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【第一鐘〜夜の少年と真白き少女〜】
15 空の精霊
しおりを挟む突如開けた視界にトゥリアは目を瞠る。
頭上からの光を遮っていた木々は、トゥリアがいるその場所に枝葉を広げたものを最後に、眼前には開けた空間が広がっていた。
けれど、トゥリアは直ぐに森を抜けたと言う自身の呟きが、間違っているのだと気が付いてしまう。
開けた筈の視界の向こう側には、何もない地平ではなく、幾本も生えた木々が再び連なり、生み出された影が更に深く横たわっている光景を見る事が出来てしまったからだ。
そんな景色に、落胆する気持ちがなかった訳ではないが、ここはまだ、広大なイージスの森の一角に過ぎないのだと、トゥリアはただ淡々と受け止めていた。
一歩、二歩と歩みを進めると、頭上を覆う蓋のような枝葉がなくなった事で、遥か彼方の空にまで開けた視界と、夜の澄んだ闇を臨む事が出来た。
遠くにあるのは、細く、弓形の形を描く下弦の月。トゥリアの視界の端から端迄に続く、丈の短い下草の生えた、なだらかな傾斜面には、その月から淡くも冴え冴えとした金色の光が降り注いでいた。
そしてトゥリアは、開けた視界の中央、そのただ一点を見詰めたまま、瞬きすらも忘れてしまったかのように、硬直する。
「どうして・・・」
トゥリアは掠れた声で呟いた。
そこにあったのは、受ける月の光を透過し、透き通った青い光を湛えて輝く水晶のような柱状の“なにか”だった。
柱が帯びる、どこまでも透明な青い光。
深沈とした水面の如き硬質的なその光は、仄かな輝きを長く宿して纏い、そして、滲むように分かたれ、夜空の暗闇へと蛍火のように舞い上がり消えて行く。
どうして、と。その後にどんな言葉を続けるつもりだったのか、トゥリア自身にも分かってはいなかった。
この幻想的で、神秘的な光景を、ただ、綺麗だと受け止め、見とれている。トゥリアに起きているのは、そう言った硬直ではなかった。
トゥリアは見入るその光景へとただ息を呑み、それ以上の言葉を続ける事が出来ないでいたのだ。
その青い結晶体の中には、一人の少女がいた。
ぺたりと足を崩して座り込んでいる女の子の姿。
水晶のような結晶体の内側と言うあり得ない場所で、少女は微かに後方へと反らす首に、仰ぐようにして夜の空を見詰めている。
青い色を持つ結晶体の中、一際トゥリアの目を引いたのは、彼女の癖のない白銀の髪だった。座り込む姿勢に、薄手の白い衣を纏う華奢な身体を、繊細で流麗な流れに白銀の髪が縁取り、その流れは地面にまで達しながらも、照らす月の微かな光と相まって、女性の存在そのものが淡い光を帯びているかのように錯覚させる。
そんな彼女の年の頃は二十代の半ばぐらいだろうか。少女と表現するには些か育ち過ぎているのかもしれないが、長い前髪の奥で、何処か眠たげで、気だるげな眼差しの中に窺い見る事の出来る思考の曖昧さは、大人の女性と言うよりも、寝起きの幼児のそれを思わせ、トゥリアに少女と言う表現を違和感なく想起させていた。
淡く幻想的な光を纏う、現実から乖離させられているかのようなその存在感。
無意識の内にトゥリアは彼女に向けての足を踏み出していた。
踏み入る草地は、青々とした様相に反してカサリと乾いた音を鳴らし、そして、その一歩分の距離をトゥリアは水晶の方へと近付いた。
トゥリアの見詰め続ける彼女の存在に、だが彼女の方は、空を仰ぎ見たまま、近付こうとするトゥリアの存在に、全く反応を示す事がない。
更に歩みを進める。そんなトゥリアの動きに関係はあったのか、それともただの偶然だったのだろうか、彼女は微かに身じろぎ、けれどやはりそれだけだった。
