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23 ゴリラ好きな女性?
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「お父様に手紙を書くわ。隠し子なんかいないって、はっきり否定してもらうの」
メリッサは、絶対に父の娘じゃない。
父を信じてるけど、……万が一、ううん、一億分の一ぐらいの確率で、酔っぱらった時に、一服盛られて、襲われちゃったって可能性は、ある?……いや、ないない。絶対にない。だって、父は、ぜんぜん女性にモテないから。顔がゴリラに似ているから、怖がられてるし。……うーん。でも、筋肉フェチで特殊な性癖がある女性になら、需要があるかも?
「今の辺境は、手紙も届けられない状態でして……」
あ、そうだった。スタンピードで魔物が大量発生してるんだった。
辺境は閉鎖されている。
魔物が入って来れないように、周囲の領地は門を閉めて、辺境への出入りを禁止している。
手紙なんて届かない。連絡を取る手段がない。
お父様、怪我してないかな?
魔物と戦うのは、すごく危険だよね。
ゴリラ顔だからモテない、なんてひどいことを思ってしまって、ごめんね。
「大丈夫ですよ。閣下は殺しても死にませんよ」
ルカ……。慰めてくれるのはありがたいんだけど、普通は殺されたら死ぬよ?
「隠し子発言は、弁護士の作戦で、ただの言いがかりですよ。メリッサは、閣下に全く似てないです」
「それはそうだけど。でも、それを言うなら、私もお父様に似てないわよ」
「閣下は人外ですからね」
……ルカはお父様に厳しいな……。
でも、私も、父に似なくて本当に良かったって思ってる。ゴリラ娘になるのは嫌だよ。
「アリシア様は、マリア様そっくりで、美人になりましたね」
「閣下に似たところがなくて、良かったですね。人間の顔です」
二人は、そう言って褒めて(?)くれる。
「まあ、生まれてくる子供が男なら、はっきりするでしょうね」
「男の子だったら? どうして?」
お腹の中のディートは、男の子だよ。
「血族眼です。南の辺境伯の直系の男子は、たいてい赤い目を受け継ぎます」
え? なにそれ。初めて聞いた。
「王族と辺境伯家には、その血筋に特有の瞳の色があるのです。南の辺境伯家は赤、東の辺境伯家は紫というように。まあ、絶対に直系に受け継がれるというわけではありませんが。南の辺境伯家のように男子だけに受け継がれたり、逆に、東のように女子だけに受け継がれることもあります」
ってことは……、あっ、
「でも、ディートは、赤だったよ!」
立ち上がって叫ぶ。割れた皿を片付けていたハンナが、びくっと背中を震わせた。
人手不足なので、彼女には、このままうちで働いてもらうことにした。でも、大幅に減給して、24時間住み込みで労働させるつもり。うちはブラック職場だからね。
ルカには、甘いって叱られたけど、今度裏切ったら、コンロン男爵の前に裸にして突き出すって脅したら、もう二度と裏切らないと約束してくれた。ヒロインちゃんの母親は、善人って設定だったし。これでいいよね? それに、ルカが厳しく再教育するって言ってたし。
「ディート?」
ルカは私の言葉を聞きとがめたけど、なんでもないとごまかす。
小説の中の話を語っても、信じてもらえないしね。
「その、ね、もしもメリッサの子供が、赤い目だったらどうなるの?」
「まさか。そんなことはありえません。しかしですな。辺境伯の血筋の誰かの子……。いや、あの件以来、残っている血筋はアーサー様のみで、……」
「例えば、閣下の父親が、亡くなる前に、メリッサの母親と関係していた可能性はありますか?」
「いや、それはないですな。アーサー様が誕生した後、先代辺境伯は落馬が原因で、子供を作れない体になってしまったので……。うーむ。それに、辺境伯の親類で、血族眼を受け継ぐことができるほど濃い血筋は、他にはいなかったと……」
そういえば、私には血の近い親戚はいないんだった。父は一人息子で、祖父母はずっと前に亡くなっているって言ってたし。じゃあ、やっぱり父の隠し子……?
「大丈夫ですよ。お嬢様。閣下の子は、お嬢様だけです」
ルカはいつものように「大丈夫」と言ってくれるけど、小説を知っている私には、全然大丈夫だと思えなかった。
ディートは赤い目で、炎の魔法が得意。彼は、辺境伯の父の血をひいてるんじゃないの?
