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第二話 焦熱~繭の戯れ

#8 シーツをぎゅっと

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 長い指が、熱い花唇に埋まってゆく。

 くぷり…───

 中はもう、この上なくとろとろになっていた。
 沸騰しているのではと思うほど熱く、ふっくらと柔らかく。みっちり閉じていながら、春の蕾のように優しくほころんでもいた。

「ん、は、ああああああああああああぁ……」

 花の秘口がDの指を抱き締めるように、愛おしげに迎え入れていく。

「花」
「あ、あ、あ、あ、あ」

 ぬち、ぬち、ぬち、ぬち、ぬちっ──

 入っては退き、引いては入り、ひと挿しごとに少しずつ深くなってゆく。

「はっ、はっ、はっ、あ、っ……!」

 さっきのような恐怖はなかった。
 ただただ熱い。そして燃え出しそうな熱の逃げ場はどこにもなく、花を内側から炙ってやまない。

 だんだんと指の抽挿が大きくなっていく。

 にゅぷ、にゅぷ、にゅぷ、にゅぷっ、にゅぷっ、にゅぷぷぷ──

「あああ……あああああ!んあ、う、ぅ、ふ……ひうっ」

 その一本の指に、もはや完全に支配されていた。

 突き入れる律動が、身体を揺らす。
 内襞をこする指先の、ひと掻きひと掻きが、嬌声を迸らせる。

 ぢゅぱっ、ぢゅぱっ、ぢゅぱっ、ぢゅぢゅぢゅぢゅぢゅぢゅ──

「あっ、あう、うっ、え…、っ~~~~~~!!」

 全身が発火しそうに熱い。
 信じられない量の汗が噴き出し、つないだ手も、背中も腿も、だくだくだった。

 空いた手はすがるようにシーツを握っている。指が白くなるほど握りしめて、きつい皺をつくって。ガクガクと跳ね回る身体を抑え込もうとしているのか。砕け散る意識をつなぎとめようとしているのか。

 裏返った腕は、白く細い。柔らかそうな、薄い皮膚。吸いつけば赤い痕跡(しるし)が残るだろう。噛みつけば食い破ることさえできるかもしれない。
 喉をさらす獲物の無防備さにも似て、男をたまらなくたぎらせる。

「それがわざとじゃないから怖い。本当に、花、君って子は」
「ふぇ……?」

 焦点のとんだ目で、きょとんとDを見上げる。
 ぐずぐずになって、目元を腫らして、真っ赤な顔をして、ゆるく開きっぱなしの唇をぬらぬらと光らせて。
 たまらないほどエロチックな表情。
 なのに、まざなしだけが、いっそあどけないほどに無垢なのだ。

 いくら、なりきっているといっても。

 本当にこれが蝶子だろうか。
 いいや、それとも、本当はこれが蝶子なのか。

「ねえ、わかってる?」

 ずぶ…っ────!

 丹念に襞を愛でていた長い指が、いきなり深々と奥を貫いた。

「んああああああああああああああああっ!」

 ぐちゅん、ぐちゅん、ぐちゅん、ぐちゅん、ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぢゅっ!

「ひ!あ!あ!う……、ぅ、ふぁ、~~~っ!!!」

 びくんっ、びくんっ、びくびくんっ…!

 ぐちゅりと挿すたびに、身体が跳ねる。強い電流に触れでもしたように。

「かわいい。僕ので、こんなに感じてくれて」

「んぅっ」

「でも、まだだよ。もっと感じて。もっとスゴいことしよう」

 ぢゅぱっ、ぢゅぱっ、ぢゅぱっ、ぢゅぱっ、ぢゅぱっ──

「あ、う、ぅっ、~~~~~~っ」

 ひくっ、ひくっ、ぴくぴく……

「いいよ。すごくいい。でも、わけがわからなくなるまえに、勉強もしておかなきゃね」

 取材のため、書くため、次の作品執筆のために、彼女はここに来ているのだった。

「ん……」

 くいっ、と。
 熱い蜜壺の中で、Dの指が折れ曲がった。

 ざり……──

 汗みずくの華奢な身体が、ぴくんと痙攣する。

「ここだね。わかる?」

 ずり、すり、すりりりっ──

「ふぁ、あ、っ、んふ…っ、何、何か、感じが……」
「感じが、変わった?」
「ん、あ、ぅ…?」

 ざり、ざりりり……──

「ここが君のGスポットだよ。どんな感じ?」

 言葉になるまで、しばらくかかった。
 静かな部屋に、はっ、はっ、という早い呼吸音だけが響く。

「……きゅうんってなる」
「うん。それから?」

 ざりりっ…──

「んぅっ」

 ざり、ざり、ざりっ──

「続けて。どんな感じ?」

 すりすりすりっ──

 もどかしいほどに淡く掻き回されて、あああ、と呻いた。

「きゅうんきゅうんって、泣いてるみたい」
「泣いてる。どこが?」
「どこ……? どこだろ……」

 すり…──

「どう? 泣いてる?」
「うん。しくしくって。中から絞られる。吸い込まれて、ぞくぞくってして……」

 ざり、ざ、ざっ、──

「……え、嘘、何これ」

「どうしたの? 大丈夫?」

 わかんない、というかのように首を振りながら、Dの手を握りしめる。

「お、奥の方から、何か、きそう」
「奥って?」
「お腹の、奥の……」
「お腹の奥の?」

 すりすりすり──

 ああ、と、深くて熱い吐息がこぼれた。

「そっか、子宮だ。わかった。これが、子宮が泣いてるってことね」

 ざらり……──

 あん、と喘いでのけぞった喉が、危ういほど白い。

「D」

「はい」

 したたるほどの甘い囁き。
 たったひと言なのに、ぞくぞくと腰が疼いて、またとろけた。

「奥にほしい」

 熱でうるんだ瞳が、Dに訴えている。
 濡れて光る唇が、切なく震えている。

「もっと奥……」

 束の間、花なのか蝶子なのか、わからなくなった。

「思いっ切り、ぐちゃぐちゃに、して」

「謹んで」

 ぐつっと押し込まれた指が、最奥を探る。



次ページへ続く
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