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第二話 焦熱~繭の戯れ

#extra2 気持ちいい?

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 そんなふうにして、半ば以上ぐちゃぐちゃになってから挿れられたことを思うと、「これくらい平気」などと強がるだけの意地がまだ残っていたことを、さすが蝶子と称賛されて然るべきだったかもしれない。

 だが、その強がりが蝶子を追い込んだことは言うまでもない。

 しゅり── しゅり、しゅり、しゅりっ───

 そんな場所を、毛足のあるブラシで掃かれるなど、普通はありえない。
 女の最奥。その先はもう子宮、という秘められるべき口だ。
 とんとんと突かれ撫でられ悦ばされる指の戯れとは、あまりに違う。

「ああっ、んあっ、あっ、ああああああっ、ぃ…あ! ッ~~~~!!」

 蝶子は、経験したことのない官能に、翻弄された。

 ぞりっ── ぞりっ── ぞんっ──

「ひ! あっ! ふぁっ?!」

「無理そうなら、我慢せずに言ってください」

「こっ、らい、だ、がっ……」

 これくらいで誰が。
 そう言いたいのだろうが、もう断片しか音になっていない。

 Dは濡れた笑みをしたたらせて、蝶子を覗き込んだ。

「じゃあ、もうちょっと?」

「あああっ!」

 ととん…── とん、とん、とん─── ざりっ、ざりっ、ざりっ──

「はあっ、んっ、あっ! ああああああっ」

 とん、とん、とん─── ざりっ、ざりっ、ざりっ──

 最奥の弱いところをくまなく撫で、突いて、こすって、掻き回す。
 そのブラシの突端から、微弱なパルスが放たれ続けていた。
 ぞくぞく、ぞくぞくと、深いところから走る震えが止まらない。

「いいとこ当たってます?」

「ああああ、ああああああ、あああッ……!!」

「指じゃあ、こうはできませんからね」

「う、あっ、ふぁっ……」

 とんとんとん、ざりざりざり。とんとんとん、ざりざりざり……。

 規則正しく繰り返されるうちに、蝶子はくったりと柔らかくなっていった。

 とろんと蕩けた目は、焦点を失ってうっとりとどこかを見つめている。
 細い肩や勃ちきった乳首は、快楽の波が押し寄せるたびに、ぴくんぴくんと鋭く跳ねる。
 甘い蜜がとめどなく溢れて止まらず、とろ、とろ、とろ、と湧き続けていた。

「蝶子さん、気持ちいい?」

 Dを見上げる顔を見れば、そんなことは聞くまでもない。

「ねえ、気持ちい?」

 指の背で頬を撫でると、そこにもまたビリッと電気が走った。

「あ……ん……」

 見つめるDの表情は、女でなくとも恋に落ちそうなほど、甘い。

「蝶子?」

 ぞくぞくぞくんっ──

 深く長い身震いに身を委ねて、蝶子はどぷ、と蜜を迸らせた。

「……またイったね。かわいい」

 Ilinx(イリンクス)では、店のルールとは別に、客ごとのプレイルールとタブーがある。
 蝶子は、性交とアナル、そして口へのキスがNGだ。
 それはスタッフであるプレジャーソムリエにとって絶対の不可侵領域を意味する。だからDは蝶子の唇には触れたことすらない。

 それなのに、この日──。

「蝶子さん。どうしよう、触っていいかな?」

 Dの指が、濡れた唇に触れてきたのだ。
 それも、ふにふにと撫でるばかりではなく。

 くぃ…──

 押し開かれ、蝶子がびくんと跳ねた。

「んっ」

 むせかえる色気が、電磁波の淡い痺れと共に、指先から流し込まれてくる。

「ねえ。指ならいいんだっけ?」

 とろんとした目でDを見上げる蝶子の唇を、熱い指先が撫でている。

「これ(指)は、キスじゃないでしょ?」

「……」

 長い間があった。

 こくん……。

「蝶子さん」

 綺麗に手入れされたDの指が、蝶子の口を犯していく。

 ぴちゃ──

「中、熱いね。すごく」

「ん、う……、っ、は……」

 びりびりと走るパルスに共に撃たれながら、小さな口の中が隅々まで撫でられ、こぼれる唾液が指をつたって流れつづける。

 びくんっ── びくんっ── びくびくびくっ──

 口からも、中からも、怖いほどの快感が引き出されていた。

 ぴちゃ…ぴちゃ── ちゅく── ちゅく── ちゅく…──

「う、んぅ、うぅんっ」

 二本に増えた指が、狭い口腔内を優しく撫で、舌をくすぐる。
 涙目の蝶子は、熱い息をこぼしてただ震えるばかり。

「口、弱かったんだ」

「っ! は、……っ」

 禁断の官能に、どれだけそうして溺れていたか、わからない。



次ページへ続く
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