15 / 70
第1部 貴族学園編
15 運動会練習
しおりを挟む
貴族学園での一日は体育に始まり、体育に終わる。
運動会まであと3日。
「すごいよ、リョウ君! 障害物競走も、のぼり棒もリョウ君が一番だよ!」
「モンスター競争でもすっごく速いし! どうしたらそんなに速く走れるの?」
どこの世界でも、運動のできる男の子は人気者だ。
うちのリョウ君はタンポポ組の子達に毎日囲まれている。先生たちもリョウ君には優しくなった。リョウ君は頭もいいもんね。勇者文字のカタカナも10日でマスターしたよ。天才すぎる……。悔しいから、ひらがなは教えてあげないよ。
「姉さま!」
休憩から帰った私に気が付いて、リョウ君はタンポポ組の集団の中から手を振った。私も片手をあげてそれに応える。
「レティシアちゃんは、もうちょっとがんばった方がいいよ」
アニータちゃんがタオルで汗を拭きながら、あきれたように私を見た。
分かってるよ。分かってるけど、疲れるんだよー。迷路を走ったり、狭い筒の中をくぐったり、のぼり棒を登ったり……。
体力がぁー。
ねえ、貴族のお嬢様に、こんなこと本当に必要?
刺繍したりお茶飲んだりするだけじゃ、ダメなの? 異世界貴族令嬢ってこんなに体力いる?
でも、そういえば薔薇組の運動会の練習って見たことないな。あの意地悪なマッキントン侯爵令嬢も、こんな風に汗だくになって走ってるのかな?
「薔薇組の練習? そういえばタンポポ組とは違うみたいですわね。王太子様はいつもブランコだし……」
ルビアナちゃんも薔薇組の練習風景は見ていないみたいだ。
上級貴族は特別なのかな?
「もう、レティシアちゃんは薔薇組のことを気にしてる暇なんてないでしょ! 先週の国語のテストも赤点だったじゃない。このままだと夏休みが補習になっちゃうよ」
「うー、でもでも、算数は満点だったよ。地理も歴史もぎりぎり合格だったし」
「だけど、芸術点が低いでしょ。もっとしっかりして!」
アニータちゃんは言葉はきついけど、本気で心配してくれる。ちょっとうれしい。この世界に生まれ変わって、両親は基本的に子供に無関心だから、こんな風に叱られるのって久しぶりだ。
「ありがとう、アニータちゃん」
アニータちゃんにぎゅっと抱き付いてお礼を言うと、
「ちょ、ちょっと、もう、レティシアちゃんったら」
アニータちゃんも恥ずかしそうに抱きしめ返してくれた。
「ふふふ、みんな仲良し」
ルビアナちゃんも一緒にくっついて、団子状になって笑いあった。
貴族学園って絶対いやだって思ってたけど、友達っていいね。
友達といえば、あれから毎週、休みの日はオスカー様の家に遊びに行かせてもらってる。リョウ君はオスカー様と一緒に勇者ごっこをして遊ぶ。私はその間、勇者の残した書記を見せてもらったり、勇者の伝説を読んだりして過ごした。
メモ帳に書いた勇者文字を思い出す。なんで勇者リョウはカタカナで書いたのかな? 日本人に読んでもらいたかったのなら、漢字とひらがなで書けばいいのにね。もしかして、将来だれかに解読してほしかったのかな? 漢字やひらがな混じりの日本語は難しいから、簡単なカタカナで? ってことは、まだ誰も解読していない今のうちに、私が勇者の遺産を見つけなきゃ。そのためには、やっぱり、ダンジョンで良い契約獣を見つけることがマストなのかな?
