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第四話 ~夏歩の誕生日~
02 (秋守)
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俺を真ん中にして、三人で帰宅の道を歩く。
通い慣れた道だけど、今日はちょっと緊張しているんだ。どうしてって、初対面の二人の間を取り持たなければいけないからね。
「冬夜さん、紹介しますね。こっちは春平です」
「秋の親友なんだ。よろしくな!」
「あ、あぁ。よろしく」
十センチほど背が低い春平は、このままだと俺の陰に隠れていると思ったんだろう。身体ごとぴょこっと覗かせて、初めましての笑顔を見せる。あぁ、良かった。いつもと変わらない春平でいてくれた。
実は、この二人を接触させることに不安があったんだ。以前春平は、夏歩さんと冬夜さんの後をつけたらしい。その時に冬夜さんのことを『チャラい男』と称していたし、変に敵視したらどうしようかと心配していた。だけど、良い意味で裏切ってくれて良かったよ。
「春平。こちらは……」
「冬夜って言ったよな。好きなゲームは何かあるのかっ?」
変わらない人懐っこさを見せてくれて安心した。自分から積極的に話しかけに行く姿勢は尊敬する。俺が度々口にした彼の名前を、既に把握しているのも素晴らしい。きっと『秋の友達は、オレの友達』との考えなんだろうな。
だけどさ、共通の知り合いである俺から冬夜さんを紹介させてくれよ! 言いかけたのを遮られて、今更紹介出来なくなったじゃないか。
思わず小さな溜め息をつくと、冬夜さんはその意図を汲み取ってくれたらしい。プッと吹き出しながらも、ちゃんと先ほどの質問に答えている。
「ゲームなら、兄ちゃんの影響で結構やるよ。最近ならライストをやってるかな」
「マジで!」
ライストこと『ライフストーリー』は、春平が特にハマっているゲームなんだ。謎解きが含まれたロールプレイングゲームで、俺も謎解きとレベル上げに何度駆り出されたか。
「じゃあ、主人公の正体は知ってる? 迷路のステージはクリアした? 幻のアイテムは手に入れた?」
「主人公が魔王だったのには驚いたよ。迷路のステージはまだ辿り着けてなくて、アイテムを手に入れて新しく雷の魔法を覚えたよ」
「そっかー! かなりやり込んでるから、何かあったらオレに聞いてくれよ」
会ってまだ数分しか経っていないのに、共通のゲームの話で既に打ち解けているとは流石だな。
さっきも思ったけど、自分から積極的に話しかけられるところを尊敬しているんだ。もしも俺だったら、共通のゲームの話題そのものを見つけるのに何日かかるやら。そんな風に考えたのも束の間、
「おっ、秋の家が見えてきたぞー!」
春平は一人で駆けて行ってしまった。……お前の家でもないのに先導するなよ。
走って追いかける必要もなく呆れることしか出来ないでいると、俺を見上げている冬夜さんと目が合う。
「あんなに無邪気に近寄って来てくれたのは、春平が初めてだよ。おれ、学生時代は嫌われていたし」
微笑みながらも、どこか遠くを見ているような黒い瞳。
以前、中学時代の冬夜さんのことを知っているクラスメイトが、彼は学年一の嫌われ者だったと言っていた。
あの話を聞いた時は動揺したけれど、今なら断言出来る。冬夜さんはそんな人じゃない。
「春平は誰とでも仲良く出来るんですよ。あいつのそういうところを尊敬してます。俺の話を遮って、冬夜さんの紹介をさせてくれなかったのは根に持ってますけど」
本音を冗談めかして口にすると、お腹を抱えながら声をあげて笑う。人の噂に流されずに、自分で確かめたからこそ冬夜さんのこんな一面を知れたんだよね。
「あいつって、自由奔放な子犬みたいだよな。飼い主は秋兄か?」
「躾をしているんですが、なかなか言うことを聞いてくれないんですよね」
