亡国の近衛騎士 ~追放された王家直属の最強護衛、幼なじみの旅商人と共に世界を回ることにする~

アイスクリーム仕立て

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第17話 レアとの戦い

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「ほう…… これが自警団の設備か」
 少し大きな部屋に、小さなテーブルやソファーなどがこまごまと並べられている。
 奥には…… 武器も見えるな。おそらく、大人数がここを使っているのだろう。

「今、団員は全員パトロール中だ。俺以外誰も居ねえから自由に使っていいぞー」
 バルフォードはめんどくさそうにそう話した。

「で、バルフォードさんは何をしているの?」
「俺? 俺はな…… 司令塔だよ。俺も忙しいんでな」
「じゃあそこにある布団は何?」

「あ、やばい! 書類の整理をしないとな! 執務室に行ってくる!」

 ――ダダダダ……
 ……行ってしまった。一瞬でボロが出る嘘なんて付くなよ。

「あの男、どうも好きになれないわ。私とは真反対って感じ」
「あはは…… ああ見えてもいい人だよ、多分」

 レアは苦笑い。まあお察しの通り、ということだろう。
 あのような様子じゃ、執務室とやらでもぐっすり寝るつもりだろうな。てか仕事しろよ!
 
 ……もうあいつのことは気にしないでおこう。

「……まあその話は置いといて、早く模擬戦をしないか?」
「あ、そうだったね。こっちにあるよ」
 
 レアはさっきの入り口とは違う方のドアを開けた。
 そして、俺たちはそのドアを通り抜ける。

「ここが訓練場だよ!」

 おぉ…… 思ったより広いな。家3から4個分の敷地の大きさの場所だ。
 リウでこんな空き地は初めて見た。

「これなら、思いきって戦えそうだな。どうだ、すぐに戦うか?」
「うん、私もいけるよ」

 レアは小さな木の杖を取り出し、俺と距離を取って構え始めた。
 どれほどの魔術師か…… 楽しみだ。

 ――魔法陣展開 発動 魔法障壁
「……! 何かした?」
「防御魔法をかけておいた。これで死ぬことはないだろう」

 俺とレアだけでなく、もちろんメルサにもな。 

「じゃあ、私は観戦しとくわね」
「ああ、カウントも頼む」

「分かったわ。行くわよ?」
 念のため、剣を抜いておこう。

「よし。よーい…… はじめっ!!」

 メルサが腕を切ったと共に、レアは詠唱の準備に取り掛かった!
「凍てつけ…… 大地よ!!」

 ――ピシピシィッ……!!
 地面が凍り始め、シュベルトの方に襲い掛かってくる!
 なるほど、氷結属性の魔術師か!
 俺はジャンプをし、避ける。

 もたもたしていると、足が奪われてしまう、要注意だ。 
 白い冷気が立ち込め、辺りを冷やしていく。

 ――魔法陣展開 付与 跳躍……!
 一気に近づいてやる! 凍っていないところから迅速に行くぞ。
 
 ――ズザッ!!
 そして、俺は力強く大地を蹴り、レアに向かって突撃する。

「凍てつけ……」
 無駄だ! そのまま食らいついてやる!

 ……ん? 自分の下を凍らし始めた……だと? なっ!?
 レアは華麗に、氷の上を滑り始めた。まずい、レアが作った氷の壁にぶつかってしまう。
 うぅ……っ! 追いかけたいが、うまく止まれん! 

 ――ゴンッ!
 そのまま壁に激突してしまった。

「レアー! 頑張って!! シュベルトも負けてないでもっと!」

 イテテ…… 予想外だったな。レアは……既に俺から遠く離れている。
 なるほどな、間合い管理と、妨害を主軸にしているのか。

「レア! 攻撃はしないのか? いつまで経っても俺は倒せんぞ?」
「シュベルトも攻撃してこないの? 同じだよね!」

 こいつ……! だったら遠距離から攻撃してやる。

 ――魔法陣展開 生成 棘
 ――ドォォォンッッ!!

