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Dune 12
目が覚めると、いつも通りのベッドの上だった。そこにシリルは居なかったし、服も乱れていなかった。あの酷い臭いもしなかったし、別段変わった様子は視界に無かった。もしかして夢だったのだろうかと起き上がろうとすると、腰や下腹部に痛みが走った。いやだ。夢じゃ、なかったんだろうか。記憶を追うと、吐き気が込み上げて身体が震えた。自由を奪われて好き勝手に弄ばれるような経験は、これまで無かった。
「トゥルー…?」
小さく呼びかけられて顔を上げると、目を円くしたマノスが居た。
「おい、どうしたんだ。酷い顔だぞ…昨日より酷い。どっか悪いのか?」
そう言ってマノスが腕を上げると、俺の身体は大袈裟に跳ねて、勝手に身構えてしまった。
「トゥルー? 本当にどうしたんだ?」
ただ俺の頬に触れようとしただけらしいその腕は、俺に触れずに降りる。
「悪い…シャワー…浴びてくる…」
居心地が悪くて、頭も回らなくて、俺はベッドから降りようと脚を下ろす。
「トゥルー!」
立ち上がろうとすると、脚が折れて膝から床に落ちてしまった。
「おい、どうしたんだよ! 大丈夫か? 熱でもあるのか?」
「なん、でもな…い…」
「なんでもないって顔じゃないぞ? 熱は…ないみたいだけど。なんか病気か? 診てもらった方がいい」
「…いい。シャワールームに連れてってくれ…肩、貸して」
そう言ったけど、マノスは俺の身体を軽く抱き上げて、そのまま連れて行ってくれる。保健室に連れて行かれたらどうしようかと思ったが、マノスは俺の言う通りシャワールームに下ろしてくれた。
「服、脱げるか?」
「うん」
頷いてシャツの釦を外そうとしたけど、指先は震えて力が入らない。見かねたマノスが釦を外してくれた。
「ごめん…マノス…」
「いいから。…ん?」
マノスは釦を外しながら怪訝な顔をする。なんだろうと思った時には、もう全てを外し終わっていたマノスは、シャツを肌蹴て息を呑んだ。
「おいッ…これどうしたんだよ!」
「え、」
「これも!」
マノスの視線を追って自分の体を見下ろすと、胸や脇腹に紅い斑点が散っていた。手首には擦過傷が残っている。それを見た瞬間に強い吐き気が込み上げて、耐え切れない衝動に俺はそのまま床に膝を付いて戻してしまった。
「トゥルー…! 大丈夫か、トゥルー!」
殆どなにも食べていなかった喉を通ったのは焼けるような胃液だけで、マノスが片手でシャワーを出して、それを排水溝に流してくれた。そしてもう片方の手で背中を擦ってくれる。気遣いだけを感じる、なんの欲求もないその掌の温度に撫でられていると、安心してしまって今度は涙腺が緩んだ。
「トゥルー…お前、誰かに…まさか、シリルか…?」
「…ッ…」
濡れてしまった袖口で目元を押さえてなんとか嗚咽を堪えながら頷くと、マノスが両腕で俺を抱き締めた。
「ごめん…俺が、あの時出てかなかったら…せめてもっと早く帰ってきてたら…」
声を出したらみっともなく泣き声が上がってしまいそうで、言葉にできない代わりに首を横へ振った。マノスの掌がくしゃりと髪を撫でてくれる。
マノスの胸の鼓動を聞いていると、呼吸も段々落ち着いてきて、なんとか泣き止むことが出来た。男が男に犯られて泣くなんて、情けなくて死にたくなった。
+++
シャワーを浴びながら何度も身体を洗って、ずっと湯水に打たれていた。心配して見に来たらしいマノスがズブ濡れになりながら俺を抱き上げて、タオルで俺の身体を拭いていた。そうされながら、俺はなにも思わなかった。なにも言葉が出てこなかった。
「フォービア…」
口から出るのはその名前だけだった。
あとはなにも考えられなかった。頭が真っ白で、何ひとつ思い浮かばなかった。
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