徐々に近付いてきた家の前で、人懐っこい子犬が尻尾の代わりに両手を一生懸命に振っている。そんなに合図してもらわなくたって、飼い主は自分の家を間違ったりしないよ。
通い慣れた道だけど、今日はちょっと緊張しているんだ。どうしてって、初対面の二人の間を取り持たなければいけないからね。
「冬夜さん、紹介しますね。こっちは春平です」
「秋の親友なんだ。よろしくな!」
「あ、あぁ。よろしく」
十センチほど背が低い春平は、このままだと俺の陰に隠れていると思ったんだろう。身体ごとぴょこっと覗かせて、初めましての笑顔を見せる。あぁ、良かった。いつもと変わらない春平でいてくれた。
実は、この二人を接触させることに不安があったんだ。以前春平は、夏歩さんと冬夜さんの後をつけたらしい。その時に冬夜さんのことを『チャラい男』と称していたし、変に敵視したらどうしようかと心配していた。だけど、良い意味で裏切ってくれて良かったよ。
「春平。こちらは……」
「冬夜って言ったよな。好きなゲームは何かあるのかっ?」
変わらない人懐っこさを見せてくれて安心した。自分から積極的に話しかけに行く姿勢は尊敬する。俺が度々口にした彼の名前を、既に把握しているのも素晴らしい。きっと『秋の友達は、オレの友達』との考えなんだろうな。
だけどさ、共通の知り合いである俺から冬夜さんを紹介させてくれよ! 言いかけたのを遮られて、今更紹介出来なくなったじゃないか。
思わず小さな溜め息をつくと、冬夜さんはその意図を汲み取ってくれたらしい。プッと吹き出しながらも、ちゃんと先ほどの質問に答えている。
「ゲームなら、兄ちゃんの影響で結構やるよ。最近ならライストをやってるかな」
「マジで!」
ライストこと『ライフストーリー』は、春平が特にハマっているゲームなんだ。謎解きが含まれたロールプレイングゲームで、俺も謎解きとレベル上げに何度駆り出されたか。
「じゃあ、主人公の正体は知ってる? 迷路のステージはクリアした? 幻のアイテムは手に入れた?」
「主人公が魔王だったのには驚いたよ。迷路のステージはまだ辿り着けてなくて、アイテムを手に入れて新しく雷の魔法を覚えたよ」
「そっかー! かなりやり込んでるから、何かあったらオレに聞いてくれよ」
会ってまだ数分しか経っていないのに、共通のゲームの話で既に打ち解けているとは流石だな。
さっきも思ったけど、自分から積極的に話しかけられるところを尊敬しているんだ。もしも俺だったら、共通のゲームの話題そのものを見つけるのに何日かかるやら。そんな風に考えたのも束の間、
「おっ、秋の家が見えてきたぞー!」
春平は一人で駆けて行ってしまった。……お前の家でもないのに先導するなよ。
走って追いかける必要もなく呆れることしか出来ないでいると、俺を見上げている冬夜さんと目が合う。
「あんなに無邪気に近寄って来てくれたのは、春平が初めてだよ。おれ、学生時代は嫌われていたし」
微笑みながらも、どこか遠くを見ているような黒い瞳。
以前、中学時代の冬夜さんのことを知っているクラスメイトが、彼は学年一の嫌われ者だったと言っていた。
あの話を聞いた時は動揺したけれど、今なら断言出来る。冬夜さんはそんな人じゃない。
「春平は誰とでも仲良く出来るんですよ。あいつのそういうところを尊敬してます。俺の話を遮って、冬夜さんの紹介をさせてくれなかったのは根に持ってますけど」
本音を冗談めかして口にすると、お腹を抱えながら声をあげて笑う。人の噂に流されずに、自分で確かめたからこそ冬夜さんのこんな一面を知れたんだよね。
「あいつって、自由奔放な子犬みたいだよな。飼い主は秋兄か?」
「躾をしているんですが、なかなか言うことを聞いてくれないんですよね」
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