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闘魂
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「えっと、何君だっけ?」
「桐生です。」
「桐生君さあ。
何度テストを受けてもらっても結果は同じだから。
他に行ってもらった方がいいんじゃないかな。
ウチみたいなメジャー系の団体は無理だと思うけど、インディーズ系なら、ひょっとしたら入れるかもしれないよ。」
ジャージ姿の磯崎は、少しだけ申し訳なさそうな口調で珀に言った。
「わかりました。
ありがとうございます。」
珀は頭を下げて道場を後にした。
「磯崎ちゃん、あの子また来たんだ。」
奥で二人のやり取りを聞いていた山﨑宏太が声をかけると、磯崎は振り返り、頷いてみせた。
「そうなんすよ。
何回も来るもんですから、こっちも困っちゃって。」
「今どきの若者にしては根性あるじゃねえか。」
「まあ、それはそうなんすよ。
毎日トレーニングしてるみたいですし、なんて言ってもルックスがいいじゃないですか。
売り方さえ間違えなければめちゃくちゃ人気が出ますよ。」
「だったら入れてやればいいじゃん。」
「えっ
磯崎さん…
ウチでやっていけるとでも?」
「いや、思わんな。」
「でしょ?
あの体の小ささは致命的です。
女子の中に入っても、今の時代だったら小さい方に入るんじゃないですか。
可哀想だけど、ウチでやるには無理があります。」
「そうだなあ。
最低限必要な体ってもんがあるからなあ。
まあ、逸材だとは思うけど、何かあった後じゃ取り返しのつかない事になるしな。」
「ですね…
まあ、本人にも言いましたけどインディーズ系の団体で頑張ってもらえればと思いますよ。」
磯崎は、自分に言い聞かせるように言って頷いた。
不合格を言い渡された珀は、肩を落として駅に向かって歩いていた。
高校を中退し、プロレスラーになる事を夢見て単身上京。
朝から深夜までバイトを掛け持ちしながら生活費を稼ぎ、その合間にトレーニングを重ねてきた。
体力的な自信はついたが、やはり小柄であるという事実は如何ともし難く…
憧れの新東京プロレスに入る事は叶わなかったのだ。
これで完全に道が断たれてしまい、明日から何を目的に生きていいかわからない…
珀は、大きなため息をついた。
そのときである
「あの、すいません」
後ろから声をかけられたことに気付いた珀は、それが自分に対してなのかがわからず、一度左を見て、続いて右の方から振り返った。
背後に年配の女性が立っており、自分の方を見つめていた。
この女性が声をかけてきたのはまちがいなかった。
「突然お声をかけてしまいすみません。」
年配だが身なりもおしゃれで品のある女性は、少し笑みを浮かべて珀に、続けて話しかけてきた。
「桐生です。」
「桐生君さあ。
何度テストを受けてもらっても結果は同じだから。
他に行ってもらった方がいいんじゃないかな。
ウチみたいなメジャー系の団体は無理だと思うけど、インディーズ系なら、ひょっとしたら入れるかもしれないよ。」
ジャージ姿の磯崎は、少しだけ申し訳なさそうな口調で珀に言った。
「わかりました。
ありがとうございます。」
珀は頭を下げて道場を後にした。
「磯崎ちゃん、あの子また来たんだ。」
奥で二人のやり取りを聞いていた山﨑宏太が声をかけると、磯崎は振り返り、頷いてみせた。
「そうなんすよ。
何回も来るもんですから、こっちも困っちゃって。」
「今どきの若者にしては根性あるじゃねえか。」
「まあ、それはそうなんすよ。
毎日トレーニングしてるみたいですし、なんて言ってもルックスがいいじゃないですか。
売り方さえ間違えなければめちゃくちゃ人気が出ますよ。」
「だったら入れてやればいいじゃん。」
「えっ
磯崎さん…
ウチでやっていけるとでも?」
「いや、思わんな。」
「でしょ?
あの体の小ささは致命的です。
女子の中に入っても、今の時代だったら小さい方に入るんじゃないですか。
可哀想だけど、ウチでやるには無理があります。」
「そうだなあ。
最低限必要な体ってもんがあるからなあ。
まあ、逸材だとは思うけど、何かあった後じゃ取り返しのつかない事になるしな。」
「ですね…
まあ、本人にも言いましたけどインディーズ系の団体で頑張ってもらえればと思いますよ。」
磯崎は、自分に言い聞かせるように言って頷いた。
不合格を言い渡された珀は、肩を落として駅に向かって歩いていた。
高校を中退し、プロレスラーになる事を夢見て単身上京。
朝から深夜までバイトを掛け持ちしながら生活費を稼ぎ、その合間にトレーニングを重ねてきた。
体力的な自信はついたが、やはり小柄であるという事実は如何ともし難く…
憧れの新東京プロレスに入る事は叶わなかったのだ。
これで完全に道が断たれてしまい、明日から何を目的に生きていいかわからない…
珀は、大きなため息をついた。
そのときである
「あの、すいません」
後ろから声をかけられたことに気付いた珀は、それが自分に対してなのかがわからず、一度左を見て、続いて右の方から振り返った。
背後に年配の女性が立っており、自分の方を見つめていた。
この女性が声をかけてきたのはまちがいなかった。
「突然お声をかけてしまいすみません。」
年配だが身なりもおしゃれで品のある女性は、少し笑みを浮かべて珀に、続けて話しかけてきた。
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