「お見通しだよ!」

 棘が勢いよく地面から突き出て、砂埃をあげる!
 
 1つ目の魔法陣からは避けることができたようだな。
 ……だが残念、それはダミーだ。

 「えっ!?」
 レアが立った氷の下から、棘が突き出してくる!
 辛うじて避けたようだが…… 体勢を崩したな?

「うおぉぉぉっっ!!」
 俺は高く飛び上がり、レアに向かって飛び掛かる!
 氷は踏まなければいいんだ。

「う…… くっ! 氷塊よ、飛べ!」
 レアは姿勢を崩しながらも、なんとか反撃の魔法を繰り出した。
 ……ん、この魔法、弱いな。

「ハァッ!」
 俺は飛んできた氷塊数個を叩き落とす。
 正面突破だ! 俺はレアに差し掛かる!
  
――そして、俺は目の前で剣を止めた。

「……私の負けだよ。やられたぁ」
「レア! シュベルト! 大丈夫なの?」

 レアは大の字になって横たわっているが、ケガはしていない。
 ふぅ…… これでハンスから殺されずにも済むな。

「ああ、どっちも無傷だ」
「……良かった。シュベルトがいきなり棘を出したりして攻撃するから、見えなかったじゃないの!」
「え? あ、あぁ…… すまない」

「あぁ…… いけると思ったんだけどなぁ。やっぱり一瞬で崩されちゃった」

 たしかにレアは詠唱も早く、魔法の威力も強い。十分に技術はある。だが……

「やっぱり、恐怖がないからだと思うぞ」
「恐怖?」
「レアは攻撃魔法を使えるのか?」
「……できるけど、ほとんど使わないね」

 そう言うと、レアは杖を持って、くるくると回し始めた。

「相手がかんたんに攻撃してこないよう、攻撃魔法を磨いたらどうだ?」
「だけど……」
「なるほど、そういうことか……」

 人を攻撃できない魔術師はよく見てきた。
 だが、そんな人たちはあることをきっかけに居なくなる。

 ――そう、実戦だ。

「時間の問題だろう、すぐに克服できると思うぞ」
「え……? そう?」
「ああ、必ずな」
「うん…… じゃあ、それまで頑張るよ!」

 レアは嬉しいような、何かをためらっているような表情をしながら、そう言った。
 ふいに、メルサが小声で話しかけてくる。

「ちょっと、嘘を付いてレアを喜ばせてるんじゃないの?」
「違うぞ。レアは絶対に攻撃魔法を撃てるようになる。絶対にな」
「……シュベルトがそこまで言うのね、やっぱりレアは才能があるのかしら」

 ――パチパチパチ……
 
「いや~ いい戦いだったぞ、諸君!」
「げっ、何しに来たの? バルフォードさん」

 バルフォードは、扉の方からやってきた。
 それにしても、何か偉そうな態度が気に食わないな……

「うるさくて眠れな……じゃなくて、息抜きさ」
「そ、そう……」

「レアちゃんもすごく成長してる。おじさん感動するよ。うっ、うっ……」
「この前私に負けてた人が何を言っているの?」
「い、いや~ 何のことかさっぱり」

 ――いや、負けてるんかい。
 いいな、こういう人。一周回って嫌いじゃないぞ。

「それにしても、シュベルトだったっけな。おまえやるな! ぜひ自警団に入ってくれ!」
「……少なくともお前の下では働きたくないんだが」
「えぇ……? 出会ってすぐの人にそんなこと言う?」

 バルフォードはわざとらしく、落ち込んでいるような仕草を見せる。

「あ、そうだ…… そろそろメンバーが帰って来るぜ。話でもしていくか?」
「ほう…… お前の下で働く人たちか」
「おいおい、含みのある言い方は辞めようぜ?」
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