空白の叙事録〜誰が忘れた罪禍の記憶〜

羽月明香

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【第一鐘〜夜の少年と真白き少女〜】

20 約束

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 暖かい羽毛の感触に、トゥリアは顔を埋め、フィンから見えないようにしたところで、一度は止まっていた筈の涙が溢れて来るのを堪えるのが出来なくなった。

「・・・っ、う」

 声だけでも抑えようとして、どうしても堪えきれなかった嗚咽が喉の奥から競り上がってくる。
 柔らかな羽毛は暖かく、その心地よさに縋るようにして、トゥリアはしばらく、行き場のない感情のままに泣き続けていた。



「夜が、明ける・・・」

 どれだけの間、トゥリアはそうしていたのか。泣くだけ泣いて、嗚咽に喉がひりつく感覚を思い出しかけた頃、フィンの呟くそんな声を聞いてトゥリアはようやく顔を上げた。

ークックッー
「あ」
ーフィーュー

 喉の奥で短く鳴き、翼を大きく羽ばたかせる動きにトゥリアが驚いて、セフィの身体を挟み持つ力を緩めた瞬間、セフィは半ば落下するかのように逃れ、トゥリアの腕から飛び立っていた。

 高い鳴き声の余韻を引っ張りながら木々の間を抜け、早々に見えなくなってしまった姿に、セフィがどれだけの間トゥリアを慰める役を果たしてくれていたのかは分からないが、さすがに縫いぐるみ扱いは駄目だったかもしれないと、申し訳なさと幾ら手渡されたからとはいえ、縋って泣いてしまった為の気恥ずかしさがない交ぜとなった感情が押し寄せて来る。
 ごまかすように涙のあとを手の甲で乱暴に拭うと、トゥリアはセフィが飛んで行ってしまった方へと走り出していた。
 セフィが消えた木々の間を抜け、まだ薄暗い森の中を行く。そうしてトゥリアは何処か見覚えのある、根もとから二股に枝分かれした、“大樹”の横を通り過ぎた。

「・・・っ」

 刹那、瞳へと飛び込んで来た光に小さく呻きながらもトゥリアは目を細める。
 光の中に佇むフィンの後ろ姿。何時の間に移動していたのか、フィンはトゥリアの意識の隙間をついて行動するのが異様に上手い様に思う。もしくは、トゥリアが鈍いだけかなのだが、その可能性はあまり考えたくないとトゥリアは思っていた。

「湖・・・」

 明るさに目が慣れて来ると、佇むフィンのその向こうに広がる凪いだ水面みなもを見る事が出来た。
 澄み渡った水に凪いだ水面は、射し込む日の光を反射する水鏡のようで、まだ夜闇の残滓を残した森の中で、この場所だけは一足先に周囲が明るく照らし出されている。

「精霊祭の月が出ていたから、そんなに暗くはなかったけれど、本当の夜明けの明るさは、なにかほっとするよね」

 佇むフィンが見ているものが気になり、その横に並ぶようにして歩み寄ると、トゥリアはひとまずそう話し掛けた。
 謝るのは違うような気がして、けれど何を言うべきか、未だに整理がついていないのに話しかけてしまっていたのだ。

 トゥリアの眺め見るフィンが佇む光景。そこにいるのは紛れもなくフィンであり、スフィルの面影を感じてしまっても、違う存在だと意識せずにはいられなくなる。

「精霊祭の、月・・・?」

 考えないようにして、トゥリアは逸らした意識の先で違和感にぶつかった。
 瞬きを忘れ、動きの一切を止めたトゥリアは感じた違和感の正体を辿り、湖の反射する青銀色の光を見るともなしに眺めている

(光の青い色・・・僕は、暗い森を走ってスフィルに会いに行って・・・だから、空に月はなかった?)

 厳密に言えば全くなかった訳ではなかったが、かなり細くなっていた月の形状を覚えている。
 けれど、セフィに縋り、泣き崩れる前のトゥリアは、青い閃光を宿した真円に近しい月を確かに見ていた。


ーたった三夜の邂逅で・・・ー

 そうカイは言っていたのではなかったか。
 記憶の中ををたゆたう言葉を拾い上げ、今の今まで考えてこなかった事にトゥリアは意識を向けて行こうとするが、その瞬間にトゥリアは唇を引き結び、一瞬だけだが表情を引きつらせてしまった。
 それは、スフィルが消えてしまった、あの時の情景に直結する記憶で、思い出そうとすると、思考が熱を帯びて視界が白く染まるかのような感覚が、トゥリアの記憶に暗いノイズを走らせるのだ。

