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Dune 07
しおりを挟む「先鋒は第弐中隊。第肆及び第伍小隊は援護へ」
やけに暑い日だ。砂の土地は遮蔽物がないからやり難い。その上この暑さでは、士気が下がる。
「砲手はここで待機」
けれど戦況は待ってくれない。昨日の貴重な休みはすぐに去ってしまった。朝からすぐに移動になり、ジープに乗り込んで敵陣営の近くへ来た。集合地点で大佐の指示が飛ぶ。
「第弐中隊、装備を持て」
指示に歩き出した隊長の背を追って、緩慢に装備を背負いなおして中隊が動き出す。
「大尉!」
第伍小隊の兵士が隊長に声をかける。隊長は脚を止めた。
「ご武運を…!」
「ああ。お前もな。援護は頼む」
「任せてください!」
「健闘を祈る」
隊長は兵士の肩を叩き、微笑むと歩き出す。
他の部隊に居ても、隊長の世話になった事がある奴は多い。彼もその一人なのだろう。
「先鋒か」
「ここを突破すれば少しは優位になるさ」
兵士達はそんな会話をしながら、敵陣へ向かう。今日は死ぬかもなぁと、なんでもないことのように言ってみせる。今日の空模様を話すように、当たり前の日常だ。
+++
見慣れた銃撃戦の中だ。横殴りの雨のように銃弾が行き交う。
敵がバタバタ倒れていく。こちらの兵ももう何人か死んだだろう。
土埃と硝煙と血の臭いに、最初の頃は息苦しくなったものだ。けれど、それももう感じない。
また一人、撃ち殺す。正確に射抜く。無駄弾を撃たないように。相手の身体が跳ねて、倒れる。
俺達も彼等も、絡繰人形のようだ。簡単に倒れる。吹っ飛んでいく。
ああ、また、耳が聞こえない。
すぐ隣で銃声が上がった為に、一時的に聴覚が飛ぶ。耳鳴りだけが響いていた。こういう瞬間に殺られる。
背後を確認してもう一度前を見た時、いつの間にか敵の兵士が躍り出ていた。
まだ、少年だ。
学生をやっているようなあどけなさだ。細い腕で、こちらに銃を向けている。俺を睨んでいる。確かな憎しみの宿る瞳だ。
俺も銃口を向けた。少年の褐色の肌に、眼球がやけに映えて俺を責める。
撃たなければ。
細い体を支えてやっと立っている少年の姿に、まるで似ていないはずのトゥルーの姿が重なる。
まだ、彼は、少年だ。
「フォービア!!」
やっと戻ってきた聴覚に、唐突に俺の名前が突き刺さる。
覚醒するような一瞬に、目の前の少年の身体が不自然に跳ね、倒れた。
トリガーは、引いていない。
トリガーは、引いていないじゃないか。
「フォービア、何してんだ!」
そうだ、何をしているんだ。ここは戦場だ。少年兵が居たっておかしくない。
「お前が死ぬぞ!!」
同僚が拳で肩を強く叩いていった。彼の背後に敵を見て、銃口はスムーズに相手を捉えた。撃ち殺す。そうだ、これでいい。
撃たなければ。たとえ相手が少年でも。
今度は、迷ってはいけない。もしまた少年兵に出逢うことがあっても。
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