彼女がトゥリアを見る事はなく、けれど、彼女の微かな動きは、白銀の髪を数本流れの中に動かし、繊細な光を瞬かせた。
彼女が見詰める彼方の空。
白銀の前髪が、先程の彼女の僅かな動きに光を弾いて流れ、顕わとなるのは、色素の薄い藍色の双方だった。
瞳は、仰ぐ空の闇だけを映し、硬質的な光を反射する宝石のように、ただ美しかった。
そう、宝石のような瞳だとトゥリアは思ったのだ。
寝起きの曖昧さ、けれど、トゥリアの見詰める彼女の横顔に、空を仰ぐその瞳は宝石のように美しく、なのに、そこには宿る筈の意思や思考の輝きといったものを感じさせる事がない。ただ受ける光に輝くのみの、綺麗で無機質な双方が空の闇を映しているだけだったのだ。
絹糸の光沢を帯びた薄い生地の服から、彼女の抜けるような白い肌の四肢が伸びる。
そこにいると言う、ただそれだけの事、けれど、そこには、考え尽くされたかのような精緻な存在の美しさがあった。
どんな言葉でも到底言い表す事の出来ない程の玲瓏たる存在感に、彼女の存在を内に内包する結晶体から舞い上がる仄かな光。この場所は、彼女一人きりの為に整えられたかのようだとすらトゥリアには思えていた。
「・・・君は、そこにいる?」
透明な壁面に隔てられながらも、中に座り込んでいる彼女の存在にまで三歩程の距離を残す位置にまで近付いていた。
そうして、僅かに見下ろすようにして、トゥリアの口から自然と零れ出ていた台詞は、相手の存在をただ確かめようとする言葉だった。
「ここに、いる・・・?」
問う言葉を重ね、けれど、トゥリアの声に、やはり彼女からの反応は返らない。彼女はトゥリアの方を見る事もなく、その双方は見上げる彼方に、夜空の透明な闇だけを映していた。
「・・・・・・」
もう何かを言う事は出来ず、続けようと思う言葉もなく、トゥリアはただ残りの距離を近付いて行く。
彼女との距離は、どちらかが手を伸ばせば互いが触れ合える距離。
トゥリアがゆっくりと持ち上げ伸ばす手。その指先が、彼女の存在をトゥリアから隔てている青い水晶面へと触れかけ・・・
ーカサッー
それは間近で踏み切られる、強くも軽い足音だった。
突然の第三者の存在感に、びくりとトゥリアは身体を硬直させる。
直後、トゥリアは強張る自身の身体に、衝撃を受けた。
いつの間に側へと来ていたのか、今の今までその存在を忘れていた黒い子犬の、それは渾身の力での体当たりだった。
駆ける力を助走に、けれどトゥリアにとっては攻撃とも呼べない軽い衝撃は、横からトゥリアの胴へと衝突して来たのだ。
「なっ!」
威力はたいした事がなくても、突然の衝撃に対し、トゥリアは驚きの声を上げる。
結晶面へと触れようと伸ばした手の動きが、受けた衝撃にブレ、けれどタイミング的に、その行動そのものを阻む事こそが子犬の目的であったかのようにトゥリアには思えた。
そして、トゥリアがそう思った時には、既に、子犬の行動は手遅れになっていた。
黒い子犬の全力での体当たりを受け、トゥリアの動きは妨げられ、指先はぶれた。けれど、それでも結果は変わらず、触れたと感じた水晶の壁面に、その刹那、反発するかのような凄まじい衝撃が、トゥリアの指先どころでは済まないその全身を襲ったのだ。
声を出す事も出来ず、その衝撃は一瞬にしてトゥリアの意識の全てを散り散りに白く染める。そして、その瞬間、トゥリアは絶対的な拒絶を理解させられた。
「・・・・・・っ、うぁ、わ・・・え?」
呻いて開く目に、トゥリアは戸惑いと疑問の声を繋げていた。
「なんで・・・」
自身の声でトゥリアが目を覚ましたその場所は、暗い森の中のようだった。
「なに、が・・・」
呆然と声を上げ、上半身を起こすと、それから更に首を傾げる。
霧が満ちている訳でも、青い闇が横たわっている訳でもない、暗闇に沈んだ夜の森に、星のない夜空には、先程よりも更に細く研ぎ澄まされた月が冴え冴えとした光を放ってそこに在った。
