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冷たい手
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その日も久美子は、美香を見舞うために病院を訪れていた。
「ミカちゃん
ほら、見て。
早生みかんよ。」
久美子は袋から青々とした小さなみかんを出し、美香に手渡そうとした。
しかし、美香は、ボーッとしたまま、何の関心も示さず、みかんも受け取らなかった。
そして、ヨダレを垂らし、また目の焦点が合わなくなってしまった。
久美子は、涙ぐみながら、手にしていたハンカチで美香の口元を拭いた。
そのとき、医者が看護士一人と病室に入ってきた。
久美子は、慌てて立ち上がり、頭を下げた。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
医師は、久美子に挨拶すると
「ご家族の方ですか?」
と、質問した。
「あ、いえ…
彼女が働いていた会社の者です。
彼女は家族がいませんので、ワタシがその代わりを務めさせてもらっています。」
「あー、そうでしたね。
患者さんも気の毒なことです。
ご家族が会いに来ないなんて。」
医師は、信じられないといった面持ちで首を傾げた。
「あの、先生
彼女の状態はどんな感じなんでしょうか。」
「はい。
今のところ安定しています。
命にかかわるような事はもうありません。」
「そうですか…
よかった…」
「ただ、薬物により脳が甚大なダメージを受けております。
こちらに関しては脳に酸素や血液が送り込まれなくなった…
いわゆる脳細胞が死滅してしまった部分については回復の見込みはありません。」
医師は、少し気の毒そうな言い方であったが、概ね淡々と久美子に語った。
「ミカちゃん
ほら、見て。
早生みかんよ。」
久美子は袋から青々とした小さなみかんを出し、美香に手渡そうとした。
しかし、美香は、ボーッとしたまま、何の関心も示さず、みかんも受け取らなかった。
そして、ヨダレを垂らし、また目の焦点が合わなくなってしまった。
久美子は、涙ぐみながら、手にしていたハンカチで美香の口元を拭いた。
そのとき、医者が看護士一人と病室に入ってきた。
久美子は、慌てて立ち上がり、頭を下げた。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
医師は、久美子に挨拶すると
「ご家族の方ですか?」
と、質問した。
「あ、いえ…
彼女が働いていた会社の者です。
彼女は家族がいませんので、ワタシがその代わりを務めさせてもらっています。」
「あー、そうでしたね。
患者さんも気の毒なことです。
ご家族が会いに来ないなんて。」
医師は、信じられないといった面持ちで首を傾げた。
「あの、先生
彼女の状態はどんな感じなんでしょうか。」
「はい。
今のところ安定しています。
命にかかわるような事はもうありません。」
「そうですか…
よかった…」
「ただ、薬物により脳が甚大なダメージを受けております。
こちらに関しては脳に酸素や血液が送り込まれなくなった…
いわゆる脳細胞が死滅してしまった部分については回復の見込みはありません。」
医師は、少し気の毒そうな言い方であったが、概ね淡々と久美子に語った。
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