【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜

白崎りか

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第2部 魔法学校編

67 幼女育成計画〜ルシル〜

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 生まれた時に感じた飢えと乾きは、すぐに消滅したいと思うぐらいに酷かった。

 僕は闇の精霊王が消滅した後に生まれた。僕たち精霊が、なぜこの世界にいるのかは分からない。なにか大きな力が僕をここに縛り付ける。

 この国と精霊界だけが僕の住処だ。

 誕生と同時に、僕は闇の精霊王の記憶を引き継いだ。消滅する直前の記憶。全てを滅ぼしたくなるほどの飢えと乾き、そして、孤独と悲しみが、僕の心を苛んだ。

 側にいてくれたのは、聖女リシアと勇者リョウ。あと、旅の仲間の女二人。この二人は別にどうでもいい。ただの人間だ。

 聖女リシアは僕を聖なる魔力で癒してくれた。闇の魔王を浄化した力だ。聖なる魔力が自分の生きる糧になると言うことは、すぐにわかった。この魔力が自分を正気に保つのだ。絶対に手放してはいけない。
 勇者リョウは懐かしくて安心できる魔力の匂いがした。闇の精霊王の力だ。どこかで彼の加護を受けたのだろう。
 この二人がいたら、僕は飢えと孤独に壊れなくていい。ずっと一緒にいよう。

 そう思っていたのに。
 人間はたった100年で死んでしまうそうだ。早すぎないか?

 リシアにプロポーズしたら、あっけなくフラれてしまった。
 王子が好きだからと。

 困ったな。僕の伴侶にしてしまえば、千年の寿命を与えて、一緒に消滅することができるのに。僕のものにしてしまえば、人の世の制約に縛られなくなるのに。リシアが死んでしまったら、聖なる魔力がもらえなくなるじゃないか。どうすればいい?

 リョウが僕を慰めてくれた。ずっと未来に、リシアと同じ聖の魔力の持ち主が現れるって。リョウはどうやら闇の精霊王の力で未来を見て来たらしい。闇の精霊王の力は時間と次元を飛ぶ力だから。
 それで、すこし希望が持てた。聞けば、僕が契約する未来の女の子は、まだ6歳だそうだ。やった!

 僕が育てよう。そして、僕だけの女の子にするんだ。僕の言うことだけを聞いて、僕のことだけを見たらいい。その子の聖なる魔力は全部、僕だけのものだ。リシアみたいに王子に取られないようにしないとな。そうだ。いっそのこと、すぐに伴侶にして、精霊界に閉じ込めよう。

「それはだめだよ! 彼女の自由を奪ってはいけないよ」

 僕の計画を、リョウは顔色を変えて止めようとした。
 なんで? 何がダメ? 大切にするよ。浮気もしないよ。
 甘やかして、なんでも与えて、誰も近寄らせないよ。

「うわぁ、ヤンデレ属性、キモ。いや、この美貌ならあり? ああ、私は無理だわ。いや、やっぱ、ロリは絶対ダメ!!」

 リシアが意味の分からない言葉を言っている。

 ああ、僕のかわいい6歳の女の子。僕の手で、お菓子をいっぱい食べさせてあげる。かわいいドレスを着せてあげよう。今からたくさん服を作らせないとな。精霊界の僕の城にも、かわいい女の子用の部屋を作ろう。大きな鳥かごのような部屋。

「! とにかく、ダメだからね! 絶対に、閉じ込めたりはしないで! そうだ! 人間は、成人するまでは結婚できないんだ。それに、プロポーズには了承の返事が必要だよ。もしも断られたら、きっぱりあきらめるのがきまりだよ。だから、絶対、絶対、無理やり連れて行くのは禁止だからね。いいかい、彼女が成人して、君の気持に応えてからだよ」

 リョウは念押しのように言ってきた。リシアもそれに賛成して、

「言うこと聞かないと、聖なる魔力はあげないからね」

 なんて脅してきたから、誓約してしまった。

 あーあ、僕の楽しい幼女育成計画が……。

 僕が興味本位で、まわりの男の人たちに、ペットの飼育の仕方とか調教の方法を聞いて回ったから、リョウとリシアは頭を抱えて話し合ったようだ。

「異世界人を召喚する? そんな魔道具を作ってるの?!」

「うん、聖の魔力を持つのが、異世界の魂の持ち主だけなら、いっそ異世界人を召喚した方がいいんじゃないかって。それなら、たくさん聖の魔力を持ってるだろう?」

「! ダメだよっ! それって、誘拐と一緒だよ。聖女召喚なんて、小説のテンプレなんだから。召喚に巻き込まれて、パッとしない女の子が一緒に来て、私が本当の聖女よっていうパターンをよく読んだよ」

「テンプレっていうのが何かは分からないけど、誘拐っていうのは分かるよ。でも、僕もだけど、このままでは死んでしまうって時に、召喚されて生きることができるなら、その子にとっては、悪いことではないかもしれない」

「それは、そうだけど……。うー、でもでも、それでいいのかなぁ? ルシルはアレだし」

「そのルシルが心配だからだよ。……それに、もしも、彼女が監禁されたら……。とにかく、僕はこれを作って彼女に託すよ。もちろん、簡単には見つからないようにする。彼女には他にも選択肢を与えてあげたいんだ」

「まあ、リョウ君が心配する気持ちは分かるよ。そもそも私も、ルシルを拒んじゃった責任もあるしね。そうだ、ちゃんと条件付けようよ。まず、絶対に幼女召喚はだめ! 犯罪だからね。それから、死にそうだけど生きたい人限定。死にたい人はそっとしてあげようよ。それと、」

 二人の話し合いを聞いて、僕はほくそ笑んだ。異世界人を召喚する? それって、最高じゃないか。異世界人は転生者よりも、聖の魔力がたっぷりあるんだよね。召喚されるのは、この世界のことを何も知らない女の子。ああ、いいな。それ、僕の望み通りだ。

 今すぐその魔道具が欲しいけれど、完成したら、リシアが結界を施して隠すそうだ。どうにかして、手に入れよう。未来の僕の契約者がそれを託されるんだね。
 
 いいね。希望がもてたよ。あの甘くてクラクラするような聖なる魔力をたくさん持った異世界人を召喚できる日まで、しばらくおとなしくしておこう。






※※※※※

 ルシルが気持ち悪くてごめんなさい。これは、例えば、
 
 自分にしか懐かない子猫を、家から出さずに、愛情いっぱいに大事に育てる感覚です。もちろん、他の猫に浮気なんかしません。一途です。

 つまりは、異種族への愛です。
 あと、聖女リシアにフラれた影響もあります。かなり歪んでます。
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