父よ、ゴリラ好きの女性に無理やり襲われて、妊娠させたりしてないよね? 大丈夫かな?
メリッサは、絶対に父の娘じゃない。
父を信じてるけど、……万が一、ううん、一億分の一ぐらいの確率で、酔っぱらった時に、一服盛られて、襲われちゃったって可能性は、ある?……いや、ないない。絶対にない。だって、父は、ぜんぜん女性にモテないから。顔がゴリラに似ているから、怖がられてるし。……うーん。でも、筋肉フェチで特殊な性癖がある女性になら、需要があるかも?
「今の辺境は、手紙も届けられない状態でして……」
あ、そうだった。スタンピードで魔物が大量発生してるんだった。
辺境は閉鎖されている。
魔物が入って来れないように、周囲の領地は門を閉めて、辺境への出入りを禁止している。
手紙なんて届かない。連絡を取る手段がない。
お父様、怪我してないかな?
魔物と戦うのは、すごく危険だよね。
ゴリラ顔だからモテない、なんてひどいことを思ってしまって、ごめんね。
「大丈夫ですよ。閣下は殺しても死にませんよ」
ルカ……。慰めてくれるのはありがたいんだけど、普通は殺されたら死ぬよ?
「隠し子発言は、弁護士の作戦で、ただの言いがかりですよ。メリッサは、閣下に全く似てないです」
「それはそうだけど。でも、それを言うなら、私もお父様に似てないわよ」
「閣下は人外ですからね」
……ルカはお父様に厳しいな……。
でも、私も、父に似なくて本当に良かったって思ってる。ゴリラ娘になるのは嫌だよ。
「アリシア様は、マリア様そっくりで、美人になりましたね」
「閣下に似たところがなくて、良かったですね。人間の顔です」
二人は、そう言って褒めて(?)くれる。
「まあ、生まれてくる子供が男なら、はっきりするでしょうね」
「男の子だったら? どうして?」
お腹の中のディートは、男の子だよ。
「血族眼です。南の辺境伯の直系の男子は、たいてい赤い目を受け継ぎます」
え? なにそれ。初めて聞いた。
「王族と辺境伯家には、その血筋に特有の瞳の色があるのです。南の辺境伯家は赤、東の辺境伯家は紫というように。まあ、絶対に直系に受け継がれるというわけではありませんが。南の辺境伯家のように男子だけに受け継がれたり、逆に、東のように女子だけに受け継がれることもあります」
ってことは……、あっ、
「でも、ディートは、赤だったよ!」
立ち上がって叫ぶ。割れた皿を片付けていたハンナが、びくっと背中を震わせた。
人手不足なので、彼女には、このままうちで働いてもらうことにした。でも、大幅に減給して、24時間住み込みで労働させるつもり。うちはブラック職場だからね。
ルカには、甘いって叱られたけど、今度裏切ったら、コンロン男爵の前に裸にして突き出すって脅したら、もう二度と裏切らないと約束してくれた。ヒロインちゃんの母親は、善人って設定だったし。これでいいよね? それに、ルカが厳しく再教育するって言ってたし。
「ディート?」
ルカは私の言葉を聞きとがめたけど、なんでもないとごまかす。
小説の中の話を語っても、信じてもらえないしね。
「その、ね、もしもメリッサの子供が、赤い目だったらどうなるの?」
「まさか。そんなことはありえません。しかしですな。辺境伯の血筋の誰かの子……。いや、あの件以来、残っている血筋はアーサー様のみで、……」
「例えば、閣下の父親が、亡くなる前に、メリッサの母親と関係していた可能性はありますか?」
「いや、それはないですな。アーサー様が誕生した後、先代辺境伯は落馬が原因で、子供を作れない体になってしまったので……。うーむ。それに、辺境伯の親類で、血族眼を受け継ぐことができるほど濃い血筋は、他にはいなかったと……」
そういえば、私には血の近い親戚はいないんだった。父は一人息子で、祖父母はずっと前に亡くなっているって言ってたし。じゃあ、やっぱり父の隠し子……?
「大丈夫ですよ。お嬢様。閣下の子は、お嬢様だけです」
ルカはいつものように「大丈夫」と言ってくれるけど、小説を知っている私には、全然大丈夫だと思えなかった。
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