うん、もうちょっと運動会の練習がんばろう。
「のぼり棒の自主練習してくる!」
「やる気出たね! レティシアちゃん、私も付き合うよ」
「私も、もう一回やりますわ!」
3人でのぼり棒の場所まで走った。
「あ」
でも、その途中で、出会ってしまった。薔薇の4人組。王太子と侯爵令嬢、そして伯爵子息その1とその2。
王太子は薄い水色の瞳で私をじろっとにらみつけた。
また、絡まれるかも。アニータちゃんとルビアナちゃんを巻き込むわけにはいかない。二人をどうやって逃がそうか考えていると、王太子は私をにらんだ後、何も言わずに黙ってブランコの方に走って行った。
アッシュブロンドの伯爵令息その2がすぐ後に続いた。こいつは前回、私に石をぶつけたヤツだ。全然謝ってももらってない。もちろん、親も謝りに来ない。ああ、貴族って……。
でも、後に残ったダークブロンドの伯爵令息が、私に頭を下げた。
「この前はダニエルが怪我させてごめん」
やったのは、彼じゃなくてダニエルってヤツなのに、代わりに謝罪するなんて、彼は本当はいい人? 単純な私はすぐに考えを改めた。
「僕はロレンス。コッパー伯爵家の息子だ。君がゴールドウィン公爵の姪だってことを知らなかったんだ。本当にごめん。コッパー家はゴールドウィン公爵家の傍系なのに……」
ああ、家の都合的な謝罪なんだ。でも、まあ、いいよ。私は、たかが男爵家だし。
「ちょっと、何を謝ってんの! ゴールドウィン公爵っていっても、この子の親は追い出されたんでしょ? 冒険者なんてつまんない仕事しかできないから。今は、ただの男爵でしょ? それに、ゴールドウィン公爵家はあの悪女オリヴィアを生み出した家よ、悪女の身内よ!」
ロレンスの隣で、黒髪赤目のマッキントン侯爵令嬢がギャンギャン吠えた。
「生意気な子ね! 今に見てなさい! あんたなんてどうせ、つまんない契約獣しか見つけられないんだから! その時はその目をえぐり出してあげるわよ!」
「おい、やめなよ、スカラ。もう、行こうよ。ビクトル様のブランコを押さなきゃ」
「ふんっだ! いい気になんないでよね! 悪女の身内!」
一方的に私をなじって、スカラ・マッキントンはブランコの方へ走って行った。ロレンスも私に小さく頭を下げてからスカラを追いかけた。
ああ、もう。やる気なくなったよ。
なんで、なんでこんなこと言われなきゃいけないの?
悪女の身内って……。
身内どころか娘って知られたらどうなるんだろう。
あ、ルビアナちゃんとアニータちゃんは、私があの悪女オリヴィアの身内だって知って、仲良しをやめないよね?
「ひどいね。あんないじわる言うなんて」
「気にしないで。私達はオリヴィア様を悪女だなんて思ってないの」
二人は私に寄り添うようにくっついて、頭をなでてくれた。
「オリヴィア様のこと、お母様が言ってたわ。意地悪な上級貴族にコップの水をかけられた平民の子がいたんだけど、オリヴィア様はそれを見て、その上級貴族に頭からトマトソースをかけたんだって」
「うちのママも言ってた。教科書に落書きされた子がいたら、オリヴィア様は、その犯人の名前と悪口を学園の校舎の壁に大きくペンキで書いたんだって」
「うちのお母様みたいに下級貴族は、みんなオリヴィア様のファンだったんだって」
「ママも。王様との結婚がなくなっちゃったのは残念だけど、オリヴィア様にこの国は狭すぎるんだって言ってた」
二人は私をぎゅっと抱きしめて慰めてくれた。
そうなんだ。ただの悪女じゃなかったんだ。実母のことを慕っていた人もいたんだ。
でも、……。私は会ったことも見たこともない。
悪女だって聞いてたし。私の妊娠が分かった時に、毒を飲んで堕胎しようとしたって聞いたから、会いたいなんて今まで一度も思わなかったよ。だけど……。
みんな自分勝手だ。私も、勝手に期待して、勝手に失望して。せっかく転生して人生やり直してるのに、全力でやってるって言える?
