亡国の近衛騎士 ~追放された王家直属の最強護衛、幼なじみの旅商人と共に世界を回ることにする~

アイスクリーム仕立て

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第25話 葛藤

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 クソッ、何も情報を引き出せずに出てきてしまった……
 いや、教会の位置を把握しただけでも十分なのだが、あれは絶好のチャンスだった。

 リスクに敏感になりすぎたか……

「シュベルト、ねえシュベルト!」
「ん? ああ、どうした?」
「私が寝ている間に、何があったの?」
「それはな……」

 俺はレアに事の説明した。

「……そういう事があったんだ」

 今俺たちは教会から出て、とりあえずてきとうな道を歩いている。人足も少し出てきた。
 あっちとは違って高い建物がないから、壁が見えて比較的方角が分かりやすい。

「ひとまず敵の核心は分かった。もっと有用な情報を集めたいのだが……」
「……私、アリアをあの壁ができる前から知っているの」
「まず…… え? なんだって?」
「昔よく遊んでいたから……」

 ということは、レアの存在を知っていた上で……
 あえて逃がした?

 なぜ……

「待て、ということはレアの親がアリアの両親を……?」
「……違うっ! 父さんは絶対にそんなことをしない!」

 レアの鋭い声が響き渡る。
 今まで聞いたこともない、心からでた言葉だ。

「あんなの絶対に嘘だ! 父さんが人殺しじゃない、お母さんも死ぬ必要なんて……!」
「レア…… 俺が悪かった。どうか冷静になってくれ」
「……もういいよ。もう何も変わらないんだから」

 レアはそう冷たく言い放った。軽率だったか……

「……」
 俺は意味もなく辺りを見回した。特にこれといったものは……

「ん? あれは……」

 前の方から現れた金髪の大男。……ダイフォスだ。
 数人の部下を引き連れ、やつは酒場の方に入る。

「レア、見たか?」
「……」
「……入るぞ」
 
 俺たちも少し遅れて酒場の中に入った。
 人は意外と多い。これは好都合だ。

「いらっしゃい。……ここは子供禁制だ」
「子供じゃないよ!」
「そうなのか、すまなかったな」

 やめてくれよ、レアはただでさえ機嫌が悪いのに……
 取りあえず瓶一本分の酒を買い、なるべく目立たない席を選び、ダイフォスの動向を窺った。
 
 酒場の中は賑やかで、酔っぱらいが大声で笑い合い、給仕たちが忙しなく動き回っている。
 その喧騒の中でも、ダイフォスの声は異様なほどよく通った。

「ははは! 次の戦の前宴とでも思ってくれ」

 ダイフォスは椅子にどっかりと腰を下ろし、豪快に酒をあおった。

「東リウの連中には正規軍が居ない。そして、今回はソフォス様直々に指揮なされるから負けはない!」
「油断していると、前回のようになりますよ。あの魔法騎士を何とかしないと」
 部下の一人が口を挟むが、ダイフォスはそれを一蹴するように笑った。

「今回は前回と違って、勝てば”お楽しみ”が自由にできるからな。本腰を入れて戦うつもりだよ」

 ふっ、趣味が悪いな。
 つまり、教会は東リウの完全な破壊を目論んでいるということか。
 いいぞいいぞ、そのまま全部吐いてしまえ……

「で、ソフォス様の作戦を聞きたいか?」

 ダイフォスの声が急に小さくなった。さすがにそこまでの馬鹿ではないということか。
 こういう時は……

 ――魔法陣展開 付与 強化聴覚
 
「…………戦いの最中にやつを殺す協力者ができたらしい。これでまとめて処理できる」
「なるほど、さすがはソフォス様ですね」
「だろう? 一石二鳥だ」
 
 ダイフォスは豪快に笑い、さらに酒をあおった。

 ……内通者がいる、か。
 最初あたりが聞こえなかったが、内通者がいることは分かった。
 これをすぐにバルフォードに伝えなければ……

 俺は酒瓶を隣の席に渡す。

「すまない、急用ができてな。代わりに飲んでくれないか?」
「お! そう言うことなら大歓迎だぜ!」
「ほら、レア行くぞ」

 そうして、俺たちは酒場から出ることとなった。


 ~~


 そのまま無言の時が流れ、今穴道を戻って行っている。
 不機嫌だったレアも、この時はやけに距離が近い。

「ねえ、シュベルト」

 ついにレアが口を開いた。

「なんだ?」
「シュベルトってお酒飲んだことあるの?」
「もちろん、近衛騎士時代、毒見として色んなをな」
「へぇ、やっぱり慣れてるんだ。私、まだ飲んだことないから……」

 強がってすまない、実は全然慣れてはいない。
 俺は酒が苦手なんだ。

「すまん、実は俺は酒に弱いんだ。それもグラス一杯でバタリと」
「意外、てっきりシュベルトはお酒に強いと思っていた」

 レアの口調が段々と元に戻っている気がする。
 良かった、また初対面の時みたいに距離を置かれるかと考えてしまっていた。

「レアは酒に強い人が良いのか?」
「分かんないよ、そういうことしたことないんだし。けど、一度見てみたい。シュベルトが酔いつぶれるところ」

「残念だが、初めて飲んだ時以外に酔ったことは無い。すぐに解毒魔法をかけるからな」
「ええ~? 今度はそれ、禁止ね」

 それはこの戦いに勝った後だな。
 さて、ようやく出口と思わしき光が見えてきたぞ。

 「ようやく戻って来たな」
 「……うん」

 ちらりと様子を見ると、レアには安堵の表情が見えた。
 俺は歩きながらも、頭の中で次の計画を練っている。
 ダイフォスの口から出た内通者の話は重大だ。ソフォスの策略がどれだけ広がっているのか把握しないといけない。

「シュベルト。……あの時、教会で言ったことだけど」
「さっきの話か? ごめん、あんなこと言うべきじゃなかった」
「ううん、私も言い過ぎた。また、落ち着いたときにその話をしたいの」
「……分かった」

 話している間に出口だ。
 そして、俺たちは穴から出る。すぐそこにバルフォードがそわそわした様子で待っていた。

「バルフォード、今帰ったぞ」
「シュベルト、そしてレア! やっぱりこいつについて行ってたのか。みんな心配してたんだぞ~」
「……ごめんなさい」
「まあ、フィアがお前の匂いをたどっているころには予想がついてたけどよ」

 バルフォードがだるそうに頭を掻きながらそう言った。

「バルフォード、言われた情報は持って帰ってきた。そして、敵の今後の計画もな」
「ナイス! さすがはシュベルト様!」
「そして、今から話す内容が一番大切だ。……内通者がいるかもしれん。しかも、俺たちの近くに」
「…………そうか」

 バルフォードは冷静に、それだけ言った。
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