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第四話 月蝕〜マスカレード・ナイト
#12 贄のオークション
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だが、まだ終わりではない。
今日は“生贄の日”。
狂乱のカーニバルのメインイベントは、男どもの欲望の宴なのだ。
ステージ袖にスポットライトがあたり、司会が登場した。
『ジェントルメーン! お待たせしました。ここからは皆様のターンです。さあ、支度は整いました。贄のオークションをはじめましょう! 今日は二セット限定です。どうぞお見逃しなく』
司会が朗々と宣言した。
『まずは第一セットの三名様。おひとり二回まで。300から!』
300万ではない。花の本数だ。300本なら900万円、1,000本で3,000万円。
それが今夜の「生贄」の値段になる。
『NGプレイはマウス・トゥ・マウスのキスとアナルのみ! あとは大体オッケーです』
なんとも適当なインフォメーションに、会場からも声が飛ぶ。
「大体?」
「なんだ、それは」
「雑だな、おい」
笑い声がわき、司会も笑った。
『ええ、すみません。まあ現場対応ということで』
「350!」
「400」
「500だ」
「600!」
男たちは笑いながら競っていく。
蝶子は、半ば忘我のまま、ぼんやりとオークションを眺めていた。
落札した男達が、生贄を輪姦するのだ。
今から、この場で。
まだ悪夢は始まってもいなかった。
ぶるぶるっと身震いした。
「だって、あなたが言ったんだよ。めちゃめちゃにしてって」
悦楽の余韻に潤んだ目がDを見上げる。
「花をって、言ったじゃない。馬鹿……」
声は細く、口調もおぼつかない。
「ああ、そうだったね。ごめん、つい」
持ち上げられた手の甲に、ちゅ、と音を立ててキスが降る。
「でもじゃあ、後はあの娘(こ)にがんばってもらおっか」
こくん──
「それでいいね?」
こくん──
「でも、Dはしちゃだめ」
「え?」
「他の男にさせて。あなたはそれを、笑いながら見てなさい」
「……」
650、680、700、と、男達の欲望が積み上げられていく。
「わかりました。そうしましょう。それじゃあ、後は」
そう言って、Dは彼女の顔を手挟んだ。
「花」
鞭のような声がしなった。
「花、君の出番だ。出ておいで」
呼び出されて、あっというまに“花”になりかわる。
「待たせたね。始まるよ」
『おっと~! ここでDの催眠が入りました! メンタル処女の官能小説家、花ちゃんです! 身体はご覧のとおりの仕上がり。なのに、心は処女! まさに男の夢。こんなにも都合の良い生贄がかつてあったでしょうか?』
司会の煽りにのって、オークションはさらに加速した。
「1,000!」
「1,200」
「1,500だ!」
どんどん上がっていく。
花は紙のように白い顔になっていた。
がたがたと震えが止まらない。
「Dさん、どうして? どうしてこんな」
ぽろぽろと大粒の涙をこぼして、花が訴える。
「こんなの、嘘でしょ?」
「ごめんね、花。ある人がね、君をボロボロにしてほしいのだって。だから君には、もう少しだけ、怖い思いをしてもらわなきゃなんだ」
「そんな、どうして?」
奇しくも蝶子と同じ問いを繰り返す花に、Dは黙って、ただ艶然と微笑んだ。
次ページへ続く
読んでくださりありがとうございます。
今日は“生贄の日”。
狂乱のカーニバルのメインイベントは、男どもの欲望の宴なのだ。
ステージ袖にスポットライトがあたり、司会が登場した。
『ジェントルメーン! お待たせしました。ここからは皆様のターンです。さあ、支度は整いました。贄のオークションをはじめましょう! 今日は二セット限定です。どうぞお見逃しなく』
司会が朗々と宣言した。
『まずは第一セットの三名様。おひとり二回まで。300から!』
300万ではない。花の本数だ。300本なら900万円、1,000本で3,000万円。
それが今夜の「生贄」の値段になる。
『NGプレイはマウス・トゥ・マウスのキスとアナルのみ! あとは大体オッケーです』
なんとも適当なインフォメーションに、会場からも声が飛ぶ。
「大体?」
「なんだ、それは」
「雑だな、おい」
笑い声がわき、司会も笑った。
『ええ、すみません。まあ現場対応ということで』
「350!」
「400」
「500だ」
「600!」
男たちは笑いながら競っていく。
蝶子は、半ば忘我のまま、ぼんやりとオークションを眺めていた。
落札した男達が、生贄を輪姦するのだ。
今から、この場で。
まだ悪夢は始まってもいなかった。
ぶるぶるっと身震いした。
「だって、あなたが言ったんだよ。めちゃめちゃにしてって」
悦楽の余韻に潤んだ目がDを見上げる。
「花をって、言ったじゃない。馬鹿……」
声は細く、口調もおぼつかない。
「ああ、そうだったね。ごめん、つい」
持ち上げられた手の甲に、ちゅ、と音を立ててキスが降る。
「でもじゃあ、後はあの娘(こ)にがんばってもらおっか」
こくん──
「それでいいね?」
こくん──
「でも、Dはしちゃだめ」
「え?」
「他の男にさせて。あなたはそれを、笑いながら見てなさい」
「……」
650、680、700、と、男達の欲望が積み上げられていく。
「わかりました。そうしましょう。それじゃあ、後は」
そう言って、Dは彼女の顔を手挟んだ。
「花」
鞭のような声がしなった。
「花、君の出番だ。出ておいで」
呼び出されて、あっというまに“花”になりかわる。
「待たせたね。始まるよ」
『おっと~! ここでDの催眠が入りました! メンタル処女の官能小説家、花ちゃんです! 身体はご覧のとおりの仕上がり。なのに、心は処女! まさに男の夢。こんなにも都合の良い生贄がかつてあったでしょうか?』
司会の煽りにのって、オークションはさらに加速した。
「1,000!」
「1,200」
「1,500だ!」
どんどん上がっていく。
花は紙のように白い顔になっていた。
がたがたと震えが止まらない。
「Dさん、どうして? どうしてこんな」
ぽろぽろと大粒の涙をこぼして、花が訴える。
「こんなの、嘘でしょ?」
「ごめんね、花。ある人がね、君をボロボロにしてほしいのだって。だから君には、もう少しだけ、怖い思いをしてもらわなきゃなんだ」
「そんな、どうして?」
奇しくも蝶子と同じ問いを繰り返す花に、Dは黙って、ただ艶然と微笑んだ。
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