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招待①
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森から転移魔法で領主館の自室に戻った後、私は身支度をしてすぐに寝台に入った。
クローディア公爵子息が訪れたことについて色々と考えることはある。
私はブロウ家絡みのことでセレス家にも調査が入ると思っていた。クローディア公爵子息がブロウ家とセレス家の関係を知っていたならば、彼も一連の検挙に関わっている可能性が高い。
クローディア公爵子息は、ブロウ伯爵子息の動向を探っていたことがあるのかもしれない。
騎士団が動いていることから一連の検挙は王太子殿下が主導されていると思われる。
学生である第二王子殿下がそれに協力するのであれば、学園に在籍している関係者の令息令嬢を監視するあたりが妥当なところ。第二王子殿下の側近であるクローディア公爵子息はそれを補佐していた。
あの日彼が孤児院の近くにいたのは、おそらく偶然ではなかったのだろう。
仮にクローディア公爵子息がブロウ伯爵子息の動向を探っていたとすれば、あの時私を助けたのは何故だろうか?
調査中にしろ監視中にしろ、彼が姿を現すのはデメリットしかない。対象が元婚約者と揉めそうになっていたとしても、自分の役割を果たすなら傍観して差し支えないだろうに。
クローディア公爵子息は紳士の振る舞いとして、放っておけなかったのだろうか?
「……」
答えの出ないことを考えるのは止めよう。
今は身体を休めることもまた必要だ。
しばらくして心地よい眠気に襲われる。
胸の内がすっきりしていることで、久しぶりに深く眠れそうだった。
翌日、領主館は午前中から慌しかった。
今をときめく公爵家から客人を迎えるので、家人は忙しく動き回っている。
私も客人を迎えるため、侍女達に飾り付けられる羽目になった。湯浴みのおかげで目は覚めたが、体力が少しずつゼロに近付いていく。
久しぶりにコルセットを絞められて、きちんとしたドレスを纏い、髪を結い上げられた。
正直、ここまでする必要があるのかな?
薄く化粧をされる私が胡乱な目をしているため、それに気付いた侍女頭が笑顔で一刺しする。
「公爵家の方をお迎えするにあたり失礼があってはいけませんから。セレス家の名誉に関わりますので、しっかり準備いたしませんと」
侍女頭の言い分は正しいので、私は黙って頷く。彼女は私の性格を分かっているので、私に対して一番効果のある言葉掛けをしてくる。
「久しぶりにお嬢様を着飾らせることができて満足です」と後ろではしゃぐ侍女達の言葉はスルーする。
私は領地では動きやすいことを重視しており、一人で脱ぎ着できる簡易的なドレスを着ることが多かった。おしゃれを楽しむ年頃の令嬢らしくない振る舞いで、侍女達を泣かせているのだ。
先ぶれがあり、クローディア公爵子息が到着した。護衛を連れて、今回は公爵家の馬車で来た様だ。
馬車から降り立った彼は、周囲の視線を一身に集めた。高位貴族に多い輝く髪色と明るい瞳の色、それに端正な顔立ちで、人の目を惹くのだろう。
それを当たり前の様に受け止め優雅に歩いてくるのだから、貴族としての格の違いがわかるというもの。
彼の瞳の色と同じような青色の上着に、彼の髪色と同じ銀の装飾が歩く度に揺れる。
まさに貴公子の出立ちに、出迎えた使用人達が内心騒めいていることを感じる。領主館には高位貴族を招く機会がほとんどないからだ。
「ユリウス・クローディア公爵子息、ようこそお越し下さいました」
「アレキサンドライト・セレス子爵令嬢、お招きいただき感謝します」
紳士の礼で手の甲に口づけられる。
私はこんなに丁寧な挨拶を受けることがないので、されるままにして、とりあえず微笑む。
クローディア公爵子息も寝不足だろうに……。
それを物ともしないキラキラした存在感に、私は眩しくて目が開けられない。
生粋の王子様感に、女性使用人達が目を輝かせている。一時でも彼女達の目の保養になるからいいか。
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お気に入りやいいね下さった方、ありがとうございます。励みになります^_^
なお答え合わせ③に一部加筆しております。
引き続き楽しんでいただけると幸いです。
クローディア公爵子息が訪れたことについて色々と考えることはある。
私はブロウ家絡みのことでセレス家にも調査が入ると思っていた。クローディア公爵子息がブロウ家とセレス家の関係を知っていたならば、彼も一連の検挙に関わっている可能性が高い。
クローディア公爵子息は、ブロウ伯爵子息の動向を探っていたことがあるのかもしれない。
騎士団が動いていることから一連の検挙は王太子殿下が主導されていると思われる。
学生である第二王子殿下がそれに協力するのであれば、学園に在籍している関係者の令息令嬢を監視するあたりが妥当なところ。第二王子殿下の側近であるクローディア公爵子息はそれを補佐していた。
あの日彼が孤児院の近くにいたのは、おそらく偶然ではなかったのだろう。
仮にクローディア公爵子息がブロウ伯爵子息の動向を探っていたとすれば、あの時私を助けたのは何故だろうか?
