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第五章 覚醒
第七十六話 皆の者、戦いに備えよ!
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それから時は少し進み、夜となった。
アミアンの街の灯が途絶えることは無い。
だが、バイセン邸はそれらとは打って変わり、明かりが1つの部屋に、ポツンとともっているだけだった・・・
「皆、集まったな。これより、作戦の最終決定を行う」
ラジは厳かな態度で、そう言った。
レイドたちに加えて、アミアンの有力な戦士たちも交えての大規模な会議だ。
「・・・まずは、我らアミアンの戦士たちの今後の予定を伝えていこうと思う」
「では、ここからは儂が話さしてもらおう」
アミアンの戦士群から、一人初老の男が手を挙げた。
静かに、厳かに壁に貼られた地図へと向かう。
「魔獣の攻撃は、明日に始まると見ている。恐らく、北西部からくるじゃろうな」
「質問だ。なぜ北西部から来ると分かるんだ?」
レイドはそう質問した。
――確か、前の戦いの時も、北西部だったはずだ。
「まあ、偵察隊がそう言っているのもあるのじゃが・・・ そっちには、例の遺跡がある方角なんじゃよ・・・」
「なっ・・・! 奴らは、あの遺跡を根城にしているのか!?」
「落ち着け、まだ決まったわけでは無い。誰も確認に行けないような状況だ」
ラジがそうなだめる。そして・・・
「ここからは私が説明するわ」
「・・・エマ!」
「レイド・・・ 今は再会を喜んでいる場合じゃないわ。早速説明していくわね」
「・・・ああ」
「よし。まず、私の”前世”の記憶だと・・・ その遺跡が根城になっていることは十分に考えれるわ。だって、本来は敵の本拠地なんだから」
「・・・なんですって! それは流石に・・・!」
「落ち着いて、エレーヌ。話はここからよ」
「今は黙って話を聞こう? 文句はそれからだよ~」
「ぅ・・・ 分かり、まし、た・・・」
エレーヌの反応は当然だ。レシティアもそれを聞いて戦々恐々としている。
平気そうなのは、ロイクと、ロベルトぐらいだ。
「ただし本来の歴史より、今回は半年も速いわ。まだ占領される前かもしれない。今が絶好のチャンスよ!」
「・・・反対です。こっちの身にもなってくださいよ! 地の利も無いのにどうやって! ずっと耐えれば・・・」
「でもね、”本来”の歴史では、既にバイセン領なんて滅んでるわ。もちろん、貴方も・・・」
「・・・っ!」
(エマの言っていることは正しい。だからこそ、理不尽だ・・・)
――レイドはそう険しい顔をして思う。
「そういうことだ、エレーヌ。これしか手は無いんだ」
ラジが無機質に、そう、それだけ伝える。
「・・・貴方、やっぱり止めた方が良いんじゃない? 娘を戦場になんて送りたくないわ!」
ソニアも見かねて口をはさんできた。
いつもニコニコとしている人だ、今はとても悲痛で叫びそうな顔をしている。
「これは・・・ 決定だ」
「嫌よ! 嫌よ! 私たちが死ぬべきなのよ!」
「・・・まだ死ぬとは分かっていない」
「けどっ! そんなの死にに行けと言っているようなものじゃない!」
「・・・っている」
「何!?」
「そんなのとうに分かっているっ!!!!」
「・・・っ」
「誰が好き好んで娘を死地に行かせるものか! だが適任はエレーヌと、レイドしかいない。私たちは領地の防衛で手一杯!」
「・・・・・・」
「逆に・・・ どうすれば、良いんだよ・・・」
――ラジの頬には、涙が流れたであろう痕が沢山あることに気が付いた。
心を殺して娘を戦場に送る決心は、並大抵のものではない・・・
「なあ、今の時間は、互いに弱音を吐き合う時間なのか? 違うだろ、どう勝つかって事じゃあねえのか!」
「・・・カイン」
「そんなこと考えてたら、死んでしまうのもうなづけるぜ。なあ、ラジさんよぉ!」
「カインの言う通りだよ~ だから、ここに共に戦う仲間がそろっているんだ。僕が可愛い妹を死なせるわけがないじゃないか」
「ラジさん、一つ言いたいことがあります」
「・・・・・・なんだ」
「俺は、今まで何度も死に直面してきました。けれど、俺はまだ、死んでいない」
「・・・」
「俺は、仲間に、そのたびに命を救われた。だから、俺も! もう!」
「決して仲間を死なせたりは、しない・・・!」
「レイド・・・」
「だから、ラジさん、信じてください。俺は、必ず生きて帰ってきます!」
ラジは静かに座っていた椅子から立ち上がった。
そして、背負っている戦斧を取り出し、掲げる。
「明日の戦い、必ず勝利し、遺跡へと反撃するのだ! 我らはアミアンの勇敢なる戦士! 決して敗北は許されないぞ!」
「「「おう!!!」」」
「大丈夫だ、エレーヌ。決して、死なせたりはしない」
「・・・はい。貴方こそ、また死にかけないでくださいよ?」
「・・・善処する」
皆の思いがこれで、1つになった。
「おっしゃあ! やってやるぜ!」
「声だけ出しても戦いには勝てないわよ? カイン?」
「うるせえ黙ってろ! レシティア!」
「・・・ロベルト、ちょっといいかな~?」
「なんだ? 俺はあのノリには付き合えんぞ?」
「そうじゃなくて・・・ ちょっと別室に移動しよう」
