらく現地に到着するのは夜なので、今日は山の麓にある街で一泊して明日遺跡に向かうという。
街に泊まれるのは助かる。旅の疲れはなるべく翌日に持ち越したくはないからな。
「先を急ぐ旅ではありますが、確実にひとつずつ目の前のことをこなしていきましょう。焦って事を仕損じては意味がありませんから」
シャーリーンさんの言葉に僕は頷いて応える。
初日の旅は、平穏な移動だけで終わりそうだ。
僕たちを乗せた幻獣は、変わらぬ速度で地上から遥かに高いところを目的地を目指して翔けていった。
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