もっと、がんばらなきゃ。
だって、私にはこんなに良い友達がいるから。
それから、大切な弟のリョウ君。
私、幸せだなぁ。
運動会まであと3日。
「すごいよ、リョウ君! 障害物競走も、のぼり棒もリョウ君が一番だよ!」
「モンスター競争でもすっごく速いし! どうしたらそんなに速く走れるの?」
どこの世界でも、運動のできる男の子は人気者だ。
うちのリョウ君はタンポポ組の子達に毎日囲まれている。先生たちもリョウ君には優しくなった。リョウ君は頭もいいもんね。勇者文字のカタカナも10日でマスターしたよ。天才すぎる……。悔しいから、ひらがなは教えてあげないよ。
「姉さま!」
休憩から帰った私に気が付いて、リョウ君はタンポポ組の集団の中から手を振った。私も片手をあげてそれに応える。
「レティシアちゃんは、もうちょっとがんばった方がいいよ」
アニータちゃんがタオルで汗を拭きながら、あきれたように私を見た。
分かってるよ。分かってるけど、疲れるんだよー。迷路を走ったり、狭い筒の中をくぐったり、のぼり棒を登ったり……。
体力がぁー。
ねえ、貴族のお嬢様に、こんなこと本当に必要?
刺繍したりお茶飲んだりするだけじゃ、ダメなの? 異世界貴族令嬢ってこんなに体力いる?
でも、そういえば薔薇組の運動会の練習って見たことないな。あの意地悪なマッキントン侯爵令嬢も、こんな風に汗だくになって走ってるのかな?
「薔薇組の練習? そういえばタンポポ組とは違うみたいですわね。王太子様はいつもブランコだし……」
ルビアナちゃんも薔薇組の練習風景は見ていないみたいだ。
上級貴族は特別なのかな?
「もう、レティシアちゃんは薔薇組のことを気にしてる暇なんてないでしょ! 先週の国語のテストも赤点だったじゃない。このままだと夏休みが補習になっちゃうよ」
「うー、でもでも、算数は満点だったよ。地理も歴史もぎりぎり合格だったし」
「だけど、芸術点が低いでしょ。もっとしっかりして!」
アニータちゃんは言葉はきついけど、本気で心配してくれる。ちょっとうれしい。この世界に生まれ変わって、両親は基本的に子供に無関心だから、こんな風に叱られるのって久しぶりだ。
「ありがとう、アニータちゃん」
アニータちゃんにぎゅっと抱き付いてお礼を言うと、
「ちょ、ちょっと、もう、レティシアちゃんったら」
アニータちゃんも恥ずかしそうに抱きしめ返してくれた。
「ふふふ、みんな仲良し」
ルビアナちゃんも一緒にくっついて、団子状になって笑いあった。
貴族学園って絶対いやだって思ってたけど、友達っていいね。
友達といえば、あれから毎週、休みの日はオスカー様の家に遊びに行かせてもらってる。リョウ君はオスカー様と一緒に勇者ごっこをして遊ぶ。私はその間、勇者の残した書記を見せてもらったり、勇者の伝説を読んだりして過ごした。
メモ帳に書いた勇者文字を思い出す。なんで勇者リョウはカタカナで書いたのかな? 日本人に読んでもらいたかったのなら、漢字とひらがなで書けばいいのにね。もしかして、将来だれかに解読してほしかったのかな? 漢字やひらがな混じりの日本語は難しいから、簡単なカタカナで? ってことは、まだ誰も解読していない今のうちに、私が勇者の遺産を見つけなきゃ。そのためには、やっぱり、ダンジョンで良い契約獣を見つけることがマストなのかな?