「? 別に構わないが・・・」
ロイクはそのままロベルトを連れ出してしまった。
何かあるのだろうか・・・
アミアンの街の灯が途絶えることは無い。
だが、バイセン邸はそれらとは打って変わり、明かりが1つの部屋に、ポツンとともっているだけだった・・・
「皆、集まったな。これより、作戦の最終決定を行う」
ラジは厳かな態度で、そう言った。
レイドたちに加えて、アミアンの有力な戦士たちも交えての大規模な会議だ。
「・・・まずは、我らアミアンの戦士たちの今後の予定を伝えていこうと思う」
「では、ここからは儂が話さしてもらおう」
アミアンの戦士群から、一人初老の男が手を挙げた。
静かに、厳かに壁に貼られた地図へと向かう。
「魔獣の攻撃は、明日に始まると見ている。恐らく、北西部からくるじゃろうな」
「質問だ。なぜ北西部から来ると分かるんだ?」
レイドはそう質問した。
――確か、前の戦いの時も、北西部だったはずだ。
「まあ、偵察隊がそう言っているのもあるのじゃが・・・ そっちには、例の遺跡がある方角なんじゃよ・・・」
「なっ・・・! 奴らは、あの遺跡を根城にしているのか!?」
「落ち着け、まだ決まったわけでは無い。誰も確認に行けないような状況だ」
ラジがそうなだめる。そして・・・
「ここからは私が説明するわ」
「・・・エマ!」
「レイド・・・ 今は再会を喜んでいる場合じゃないわ。早速説明していくわね」
「・・・ああ」
「よし。まず、私の”前世”の記憶だと・・・ その遺跡が根城になっていることは十分に考えれるわ。だって、本来は敵の本拠地なんだから」
「・・・なんですって! それは流石に・・・!」
「落ち着いて、エレーヌ。話はここからよ」
「今は黙って話を聞こう? 文句はそれからだよ~」
「ぅ・・・ 分かり、まし、た・・・」
エレーヌの反応は当然だ。レシティアもそれを聞いて戦々恐々としている。
平気そうなのは、ロイクと、ロベルトぐらいだ。
「ただし本来の歴史より、今回は半年も速いわ。まだ占領される前かもしれない。今が絶好のチャンスよ!」
「・・・反対です。こっちの身にもなってくださいよ! 地の利も無いのにどうやって! ずっと耐えれば・・・」
「でもね、”本来”の歴史では、既にバイセン領なんて滅んでるわ。もちろん、貴方も・・・」
「・・・っ!」
(エマの言っていることは正しい。だからこそ、理不尽だ・・・)
――レイドはそう険しい顔をして思う。
「そういうことだ、エレーヌ。これしか手は無いんだ」
ラジが無機質に、そう、それだけ伝える。
「・・・貴方、やっぱり止めた方が良いんじゃない? 娘を戦場になんて送りたくないわ!」
ソニアも見かねて口をはさんできた。
いつもニコニコとしている人だ、今はとても悲痛で叫びそうな顔をしている。
「これは・・・ 決定だ」
「嫌よ! 嫌よ! 私たちが死ぬべきなのよ!」
「・・・まだ死ぬとは分かっていない」
「けどっ! そんなの死にに行けと言っているようなものじゃない!」
「・・・っている」
「何!?」
「そんなのとうに分かっているっ!!!!」
「・・・っ」
「誰が好き好んで娘を死地に行かせるものか! だが適任はエレーヌと、レイドしかいない。私たちは領地の防衛で手一杯!」
「・・・・・・」
「逆に・・・ どうすれば、良いんだよ・・・」
――ラジの頬には、涙が流れたであろう痕が沢山あることに気が付いた。
心を殺して娘を戦場に送る決心は、並大抵のものではない・・・
「なあ、今の時間は、互いに弱音を吐き合う時間なのか? 違うだろ、どう勝つかって事じゃあねえのか!」
「・・・カイン」
「そんなこと考えてたら、死んでしまうのもうなづけるぜ。なあ、ラジさんよぉ!」
「カインの言う通りだよ~ だから、ここに共に戦う仲間がそろっているんだ。僕が可愛い妹を死なせるわけがないじゃないか」
「ラジさん、一つ言いたいことがあります」
「・・・・・・なんだ」
「俺は、今まで何度も死に直面してきました。けれど、俺はまだ、死んでいない」
「・・・」
「俺は、仲間に、そのたびに命を救われた。だから、俺も! もう!」
「決して仲間を死なせたりは、しない・・・!」
「レイド・・・」
「だから、ラジさん、信じてください。俺は、必ず生きて帰ってきます!」
ラジは静かに座っていた椅子から立ち上がった。
そして、背負っている戦斧を取り出し、掲げる。
「明日の戦い、必ず勝利し、遺跡へと反撃するのだ! 我らはアミアンの勇敢なる戦士! 決して敗北は許されないぞ!」
「「「おう!!!」」」
「大丈夫だ、エレーヌ。決して、死なせたりはしない」
「・・・はい。貴方こそ、また死にかけないでくださいよ?」
「・・・善処する」
皆の思いがこれで、1つになった。
「おっしゃあ! やってやるぜ!」
「声だけ出しても戦いには勝てないわよ? カイン?」
「うるせえ黙ってろ! レシティア!」
「・・・ロベルト、ちょっといいかな~?」
「なんだ? 俺はあのノリには付き合えんぞ?」
「そうじゃなくて・・・ ちょっと別室に移動しよう」
「? 別に構わないが・・・」
ロイクはそのままロベルトを連れ出してしまった。
何かあるのだろうか・・・
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