目の前へと持ち上げた手をゆっくりと握り、開く。
その感触の確かさにトゥリアは立ち上がると、迷いなく木々の間に踏み入り森を進み始めた。
自分の行動に確信はない。その筈なのに、何処かで感じているものがあって、トゥリアは黒い子犬を追い掛けた道を今度は一人で進み始める。
出来る限りの早足で、そうして進み続けた先に、見覚えのある根本から枝分かれした木を見付け、その横をすり抜ける。
そして、再び視界は唐突に開けた。
目にする光景に、ようやくトゥリアは先を急ごうとする足を止める。
木々の連なりは途切れ、遮るもののないない空の高い位置に、冴え冴えとした光を放つ糸のように細くなった月が輝く。
受ける光の反射と透過に、薄い青色の結晶体は輝き、彼女は、変わる事なくその内側に座り込んでいた。
水晶のような透明な結晶の中に、囲い囚われているかのように、彼女はそこにい続けている。
「・・・やあ」
歩み寄り、三本程の距離を残してその動きを止めると、トゥリアははにかむように微笑み、そう声をかけた。
彼女にトゥリアの声が届いているのかどうかは分からなかった。ただ、その姿が視界には入っていると思うのに、変わる事なく空を仰ぐ彼女にはやはり何の反応もない。
けれど、水晶の直ぐそばで丸くなり、伏せていた小さな黒い塊の方には、トゥリアの声に反応してもぞもぞと身じぐ動きがあった。
ぴょこんと、そんな擬音でも聞こえてきそうな耳の動き。跳ねるようにもたげられた頭に、開かれた青い双方がトゥリアを認識する。
目を瞠ると表現したくなる様に丸くなる双方が、トゥリアの姿を確認した時、子犬は文字通り跳ね起き、そのまままっしぐらにトゥリアの方へと駆けて来た。
ーク、クークークゥ!!ー
「えっと、あ、ちょっと」
喉に鳴く黒い子犬の小さな鳴き声に、ちぎれんばかりに振られているふさふさ毛並みの尻尾。
何事なのかと、意味の分からないトゥリアは戸惑いの声を上げてしまう。
黒い子犬は跳ねるようにしてトゥリアの足にじゃれつき、恐らくは喜びにだろう、振り続ける尻尾の動きと共に忙しなく駆け回っている。
出会った時に、無感動だと感じた瞳に踊る嬉々とした輝き。どうやらトゥリアの存在は黒い子犬にとても歓迎されているらしく、だがトゥリアには何故自分がそこまでこの子犬に歓待されているのかかが分からなかった。
「“それ”は白きあの人の結界だから」
「え?」
「その子等がその水晶みたいなものに触れてしまうと、それだけで存在は消し飛ばされて、消えてしまう」
「消える・・・?」
「そう、けれど君は大丈夫だったらしい。だからその子も嬉しいのだろうね」
突然かけられた声。
その声は男性にしては高く、女性にしては低い、けれど耳に心地好く響く、涼やかな声音だった。
そんな会話をしながら声の方を振り向くトゥリアが見たのは、白を基調としたフード付きの長衣のような装束を身に纏う一人の人物の姿。
トゥリアとは違う位置から森を抜けて来たかのように、暗い森の木々を背景に佇み、けれどその飾り気のない長衣には、トゥリアとは異なり、夜の森を抜けて来たという、乱れや汚れ等の一切の痕跡が見られなかった。
不思議な出で立ちの人物だった。縫い目の分からない不思議な衣は、織り上がったばかりのような滑らかな絹糸光沢に輝き、その人物は長身の身体にゆったりと巻き付けるようにしてその長衣を纏っている。
そして、声や体型もそうだが、見詰めるトゥリアがその人物を“彼”とも“彼女”とも判断出来ない理由が、その人物が目深に被ったフードが、顔の鼻先までを隠している為だろう。
フードの生地は、長衣の部分とは異なり、光を通す程の薄さを保っているように見えるのに、その奥にある筈の顔をトゥリアからは垣間見せる事がないのだ。