うん、もうちょっと運動会の練習がんばろう。
「のぼり棒の自主練習してくる!」
「やる気出たね! レティシアちゃん、私も付き合うよ」
「私も、もう一回やりますわ!」
3人でのぼり棒の場所まで走った。
「あ」
でも、その途中で、出会ってしまった。薔薇の4人組。王太子と侯爵令嬢、そして伯爵子息その1とその2。
王太子は薄い水色の瞳で私をじろっとにらみつけた。
また、絡まれるかも。アニータちゃんとルビアナちゃんを巻き込むわけにはいかない。二人をどうやって逃がそうか考えていると、王太子は私をにらんだ後、何も言わずに黙ってブランコの方に走って行った。
アッシュブロンドの伯爵令息その2がすぐ後に続いた。こいつは前回、私に石をぶつけたヤツだ。全然謝ってももらってない。もちろん、親も謝りに来ない。ああ、貴族って……。
でも、後に残ったダークブロンドの伯爵令息が、私に頭を下げた。
「この前はダニエルが怪我させてごめん」
やったのは、彼じゃなくてダニエルってヤツなのに、代わりに謝罪するなんて、彼は本当はいい人? 単純な私はすぐに考えを改めた。
「僕はロレンス。コッパー伯爵家の息子だ。君がゴールドウィン公爵の姪だってことを知らなかったんだ。本当にごめん。コッパー家はゴールドウィン公爵家の傍系なのに……」
ああ、家の都合的な謝罪なんだ。でも、まあ、いいよ。私は、たかが男爵家だし。
「ちょっと、何を謝ってんの! ゴールドウィン公爵っていっても、この子の親は追い出されたんでしょ? 冒険者なんてつまんない仕事しかできないから。今は、ただの男爵でしょ? それに、ゴールドウィン公爵家はあの悪女オリヴィアを生み出した家よ、悪女の身内よ!」
ロレンスの隣で、黒髪赤目のマッキントン侯爵令嬢がギャンギャン吠えた。
「生意気な子ね! 今に見てなさい! あんたなんてどうせ、つまんない契約獣しか見つけられないんだから! その時はその目をえぐり出してあげるわよ!」
「おい、やめなよ、スカラ。もう、行こうよ。ビクトル様のブランコを押さなきゃ」
「ふんっだ! いい気になんないでよね! 悪女の身内!」
一方的に私をなじって、スカラ・マッキントンはブランコの方へ走って行った。ロレンスも私に小さく頭を下げてからスカラを追いかけた。
ああ、もう。やる気なくなったよ。
なんで、なんでこんなこと言われなきゃいけないの?
悪女の身内って……。
身内どころか娘って知られたらどうなるんだろう。
あ、ルビアナちゃんとアニータちゃんは、私があの悪女オリヴィアの身内だって知って、仲良しをやめないよね?
「ひどいね。あんないじわる言うなんて」
「気にしないで。私達はオリヴィア様を悪女だなんて思ってないの」
二人は私に寄り添うようにくっついて、頭をなでてくれた。
「オリヴィア様のこと、お母様が言ってたわ。意地悪な上級貴族にコップの水をかけられた平民の子がいたんだけど、オリヴィア様はそれを見て、その上級貴族に頭からトマトソースをかけたんだって」
「うちのママも言ってた。教科書に落書きされた子がいたら、オリヴィア様は、その犯人の名前と悪口を学園の校舎の壁に大きくペンキで書いたんだって」
「うちのお母様みたいに下級貴族は、みんなオリヴィア様のファンだったんだって」
「ママも。王様との結婚がなくなっちゃったのは残念だけど、オリヴィア様にこの国は狭すぎるんだって言ってた」
二人は私をぎゅっと抱きしめて慰めてくれた。
そうなんだ。ただの悪女じゃなかったんだ。実母のことを慕っていた人もいたんだ。
でも、……。私は会ったことも見たこともない。
悪女だって聞いてたし。私の妊娠が分かった時に、毒を飲んで堕胎しようとしたって聞いたから、会いたいなんて今まで一度も思わなかったよ。だけど……。
みんな自分勝手だ。私も、勝手に期待して、勝手に失望して。せっかく転生して人生やり直してるのに、全力でやってるって言える?
