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25 治療
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魔物が襲った市場から、怪我人が次々に運ばれてきた。
治療院のベッドは患者であふれ、入りきらなかった患者が道端で座り込んでいた。
「遅いっ! 早く治療の手伝いをしてちょうだい。あなたたちでも治療できそうな軽傷患者は向こうの通りにいるわよ!」
治療院ではオディットが張り切って、私達に無礼な命令をした。
「失礼ね! 私だって、そこそこ治療魔法が使えるようになってるのよ。見てらっしゃい!」
オディットの言い分に腹を立てた聖女が、道端でうめいている女性に近寄って、杖を出して治療を始めた。杖から出た光が女性を包み込み、ぱっくりと割れて肉の色を見せていた腕の傷が見る間にふさがっていった。女性は驚いたように腕を動かして、美しい聖女に感謝した。それを見ていた他の貴族聖女も同じように杖を取り出して、治療魔法を使った。聖女の治療を受けようと、私のまわりにもたくさんの人が寄ってきた。
「聖女様、お助けください」
「聖女様! 私の子を助けてください」
「痛いよぉ! 助けて!」
護衛の神殿騎士が私に近づかせまいと前に立った。
私は、彼らに背を向けて、治療院の中に入って行った。
「リリアーヌ様、何しに来たの? 治療魔法も使えない聖女はここにいても無駄よ! 邪魔だけはしないでちょうだい!」
血だらけの怪我人を癒していたオディットが大声で私をなじった。
患者からざわめきが聞こえて来た。
「治療魔法が使えないのか?」
「本当に聖女様なのか?」
「そんな聖女様なんて聞いたことがない」
「リリアーヌ様は神殿に戻って守られていてください。高貴な聖女様は、ここには不向きですわ」
患者の声を聞いて、オディットは嬉しそうに私にそう言った。
「オディットさん、私のことは心配しなくてもいいわ。あなたは治療にあたってちょうだい。私は重症の患者を診るわ」
「何言ってるのよ! 聖水は持ち出し禁止でしょ。あなたにできることなんて何もないのよ」
私はメアリーに持たせた籠から小さなガラス瓶を取り出した。
「聖水はなくても、これがあれば十分よ」
それは、神殿で売られている聖なる泉の水が入った小さなガラス瓶だった。聖水が買えない者たちが、わずかな効能を求めて泉の水を買っていくのだ。人によっては少し元気になった気がする程度の効果があるとか。
「聖なる泉の水なんて出してどうするつもりなの?」
「こうするのよ」
バカにしたようなオディットの目の前で、私は手に取ったガラス瓶をかごに戻して、かごに並んだ40本以上のビンに向けて手をかざした。
患者たちががこっちを見ている。観客は十分だ。
ぱあぁっと部屋の中に虹色の光があふれた。
私はかごの中からビンを一本取り出して、オディットと周りの患者に向けて見せた。
「重症患者にはこの聖水を使うわ。ここで作った聖水なら、神殿に支払いをする必要もないでしょう?」
虹色に輝くそのしずくを、隣のベッドでうめいている男性に一滴たらしながらそう言った。
足が食いちぎられていた男性から新しい足が生えるのを見て、観客は畏怖の表情を浮かべた。
これで、私の力は十分証明できた。
治療院のベッドは患者であふれ、入りきらなかった患者が道端で座り込んでいた。
「遅いっ! 早く治療の手伝いをしてちょうだい。あなたたちでも治療できそうな軽傷患者は向こうの通りにいるわよ!」
治療院ではオディットが張り切って、私達に無礼な命令をした。
「失礼ね! 私だって、そこそこ治療魔法が使えるようになってるのよ。見てらっしゃい!」
オディットの言い分に腹を立てた聖女が、道端でうめいている女性に近寄って、杖を出して治療を始めた。杖から出た光が女性を包み込み、ぱっくりと割れて肉の色を見せていた腕の傷が見る間にふさがっていった。女性は驚いたように腕を動かして、美しい聖女に感謝した。それを見ていた他の貴族聖女も同じように杖を取り出して、治療魔法を使った。聖女の治療を受けようと、私のまわりにもたくさんの人が寄ってきた。
「聖女様、お助けください」
「聖女様! 私の子を助けてください」
「痛いよぉ! 助けて!」
護衛の神殿騎士が私に近づかせまいと前に立った。
私は、彼らに背を向けて、治療院の中に入って行った。
「リリアーヌ様、何しに来たの? 治療魔法も使えない聖女はここにいても無駄よ! 邪魔だけはしないでちょうだい!」
血だらけの怪我人を癒していたオディットが大声で私をなじった。
患者からざわめきが聞こえて来た。
「治療魔法が使えないのか?」
「本当に聖女様なのか?」
「そんな聖女様なんて聞いたことがない」
「リリアーヌ様は神殿に戻って守られていてください。高貴な聖女様は、ここには不向きですわ」
患者の声を聞いて、オディットは嬉しそうに私にそう言った。
「オディットさん、私のことは心配しなくてもいいわ。あなたは治療にあたってちょうだい。私は重症の患者を診るわ」
「何言ってるのよ! 聖水は持ち出し禁止でしょ。あなたにできることなんて何もないのよ」
私はメアリーに持たせた籠から小さなガラス瓶を取り出した。
「聖水はなくても、これがあれば十分よ」
それは、神殿で売られている聖なる泉の水が入った小さなガラス瓶だった。聖水が買えない者たちが、わずかな効能を求めて泉の水を買っていくのだ。人によっては少し元気になった気がする程度の効果があるとか。
「聖なる泉の水なんて出してどうするつもりなの?」
「こうするのよ」
バカにしたようなオディットの目の前で、私は手に取ったガラス瓶をかごに戻して、かごに並んだ40本以上のビンに向けて手をかざした。
患者たちががこっちを見ている。観客は十分だ。
ぱあぁっと部屋の中に虹色の光があふれた。
私はかごの中からビンを一本取り出して、オディットと周りの患者に向けて見せた。
「重症患者にはこの聖水を使うわ。ここで作った聖水なら、神殿に支払いをする必要もないでしょう?」
虹色に輝くそのしずくを、隣のベッドでうめいている男性に一滴たらしながらそう言った。
足が食いちぎられていた男性から新しい足が生えるのを見て、観客は畏怖の表情を浮かべた。
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