 それでも、ちゃんと泣くだけ泣いた為か、表面上だけを取り繕いながらもトゥリアはどうにか自分の記憶を辿る事が出来た。

 青い下弦の月のもとで黒い子犬を追いかけた。
 猫の爪のように、弧を描く針のように、細くなっていた月の形。
 そして、スフィルが消えてしまった夜闇の空に月は・・・なかった。
 あの瞬間の新月。そして、翔ぶセフィの向こう、中天の空に輝いた天満月あまみつつきの煌々とした輝き。

 鈍い頭痛と、喉の奥からせり上がってくるかのような吐き気を堪えながらもトゥリアは思い出し続けた。

「あれが、・・・夢?」

 分からなくて、一番安易で短絡的な可能性を口に出してみる。
 その呟きは、せっかく取り繕い、フィンに不調を気付かれないようにしていたトゥリアの方へとフィンの眼差しを向けさせてしまった。
 湖からトゥリアへと視線は向けられ、薄い藍色の双方がトゥリアの様子を眺め見る。

「僕が、フィンと出あってから、何日たっている?」

 それは、あの水晶の結界障壁に触れ、気絶する度に丸一日以上の時間が経過していたということではないだろうかと、トゥリアが思い至ってしまったが為の問いかけだった。

「・・・・・・」

 そしてフィンが何かを言いかけて口を開こうとする一瞬の逡巡。
 言うべきかの躊躇か、それとも問いの形を決め兼ねた思考の様子なのか、トゥリアはフィンの言葉をただ待った。

「トゥリアはセイリオスに会ったの?」
「セイ、リオス?」

 トゥリアの質問に対する答えではなく、別の異なる質問がトゥリアへと向けられて来た。
 会ったと言うからにはそれは人の名前だと思うのだが、トゥリアにはその名前に聞き覚えがなかった。聞き覚えがない。その筈で、なのにトゥリアは自分に問いかけている。本当に?と。

「セイリオス、輝ける精霊」
「精霊」
「ん、終わりの闇に閉ざされた世界に、ひとり遺された輝きの子の名前、セイリオス」
「終わりの闇・・・。自分の内から出して、空っぽ・・・スフィル」

 フィンの端的な言葉に、トゥリアはカイの言葉との符号を思った。

「スフィル?スフィルは、無の表現。在った何かが、無くなってしまった状態で、それは、名前?」
「え?」

 尋ねられて、虚を突かれたかのようにトゥリアは目を瞬かせる。
 あの子をスフィルだと言ったのはカイだ。そして、カイは名付けたのも自分だと言っていたのではなかったか。

「セイ、リ・・・ス。あの時、そう、あの時、セイリオスとあの子は名乗っていて、だからスフィルは違う?」
「セイリオス、ずっとずっと前に精霊をやめてしまった精霊だって」
「・・・え?」

 酷い頭痛の中で混乱する思考。そんなトゥリアへと追い討ちをかけるつもりがある訳ではないのだろうが、フィンは予想外の言葉を呟いていた。

「精霊を、やめる?」

 どうにか呟くが、そんな事が出来るのだろうかとトゥリアは思う。

 トゥリアの脳裏を、記憶の断片が巡る。耳の中を聞いた言葉の断片が反響するかのように、遠く近くと、ない交ぜの音が言葉として繰り返される。

ー精霊であることをやめてー
ーそれは消えてしまうと言うことで・・・ー
ー探してあげるといい?想うこころのためにー
ー覚えていて、・・・選んだー
 

 言葉と想いの残骸が響きとなって散らばる意識。トゥリアは無意識にフィンを見詰めていた。
 流れる白金の髪は星々の硬質的な光を紡いで、丁寧に櫛を通したかのように。
 濡れたような白い肌、凪いだ湖面に映り込んだ夜明けの光を思わせる薄い藍色の瞳。
 スフィルよりもその髪色は柔らかく、瞳の色は薄い。
 そして、スフィルよりも、四、五歳は幼いであろう外見。
 それでも、とトゥリアは思った。いや、気付いたと言うべきなのだろうか。

 見詰めて、そうしてトゥリアはフィンへと笑いかけた。少しだけ泣きそうな、それでも、紛れもない心からの微笑みをフィンへと向けたのだ。 

「ちがっているのかもしれないし、そんな都合がいいことがあるわけないっていうのもわかってる」
「うん?」
「でも、僕は、そうだって信じたいんだと思う」
「そう、なの?」