調査中にしろ監視中にしろ、彼が姿を現すのはデメリットしかない。対象が元婚約者と揉めそうになっていたとしても、自分の役割を果たすなら傍観して差し支えないだろうに。
クローディア公爵子息は紳士の振る舞いとして、放っておけなかったのだろうか?
「……」
答えの出ないことを考えるのは止めよう。
今は身体を休めることもまた必要だ。
しばらくして心地よい眠気に襲われる。
胸の内がすっきりしていることで、久しぶりに深く眠れそうだった。
翌日、領主館は午前中から慌しかった。
今をときめく公爵家から客人を迎えるので、家人は忙しく動き回っている。
私も客人を迎えるため、侍女達に飾り付けられる羽目になった。湯浴みのおかげで目は覚めたが、体力が少しずつゼロに近付いていく。
久しぶりにコルセットを絞められて、きちんとしたドレスを纏い、髪を結い上げられた。
正直、ここまでする必要があるのかな?
薄く化粧をされる私が胡乱な目をしているため、それに気付いた侍女頭が笑顔で一刺しする。
「公爵家の方をお迎えするにあたり失礼があってはいけませんから。セレス家の名誉に関わりますので、しっかり準備いたしませんと」
侍女頭の言い分は正しいので、私は黙って頷く。彼女は私の性格を分かっているので、私に対して一番効果のある言葉掛けをしてくる。
「久しぶりにお嬢様を着飾らせることができて満足です」と後ろではしゃぐ侍女達の言葉はスルーする。
私は領地では動きやすいことを重視しており、一人で脱ぎ着できる簡易的なドレスを着ることが多かった。おしゃれを楽しむ年頃の令嬢らしくない振る舞いで、侍女達を泣かせているのだ。
先ぶれがあり、クローディア公爵子息が到着した。護衛を連れて、今回は公爵家の馬車で来た様だ。
馬車から降り立った彼は、周囲の視線を一身に集めた。高位貴族に多い輝く髪色と明るい瞳の色、それに端正な顔立ちで、人の目を惹くのだろう。
それを当たり前の様に受け止め優雅に歩いてくるのだから、貴族としての格の違いがわかるというもの。
彼の瞳の色と同じような青色の上着に、彼の髪色と同じ銀の装飾が歩く度に揺れる。
まさに貴公子の出立ちに、出迎えた使用人達が内心騒めいていることを感じる。領主館には高位貴族を招く機会がほとんどないからだ。
「ユリウス・クローディア公爵子息、ようこそお越し下さいました」
「アレキサンドライト・セレス子爵令嬢、お招きいただき感謝します」
紳士の礼で手の甲に口づけられる。
私はこんなに丁寧な挨拶を受けることがないので、されるままにして、とりあえず微笑む。
クローディア公爵子息も寝不足だろうに……。
それを物ともしないキラキラした存在感に、私は眩しくて目が開けられない。
生粋の王子様感に、女性使用人達が目を輝かせている。一時でも彼女達の目の保養になるからいいか。
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なお答え合わせ③に一部加筆しております。
引き続き楽しんでいただけると幸いです。
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