もっと、がんばらなきゃ。
だって、私にはこんなに良い友達がいるから。
それから、大切な弟のリョウ君。
私、幸せだなぁ。
92
あなたにおすすめの小説
家族の肖像~父親だからって、家族になれるわけではないの!
みっちぇる。
ファンタジー
クランベール男爵家の令嬢リコリスは、実家の経営手腕を欲した国の思惑により、名門ながら困窮するベルデ伯爵家の跡取りキールと政略結婚をする。しかし、キールは外面こそ良いものの、実家が男爵家の支援を受けていることを「恥」と断じ、リコリスを軽んじて愛人と遊び歩く不実な男だった 。
リコリスが命がけで双子のユフィーナとジストを出産した際も、キールは朝帰りをする始末。絶望的な夫婦関係の中で、リコリスは「天使」のように愛らしい我が子たちこそが自分の真の家族であると決意し、育児に没頭する 。
子どもたちが生後六か月を迎え、健やかな成長を祈る「祈健会」が開かれることになった。リコリスは、キールから「男爵家との結婚を恥じている」と聞かされていた義両親の来訪に胃を痛めるが、実際に会ったベルデ伯爵夫妻は―?
ひめさまはおうちにかえりたい
あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編)
王冠を手に入れたあとは、魔王退治!? 因縁の女神を殴るための策とは。(聖女と魔王と魔女編)
平和な女王様生活にやってきた手紙。いまさら、迎えに来たといわれても……。お帰りはあちらです、では済まないので撃退します(幼馴染襲来編)
追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて
だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。
敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。
決して追放に備えていた訳では無いのよ?
婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。
拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。
失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
騎士団の繕い係
あかね
ファンタジー
クレアは城のお針子だ。そこそこ腕はあると自負しているが、ある日やらかしてしまった。その結果の罰則として針子部屋を出て色々なところの繕い物をすることになった。あちこちをめぐって最終的に行きついたのは騎士団。花形を譲って久しいが消えることもないもの。クレアはそこで繕い物をしている人に出会うのだが。
地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ
タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。
灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。
だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。
ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。
婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。
嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。
その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。
翌朝、追放の命が下る。
砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。
――“真実を映す者、偽りを滅ぼす”
彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。
地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。
プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!
山田 バルス
恋愛
王都の中央にそびえる黄金の魔塔――その頂には、選ばれし者のみが入ることを許された「王都学院」が存在する。魔法と剣の才を持つ貴族の子弟たちが集い、王国の未来を担う人材が育つこの学院に、一人の少女が通っていた。
名はベアトリス=ローデリア。金糸を編んだような髪と、透き通るような青い瞳を持つ、美しき伯爵令嬢。気品と誇りを備えた彼女は、その立ち居振る舞いひとつで周囲の目を奪う、まさに「王都の金の薔薇」と謳われる存在であった。
だが、彼女には胸に秘めた切ない想いがあった。
――婚約者、シャルル=フォンティーヌ。
同じ伯爵家の息子であり、王都学院でも才気あふれる青年として知られる彼は、ベアトリスの幼馴染であり、未来を誓い合った相手でもある。だが、学院に入ってからというもの、シャルルは王女殿下と共に生徒会での活動に没頭するようになり、ベアトリスの前に姿を見せることすら稀になっていった。
そんなある日、ベアトリスは前世を思い出した。この世界はかつて病院に入院していた時の乙女ゲームの世界だと。
そして、自分は悪役令嬢だと。ゲームのシナリオをぶち壊すために、ベアトリスは立ち上がった。
レベルを上げに励み、頂点を極めた。これでゲームシナリオはぶち壊せる。
そう思ったベアトリスに真の目的が見つかった。前世では病院食ばかりだった。好きなものを食べられずに死んでしまった。だから、この世界では美味しいものを食べたい。ベアトリスの食への欲求を満たす旅が始まろうとしていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる