亡国の近衛騎士 ~追放された王家直属の最強護衛、幼なじみの旅商人と共に世界を回ることにする~

アイスクリーム仕立て

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第16話 農業地区にて

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 俺は、グラッドの工房の中に入らせてもらえた。
 部屋の中はほのかに暖かい。炉の火はまだ消え切っていなかった。

「取りあえず、おまえがシュベルトってことは分かった。武器だな、ちょっと待ってろ」
「ああ、急かしてしまってすまない」

 今のグラッドは少しぶっきらぼうだ。このクロークを身に着けているからだろう。
 やっぱり、取り外してから向かうべきだったか?

「シュベルト、これが今回の武器だ」
 奥の方から3つの剣を取り出してきた。

「まずはショートソードから。試しに振ってみてくれ」
 
 グラッドから剣を手渡される。
 ほう…… 目立った装飾はないが、洗練されたデザインと頑丈な作りだ。刃は水色に輝いている。
 
 ――ヒュン、ブン!
 コントロールが格段にやりやすくなっている。これほどとは……
 早く使ってみたい……

「喜んでくれてるようだな。ヴァルカンストーンを扱ったのは久しぶりだ。文句があったら言ってくれ」
「ヴァルカンストーン?」
「おまえ、剣が何でできているか知らなかったのか? 軽く、頑丈ないい素材だよ」

「そうなのか…… いいな、これ。気に入った」
「そうか、良かった。じゃあ、次はダガーだ」

 そして、俺は2本のダガーを手渡された。
 これは…… 思ったよりずっしりしてるな。

「それは戦い以外でも使えるよう、耐久力を高くしといたぜ」
「なるほど、万能ナイフか」
「そういうことだ」

 グラッドが作った武器は、宮廷の鍛冶屋のものをはるかに超えている。
 ありがたい、大切に使わせてもらおう。

「ありがとう。前のよりずっといい」
「当たり前だ、しばらくリウに居るのか? たまには感想を教えてくれ」
「分かった。友人を待たせてるんでな、また会おう」
「おうよ、次は防具だぞ!」

 そして、俺は工房から飛び出した。
 腰にはしっかりとした重みを感じる。さあ、生まれ変わった相棒の始まりだ。

 特産品コーナーを抜け、メルサたちの元へ向かう。

「あ、シュベルト帰ってきた!」
「待たせてすまなかったな」
「それはいいんだけど、何を買いたかったの?」

「ああ…… それは、武器が見えたからな。少し」
「嘘を付いてるんじゃないの?」

 困ったな…… メルサ、レアも納得していなさそうだ。
 いや、本当のことを言っただけなんだがな。

「……あ!? まさか!」
 レアがはっとした顔で俺のことを見てくる。
 ――まさか、この前の尾行を感づいた、訳じゃ……!

「冷や汗が出ているわよ。大丈夫?」
「……そ、そうか?」
 まずい、バレたら相当まずい!

「今、シュベルトの反応を見て確信したよ! 悪い薬、やってるんじゃないの!」
「っ、……え? 悪い薬?」
「そうだよ」

 ふぅ…… 上手いように勘違いしてくれたようだな。

「いや、まったくそんなことはしてないぞ?」
「え?」


 ~~


 時は少し経ち……

 再び歩き始めること数十分、市場の入り組んだ建物が少しずつ、また少しずつ開けてきた。

「もうすぐ着きそうな雰囲気がするわね」
「そうだな。風通しが良くなった」

 しかし信じられない……
 こんな街に畑があるのか? 外から見た感じなかったと思うのだが。

 ――前から日差しが差し込む。

「うぅっ、まぶしい……」
「おいおい…… メルサ、見てみろ」
「えぇ…… え? これ、本当なの!?」

 視界が広がる限り、金色の大地が広がる。それも奥側の壁が見えるほどだ。

「着いたよ、ここが農業地区。リウの半分の面積を占めるんだよね」
「半分って…… いったい王宮何個分の広さだ?」
「それよりも、早く訓練場の方へ向かおうよ」
「あ、あぁ。分かった……って、訓練場?」

「あ、言ってなかったね。自警団の訓練場に向かっているんだよ」

 ほう、リウに自警団なんていたのか。てっきり無法地帯かと…… おっと。
 もしかしたら、この前の門番みたいなやつが沢山……

「あとどれくらいだ?」
「もうすぐだよ、もう見えているでしょ。あの建物」
 
 どれどれ…… レアが指さした先には、民家のようなものが見える。
 爺さんの家のような、昔のリウの面影を残した家だ。

「そろそろ収穫の時期だし、自警団の皆も忙しいと思う。訓練場は開いているだろうね」
 そして、俺たちは自警団の建物の前までたどり着いた。

 ――コンコンコン

「おーい、バルフォードさん? いますかー!」

 ――コンコンコン

「バルフォー―――ドさーーーん!!!」

「いないんじゃない? しばらく待ったらどう?」
「……いや、絶対にいるね」

 ――コンコンコンコンコンコンコンゴンゴン! ゴン! ゴン!

「あーーけーーて!!!!」

「うっせえなぁぁ!! 誰だよゴラァ!」
「うわっ!」
 まじか、本当に人が居たぞ。
 人間、黒髪、ぼさぼさ、年齢はゲルツと同じくらいで、いい歳したおじさん……って感じか。

「……なーんだ。レアちゃんじゃないかい~ 早く言ってくれよぉ~」
 バルフォードはくねくねしながら、レアに近づいていく。
 
「バルフォードさん、気持ち悪いよ」
「ぐはっっ!!」
「…………」

 なんだこいつは? 結構やばい人かもしれない。 こんなのが自警団のメンバーなのか?

「ん? 誰だい君たち? 初めて見るな」
「…………」
「……そんなゴミを見てるような態度、止めてくんない?」

 メルサなんて命の危機を感じたのか、俺の後ろに隠れた。
 大丈夫だ、いつでも剣を抜く準備はできているぞ。

「レア、この人は…… なんなんだ?」
「バルフォードさん、リウ自警団の、団長だよ」
「は? こいつが?」
「どうも、団長です」

 上に立つ人の言動とはかけ離れている。団長がこれって…… 大丈夫なのか?
 バルフォードはそんなこと気にしていないのか、今も決めポーズを続けている。

「で? 何をしに来たんだ?」
「あ、そうそう。訓練場を使わしてくれない?」
「いいぞー こいつとするのか?」

 俺のことを指さしてきた。

「うん、この人はシュベルト、最近ここにやってきた戦士だよ」
「シュベルトだ」
「ほーん、物好きなやつもいるんだなぁ。いや、どっかで聞いたことある気が……」
「バルフォードさん?」

「あ、ごめんごめん。まぁ、取りあえず中に入ってくれ。あ、お嬢さんも」
「……っ」

 バルフォードが手招きをしたが、俺の後ろから離れない。
 怖いというより、気持ち悪い判定だ。

「すまないな、まだお前のことを拒絶しているらしい」
「えー? おじさんショック」

 そうして、俺たちは自警団の建物の中に入るのであった。
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