【R18】眩惑の蝶と花──また墓穴を掘りました?!

umi

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第六話 誤算〜取り替えっこは蜜の味

#extra5 エンドロールは後の祭(※)

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気がつくとレストルームに寝かされていた。

身体に力が入らず、身じろぎもままならない。
とくに腰から下はまるで砂の中に埋められたようで、自分の身体とは思えない。

かろうじて首をめぐらせた先に、壁際に座るDの姿が見えた。

「……」

普通、担当ソムリエであっても、プレイ後のレストルームに付き添ったりはしない。
ましてや、今夜は担当ですらなかった。

立ち上がりベッドサイドまできたDは、蝶子の額にかかる後れ毛をそっと整えて、小さく息を吐いた。

「あんな無茶をして」

言われるまでもない。
蝶子とて、あそこまでさせるつもりなどさらさらなかった。

あのとき、Dとはしたことのないプレイを自分としようと持ちかけられて、フェラチオをした。初めて胸まで使った。
そのあと、お返しにとっておきをしてあげる、フロア中が羨望と嫉妬に焦がれるような特別なプレイに興味はないかと誘われた。

他の客などどうでもよかったが、すぐ横で別の女に奉仕する馴染みのソムリエへの当てつけになるなら、それも悪くない。
夫も妻の気を引きたがっていた。
それはそうだろう。目の前で他の男に抱かれる妻にあれだけ夢中に腰を振られては、いくら望んで始めたスワッピングとはいえ、立つ瀬もあるまい。

だから三人で示し合わせて、演技をすることにしたのだ。

シナリオはこうだ。
夫が蝶子にアナルを求める。妻には言えないがやってみたかったという設定だ。蝶子は怖がり、躊躇ってみせる。そこにジョーが得意だからと入ってきて、蝶子は適当に言いくるめられる。

指を少し入れるだけという話だった。

Dに手を握らせるのもジョーの発案だった。
そうして蝶子が盛大に感じるフリをして、あとは夫と蝶子で普通のプレイをと。
そのあと、ジョーが全力で奉仕するからと。

そう約束したのに。

感じるフリなど、不要だった。
それどころではなかった。
気づけば何本もの指で抉られて、あっという間に挿入されていた。
挙げ句に二人同時に前からと後ろからだ。

そんなつもりではなかったのに。

だが、それをこの男の前で認めたくはない。

「一度やってみたかったの。初めては上手い男に限るもの、ちょうどよかったわ」

途中からは、記憶も断片的だ。
ただ、これまで経験したことが全くないレベルのセックスだったことは確実だ。
あれはいけない。人をだめにする。
あんな快楽を知ってしまって、これから普通のプレイで満足できるだろうか。

(だから言ったでしょ? クセになるよって)

ジョーの声が耳元で聞こえた気がした。
あれは、達しながらだったか、その後だったか。
ぶるっと身震いが走った。

Dが大きくため息をついて、蝶子の上掛けを引き上げ直した。
いつのまにか、両肩が剥き出しになっていたようだ。

「顔色がよくないです。もう少し休んでください」

おとなしく目を瞑る。

「ねえ。家まで送って」

そんなことはソムリエの領分ではない。
それどころか、なかなかのタブーだ。

目を開け、Dを見つめた。

ジョーにアナルを開発されながら、握ったDの手に途中から本気ですがっていた。

助けて。何これ。やだむり。こわい。許して。助けて。

だがやがて手指に力も入らなくなり、いつのまにか引き離されていた。
前後から貫かれて以降は頭も目の前も真っ白になり、何がどうなっていたのかわからない。
ただただ嵐のような快楽の時間は、最中には永遠に続くかと思われてあらゆる意地も気力もプライドもむしり取られたが、終わってみれば束の間の甘い夢だったようにも思える。

その一部始終をDが見ていたことの充足感はとてつもない。

いいや、見ていたどころではない。
つないだ手から、すべてが伝わっていただろう。

ならばもう満足だ。
思い出すだけで心が浮き立つ。

自然と頬が緩むのを止められない。

「立てないもの」

ふたりの視線が絡み合った。
蝶子の微笑をどう受け取ったのか、男のまなざしは冷え冷えとしていながら燃え上がる焔のようで、彼の思惑は読み取れない。

Dは蝶子の手をとり、うやうやしく甲に口付けた。

「承知しました。謹んで」

間接照明の光量が絞られ、心地よい仄暗さに包まれる。

「もう少し休んでいてください。少し仕事を片付けてきます」

蝶子は目を閉じ、ふうと息を吐いた。
口元にかすかに浮かぶ微笑みは穏やかでありながら繊細で、その表情は、まるで陽だまりでまどろむ傷ついた仔猫のようだった。





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