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想い
しおりを挟む俺はビールを三分の一くらい飲んで、自分を一旦落ち着かせた。
そして、敢えてゆっくりとした口調で話を始めた。
「根本、俺の話っていうのは…
いや、お前に言っておきたいことがあるんだけど…
実は、お前の事が好きなんだ。」
「… えっ…」
根本は驚いたというより、俺の言葉にピンとこない感じだった。
「もっと早くに言うべきだったんだけど、俺ってずっと彼女もいなかったし、全然恋愛もした事なかったから、自分で自分の気持ちになかなか気付けなくて ‥
でも、今日お前からの話を聞いてようやく気づいたんだ。
俺は前からお前の事が好きだったって。」
「愁ちゃん… ワタシ男なんだよ
ワタシなんかよりフツーの女の子と付き合うのが自然な事なのよ。
さっきも言ったけど、愁ちゃんは優しいから、ワタシに同情してそう言ってくれてるんだよ。」
「違うよ。お前は女なんだよ
出会ったときから女だったんだよ。
子供のときも今も、俺は鈍いから気付かなかったけど、ずっとお前は女なんだ。
とにかく俺はお前が好きなんだ。」
「愁ちゃん…」
「根本… 俺の気持ちは伝えたよ。
お前の答えを聞かせてくれよ。」
人生初の告白を終え、少し安堵した。
後は根本の言葉を待つだけだ。 俺は残りのビールを飲み干した。
根本はというと、涙をぽろぽろとこぼし、顔を両手で覆った。
それからしばらく肩を震わせながら泣いていたが、泣いて少し落ち着いたのか、店内の喧騒にかき消されそうな小さな声で言った。
「好き… 大好き…
ワタシも愁ちゃんの事が…
出会ったときから… ずっと」
「ありがとう。」
俺は根本の言葉にホッとして言った。
こうして、俺の人生初の告白は上手くいき、人生初の彼女を手に入れた。
二十歳にして…
根本が戸籍上男だって事は、これから付き合っていく上で決して小さな事ではなくなるだろう。
けど、それも承知の上で告白したんだ。
後悔なんかしない。
一時間後、俺達は料理をほとんど残したまま、店を後にした。
外に出て、しばらく無言で歩いていたが、俺は思い切って、根本の手を取った。
初めて手を繋いだ感想は…
柔らかだった‥
柔らかい手をしていた。
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