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フロイライン

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性転換手術

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「サオリ、ご飯出来たわよ。」


「いつもありがとうございます。溝口さん」


「これが私の仕事だからねえ。」


道場三階の食堂で、サオリは溝口が作った朝食を、手を合わせてから口に運んだ。

溝口は、向かい側に座り、サオリが自分が作った料理を食べるのをボーっと見ながら、呟いた。

「それにしても、サオリは美人だよね。」


「えっ、ワタシ?

そんな事ないです」

サオリは慌てて否定すると、肩を竦めて味噌汁を口にした。


「ミカもサオリも、最近のニューハーフってレベル高いよね。

今度入ってくるのはどうなんだろうね。」


「ワタシ、アキって人はチラッとですけど、面接に来てる時見たんです。

めっちゃ綺麗でしたよ。」


「えっ、そうなの?
だったら安心だね。

しかし、それでもまだ三人目だよ。
なかなか増えないねえ。
私も寮母として雇われたのはいいけど、ヒマで仕方ないし。」


「久美子社長が一人でスカウトしてらっしゃるんで…」


「まあ、慌てても仕方ないし、久美子さんの目利きを信頼して、待つしかないね。」


「そうですね。」


「その久美子さんが、今日帰国だね。」


「はい。
ミカちゃんと一緒に帰ってきます。

でも、ミカちゃん大丈夫かなあ。
術後がかなり大変だったみたいで、高熱出したって言ってたし…」


「痛いらしいね。性転換手術って。

女の子になりたいって気持ちはわかるけど、そんな痛い思いしてまで、アソコを取りたいのかねえ。」


「ワタシは取るつもりはないんですけど…

自分の体に男性器が付いてるのが許せないって人がすごく多いですからね。
性同一性障害って。」
  

「へえ、そんなもんなのかい。
益々わかんないね。」


「でも、人の個性が色々あるように、性同一性障害もいろんなパターンがあるんですよ。

ミカちゃんは、ワタシとよく似たタイプで、そこまで自分の男性器に嫌悪感は持ってなかったと思うんですけど…手術しちゃいましたね。」   


「アンタはタマだけ取ったんだよね?」


「はい。
ここに来て、すぐに。」


「タマだけなら簡単なのかね?」


「そう簡単ではないですけど、性転換手術の方がその何倍も大変だし、痛いし、難しいです。」

サオリがそう言うと、溝口は、顔を顰めて首を横に振った。





そして、夕方…



久美子がミカを連れて帰ってきた。



「ただいま」


山本とマンツーマンで練習していたサオリは、慌てて二人に駆け寄ってきた。


「お帰りなさい。」


「サオリちゃん、長く留守番させて申し訳なかったわね。」


サオリに声をかける久美子の後ろにいたミカも、弱々しい声で言った。


「ただいま…サオリ…」


と。
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