 フィンはよく分かっていないのであろう相槌を打ちながらも首を傾げる。
 それはそうだろうとトゥリアにも分かっている。分かっているのだが、トゥリアはちゃんとした説明よりも、勢いに任せる様に言葉を続ける。

「僕らは、冒険者アースウォーカとしての依頼のために、このイージスの森に入ったんだ」
「僕等、うん、ライ?」

 突然何を言い出したのかと思われてもおかしくないのだが、その辺りには触れず、フィンはトゥリアの意識していなかった言葉を拾い上げ、問いとして返して来た。
 トゥリアが瞬かせる双眸。あまりにも自然に“僕ら”と言う言葉を使用していたが、今ここに、トゥリアの旅の相方であるライの存在はないのだと思い出す。

「あ、うん。迷子・・・ライっていう仲間とね。一緒に旅をしてきたんだ。ずっと」
「ずっと?ライがいて、トゥリアは楽しい?」
「うん。楽しいよ」

 迷子とフィンに評された現状を思いトゥリアは微苦笑するが、同時に思い出すライとの今までに、トゥリアの浮かべる微妙な笑みは自然と楽しげな笑顔へ様相を変えて行く。

 ライとの旅は、それはもう本当に楽しい等とは言ってられない程に色々とあり過ぎるのだが、それでもやはり楽しいと感じている自分がいるのだ。そして、そんな感情はフィンにも伝わるらしい。
 不思議そうなフィンの表情の僅かな動き、そして、更に微かだが、確かにそうだと思える微笑みがその口もとに浮かぶ。
 トゥリアはその変化を見ていた。
 見取れて、見入ってしまうフィンの笑みに、トゥリアは一瞬、時の流れを忘れる。

 フィンは綺麗だとトゥリアは思っていた。それは、街中で可愛い女の子を見付け目で追ってしまうのとは違う。朝露に射す光の煌めき、水底に揺れる輝く小石の色。そういった自然の中にある一瞬の美に目を奪われる。そんな感覚に似ていた。
 トゥリアはフィンの凪いだ水面の色を湛えた藍色の瞳を見詰め、そして思う。この子はやはり違うのだと。
 スフィルを想い、彼女から見る事の出来なかった微笑みをフィンが浮かべた事に、哀しくも愛おしい思いが込み上げて来る。

 だからとトゥリアは思い、思い気が付いた時には、トゥリアは動いていた。
 フィンを正面に見詰め、自身の右手を差し出す。
 そして想いのままその告げるのだ。

「だから、フィンもいっしょにいこう」

 消えてしまったスフィルの代わりではないと言いきれない。けれど、フィンが一人だと知った時に考えていた事なのも確かだった。
 だから、その言葉はトゥリアの口から自然と発せられたものだった。
 それは自分達と一緒に旅をしないか?というフィンへの誘いの言葉。

 差し出した右手に、トゥリアは笑顔を向けたままフィンの反応を待つ。

「一緒に、行こう・・・?」

 耳にした言葉を、そのまま反芻するかのようにフィンは呟く。
 それは決して、何故私が一緒に行かなければならないのかというような、拒絶の意味合いを帯びた疑問形の響きをではなかった。
 ただ聞いた言葉を繰り返す、その為だけの言葉でしかない。それだけ。

「・・・・・・」

 トゥリアの差し出した右手を、フィンはただ見詰めている。

「・・・・・・」

 何かを言う事もなく、ただ目の前の光景を眺め見て、映しているかのような瞳だとトゥリアは思った。

「・・・・・・」

 沈黙は変わらない。待ち続けるトゥリアが見詰めるフィンの瞳は硬質的な光を湛え、本当に綺麗だった。
 けれど、その様子からは、どんな思考の経緯すらもトゥリアには読み取る事が出来ない。
 口にはしないだけで、実は手を取らない事、その行動自体がフィンの拒絶の意志表明なのかもしれないと思い至ったのは、持ち上げたままの腕が、疲労を訴え、痺れ始めた頃だった。

(先走りすぎたってことかな)

 確かに考えてみれば、いや、それ以前にもっと常識的なところで、誰が良く知りもしない、それどころかほぼほぼ初対面でしかない人間に、一緒に旅をしないかと誘われ、すんなりその手を取るのだろうか。
 ようやくトゥリアはそんなまともな考えに行き着き、差し出した手はそのままだが、笑顔を凍らせ硬直する。

(14、5歳?16ってことたぶんなさそうだけれど、フィンって何歳ぐらいなのかな)

 考えて、自身の行動に対する逃避の意味合いすらも込めて、まじまじとフィンの顔を見てしまった。
 フィンの感情の起伏に乏しく、今は無表情に近い表情が、見たままの年齢を分かり辛くしている。
 無垢を思わせながら、達観しているかのような彼方の光を秘めた瞳の奥底。けれど、トゥリアはフィンの年齢に対する自分の考えを大きく外しているとは思わなかった。
 フィンは今現在どころか、それなりの時間を一人で過ごして来たようだったが、あの小屋には、トゥリアの休ませてもらった部屋や使用したカップ等、僅かに“誰か”の存在の痕跡があった。

 先程までとは違った意味合いにまじまじと見てしまうフィンの顔。
 ここはあらゆる魔法の効果を無効化ディスペルし、魔法を発動不能キャンセルにするイージスの森。
 フィンは魔法のような力を使っていたが、それでも、十代の、それも女の子が一人で安易に来られるような場所ではないのだ。
 通常の森と同じように、多種多様な魔獣や怪鳥の類が棲息し、その中には勿論、人間を餌にする種も存在している。多少戦える程度ではどうにもならないのが現実なのだ。
 今のフィンは空色のチュニックと、若草色のキュロットスカートといった出で立ちの上に、裾が膝竹程のベージュ色のローブコートを羽織っている。
 そして、腰のベルト状の編み紐には、瑠璃色の紐と銀色の鎖で固定し吊された鞘があり、その鞘には細身の剣が収められているのをトゥリアは見ていた。
 一応武器は携帯しているようだが、フィンが単独で棲息する獣達と戦って行くには、かなり心許ない装備だと思わざるを得なかった。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

 黙り込んでしまっているトゥリアの様子を気にした風もなく、フィンもまたトゥリアの差し出した手を見詰めたままの沈黙を続けていた。
 沈黙の理由は分からない。それでも、見ているフィンの眼差しに、トゥリアはふと思う事があった。

 僅かに傾げられた小首の様子は、拒絶と言うより、困惑ではないのだろうかと。
 何に対する困惑なのかまでは分からないが、一緒に行って欲しいと、手を差し出していると言うトゥリアの行動自体が、フィンを困らせている訳ではないのかもしれないと、そう思い付く。

「・・・い?」
「え?」

 不意にフィンは自分の手を見下ろすと、傾げたままの小首に何事かを呟いた。
 その言葉を聞き取る事が出来なかったトゥリアは反射的に疑問の声を上げていたが、トゥリアの手を眺め見ていた時と同じ、変化の乏しい無表情に近い表情から、その先の反応が、トゥリア分かる程に表れてくれる事は、なかなかに難しいようだった。
 フィンは見詰める自身の手に、首を傾げたまま何事かを考えているようで、形の良い眉がほんの僅かにひそめられている。
 不快感にではなく、懐疑にでもなく、そこにあるのは純粋な疑問だろうか。

 そして、その様子をじっと見ていたトゥリアは、不意にだが気付く。その事にまさかとは思わず、ただ得心する自分がいた。
 トゥリアがやや視線を下げて見下ろす、自分が差し出したままにしている右手。そのまま視線を動かして見るフィンの見ている、フィン自身の右手。

「この手はさ・・・」
「ん・・・」

 トゥリアは微笑む。
 そうして、おもむろにフィンへと向け一歩を踏み出し、トゥリアはフィンとの間にあった距離を詰めると、自身の差し出したままの右手はそのまま、もう片方の手で取るフィンの右手を、軽く自身の右手へと重ねて握らせる。

 それは約束の形だった。
 フィンに抵抗はなく、トゥリアにされるがまま。そして、触れ合う手にトゥリアは微かな暖かさを感じていた。

 トゥリアは正解を信じる。
 軽く力を込めて握ったフィンの手に、トゥリアは自分の方を見ている薄い藍色の双方へ、ただ微笑んだ。

「この手はこうするもの、これで約束の成立」
「・・・約束」

 呟きは小さく、“約束”と紡がれた言葉にフィンは今、何を思っているのだろうか。
 差し出された手の意味が分からず、恐らくはその手の意味も知らず、それでも微かな力の加わりに、トゥリアの手は握り返される。
 それを承諾の意思だと受け取るのは、トゥリアの希望的な思いだろうか。
 フィンの凪いだ湖面のように澄んだ瞳が湛える薄い藍色。映り込むトゥリア自身の深青の双方の色彩と色合いは重なり合い、トゥリアは見詰めたままの瞳に言葉を続ける。

「行こう、一緒に」
「行くこと、それが約束・・・?うん」
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