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1-2 騎士団員フェルト
30 フェルトと精霊王(フェルト視点)・前
「なにが一体どうなって、こんなことになったわけなの?」
薄い緑色に透ける美しい光の羽が生えた手のひらサイズの少女が、怒り心頭と言ったかんじで俺に問いつめている。
黙っていれば美しいのに、黄緑のきれいな金髪を逆立てて、鬼のような形相だ。
いろいろあって――、本当に……いろいろあって、俺は最近、騎士団を無断でやめることになり、なぜか辺境のダンジョンに住みつくことになった。
あの日、本当に本当にいろいろあったが……いろいろあったわりには、今の生活の待遇はそう悪くない。
まさかの童貞を失う前に、しょ、処女ではないけど……その……後ろを無理矢理奪われるという緊急事態があった。でもそのあと、俺の背後が脅かされる事態には至っていないのだ。
意外にも先輩たちのこともよく対応してくれて、無事に彼らはそれぞれの目指す場所へと旅立っていった。
それにしても、視覚を奪われた状態で体を好きにされる……というのは本当に怖かった。
目が覚めて、目の前にいたのが俺よりも小さな青年で、しかも見たこともないくらいきれいな顔だったのには本当にびっくりした。眠そうな、気だるそうな瞳で見つめられてうっかりドキドキしてしまい、あとで死ぬほど恥ずかしくなった。
貴族の姫たちや精霊で美人は見慣れていると思っていたが、なんていうか……儚げで、あやういかんじがあってなんか月みたいな――……ってこういう説明はあんまり上手じゃないから、やめとこ。
でも、とにかく不思議な美しさだった。
――中身はただの変態だった。
「フェルト、あなた、丸め込まれてんのわかんないの? ほかの騎士たちのことで恩を売れば、あなたみたいなお人よしは裏切らないって思われてんのよ」
なぜか魔力も使えず精霊とも話せないという状況だったが、護衛をすると納得してもらったあと、それも全部治った。
後々聞いてみると、レイ――そのきれいな青年……成人はしているらしいが、そのレイの固有魔法なんだとか。
すごい固有魔法もあるもんだなー。
で、精霊の国から帰って来たシルフィ――風の精霊王、とこうして与えられた俺の部屋で話し合っているところだ。
ちなみに、部屋が与えられ、家具も俺の好きなように作ってくれた。
自分の部屋に〝シャワー〟という不思議な道具やトイレもあり、なんていうか……貴族にでもなった気分だ。
シルフィは、俺がまだ5才くらいのときに森で会った。
一緒に遊んでいるうちに仲よくなり「人間の世界を見てみたい」と言うので、そのあともずっと一緒にいる。『精霊王』だなんてすごいものだと気づいたのは、大分あとのことで、そのことを知っている人間もかなり限られている。
「えー? そうかな。でもほんとに……先輩たちに選択肢ももらえたし、ま、いいやつではないだろうけどさ」
「フェルトにとって悪い人っていうのは一体誰なのよ! あのラムレイにすら、いろいろ言いわけして、悪い人じゃないとか言ってたじゃないの!」
「じゃあ、シルフィは反対なの?」
このダンジョンはレイが管理していて、モンスター1体1体から、環境、運営まで、ほぼすべてを1人でやってるらしい。
まるで大商人のような効率的な方法と突飛なアイデアで、てきぱきと仕事をしているので、長命の種族なのかな? と思って聞いてみたら、18才なんだって。
すごく――びっくりした。
レイのことは、本当にびっくりすることばっかりだ。
「そう言われると……」
むぅ……と言いよどむシルフィもわかっているのだ。
たしかにこのダンジョンは、冒険者たちにひどい扱いをしているらしいし、というか! 俺もひどい扱いを受けて! かなり思うところはあるけど。
でも、ダンジョンっていうものは基本、命をかけて挑むもので、なにが起きても自己責任だ。
無理なら引き返す……それが当たり前。引き際を誤った人間の末路は、普通に――死だ。
だから、レイがダンジョン側である以上、彼がやっていることは俺らがモンスターに襲われたら戦う、襲われないように対策する、という生存本能だし、間違ってはいない。
いや、――間違ってることも……してるけど!!
まあ、でも……それに実は、国を離れる(騎士団をやめる)のには、かなりいいタイミングだった。
シルフィももごもごと小さな声で言う。
「うーん、あの女の近くにずっといることになるよりは――」
そうなのだ。
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