見ていて、やはりトゥリアには分かりそうにない相手の顔。
その誰かはそのままの立ち位置に佇み、フードの向こうからトゥリアの方を見ているようだった。
「白きあの人、これが結界?・・・えっと、こんばんは」
「ああ、こんばんは」
口にした疑問に、トゥリアは一瞬迷ったが、まずは浮かべる穏やかな笑顔で挨拶をした。
自分の思考の流れと経過。疑問は勿論あり、驚きもあったが、綯い交ぜのまま相手へと質問をぶつけるよりと、トゥリアが口にしたのは、そんな何気ない挨拶の言葉だった。
いや、実のところ、それがトゥリアのスタイルだったのだ。分からない時、困った時こそ、まずは笑って見せると言う姿勢。
相手に不快感や余計な警戒心を与えないように、取り敢えずお前は笑っとけと言うライの教えを、律儀に守り続けている、その結果でもあった。
実際に、トゥリア生来の気質もあり、その笑顔は良い方向に話しを持って行ってくれる事が多かった。
そして、それは、この人物にも有効に作用してくれたらしい。
細い腕にしなやかな指。日に焼けた事等一度もないとすら思わせる程の白い肌は女性的で、優雅な仕種で口もとに運ぶその手の向こうには軽い微笑みが浮かんでいた。
そうして聞き取る事の出来た、微かな笑い声に、白いローブとフードの人物もまた、トゥリアへと習い挨拶を返して来てくれたのだ。
「君は、一人でこの森を抜けて来たんだ」
長衣の人物が喋る声音の余韻は、耳朶へと染み入る程に透き通り、ただただ柔らかい。
発せられた言葉はトゥリアへと確認に問うのものではないようで、森へと顔を向け喋る様子は、何かを確かめようとしているかのようだと思った。
口もとから唇の下辺りへと添えるようにしていた手を降ろし、何事かを考えているかのように、そんな所作の一つ一つにすら見る者を引き付ける、優雅さと典雅さを感じさせる。
人間なのだとは思う。確信は持てず、長衣で覆われた身体や今いる場所に現在の状況、何よりもその存在感と言ったものは、寧ろ本当に人間なのだろうかと思わせるものがある筈なのだが、トゥリアはそれでも長衣の人物は人間なのだと思った。
「あなたは・・・いえ、消えてしまうって、だからこの子は、止めようとしてくれたんですね」
やはりという思いに、トゥリアは足もとでゆっくりと尾を左右に動かしている黒い子犬を見下ろした。
水晶の如き障壁へとトゥリアが触れようと手を伸ばした時に黒い子犬はトゥリアへと飛び掛かって来た。
何事かと思ったが、そう言う事だったのだ。
結局間に合わず、トゥリアは障壁に触れてしまい吹っ飛ばされてしまったのだが、こうして無事だったのだから素直に良かったと思う。
「ありがとう」
ークゥ、クゥ、クゥ?ー
しゃがみ込み笑顔で差し出す手に、トゥリアはお礼を告げる。
黒い子犬はその手を一舐めすると、そのまま顔を擦り付けるようにして懐いて来た。
「その子は魔物だけど“君と同じ”もの。そして、その子は他の同胞が消えてしまうのを幾度も見ているから」
「僕と同じ・・・?」
「本当は無駄なのだと知っているのに、けれどその子は、この場所を離れる事が出来なかった」
「触れれば消えてしまうって、こんな場所に閉じ込められている、この子はなんなのですか?」
佇む白い長衣の人物から移した視線にトゥリアの見詰める先。
青い水晶の中で、変わる事なくただ空を仰ぎ見ている真っ白な彼女の姿。
黒い子犬もまた、トゥリアから離れると水晶の障壁のぎりぎりのところで座り込み、水晶が帯びる薄い青色の光の中で、トゥリアと同じように彼女の姿を見ていた。
「閉じ込められて、か。この子は精霊だよ。空虚なる精霊、スフィル」
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