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just one man
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夜になると、激しく愛し合うミカとサオリだったが、昼間の練習では勿論、手を抜く事なく、厳しいメニューをこなした。
勿論、それ以外の選手たちも必死になって頑張っていた。額に汗をかきながら。
ニューハーフプロレスという異色のテーマを掲げるNPWだったが、「強く美しく」をモットーに、第一人者としてのプライドを持って、ここまで団体を大きくしてきた。
「美しく」は、それぞれの努力の問題だが、「強く」の部分は、コーチの山本のおかげであると言っても過言ではなかった。
元々、男子プロレスを経験した山本が作った練習メニューは、合理的で理論的であった。
「はい、今日はこれまで。
みんな、お疲れ。」
山本は、全員に声をかけると、そのまま上の事務所に向かっていった。
久美子が来ていたからだ。
「お疲れ様、山本さん。」
「社長、お疲れ様です。」
「いつもありがとうございます。あの子達の面倒を見てくれて。」
「あ、いえ。
どうされたんですか?」
「次の興行のことで、新東京プロレスの斉藤さんと会ったのよ。
そのとき、あなたの話題が出てね。」
「私のですか?」
「山本は出来たらウチでトレーナーをやってもらいたかったって。
斉藤さんが言ってたわよ。」
「それは、もう…」
「ワタシが誘っちゃったからだもんね。
今から考えたら悪い事をしたなって。
そう思ってるの。」
「社長、それは関係ないですよ。
私が決めた事です。
あの時の私は、妻が亡くなって、何に対するにもやる気を失くしていました。
でも、いつまでもこんな事をしてたらアイツに怒られるなって思い始めた時に、社長に声をかけていただいたんです。
仕事も人生も、全てはタイミングが大事です。
社長が私に声をかけていただいたタイミングが、私にとってはすごく良いタイミングだったわけです。
だから、私はここでの仕事に何の不満もありませんし、社長には感謝しています。」
「そう言ってもらえると、すごく有難いんだけど。
これからもよろしくお願いしますね。」
「こちらこそ。
よろしくお願いします。」
久美子と山本は、その後も少し会話を交わしていたが…
「では、そろそろ失礼します。」
山本は、時計を見て立ち上がり、久美子に一礼をして退出した。
男子のメジャー団体にいて、バリバリ活躍していたが、ケガで引退。
その後、トレーナーとしてプロレスに携わろうとしていたときに、妻が病気になり、その看病のため、プロレスをやめていた山本だったが、彼の献身的な看病の甲斐もなく、妻は亡くなり、生きる意思を失くしていた。
そんな時に、声をかけたのが久美子だった。
一期一会…
そんな言葉を胸に、山本は駅への道を歩いていた。
勿論、それ以外の選手たちも必死になって頑張っていた。額に汗をかきながら。
ニューハーフプロレスという異色のテーマを掲げるNPWだったが、「強く美しく」をモットーに、第一人者としてのプライドを持って、ここまで団体を大きくしてきた。
「美しく」は、それぞれの努力の問題だが、「強く」の部分は、コーチの山本のおかげであると言っても過言ではなかった。
元々、男子プロレスを経験した山本が作った練習メニューは、合理的で理論的であった。
「はい、今日はこれまで。
みんな、お疲れ。」
山本は、全員に声をかけると、そのまま上の事務所に向かっていった。
久美子が来ていたからだ。
「お疲れ様、山本さん。」
「社長、お疲れ様です。」
「いつもありがとうございます。あの子達の面倒を見てくれて。」
「あ、いえ。
どうされたんですか?」
「次の興行のことで、新東京プロレスの斉藤さんと会ったのよ。
そのとき、あなたの話題が出てね。」
「私のですか?」
「山本は出来たらウチでトレーナーをやってもらいたかったって。
斉藤さんが言ってたわよ。」
「それは、もう…」
「ワタシが誘っちゃったからだもんね。
今から考えたら悪い事をしたなって。
そう思ってるの。」
「社長、それは関係ないですよ。
私が決めた事です。
あの時の私は、妻が亡くなって、何に対するにもやる気を失くしていました。
でも、いつまでもこんな事をしてたらアイツに怒られるなって思い始めた時に、社長に声をかけていただいたんです。
仕事も人生も、全てはタイミングが大事です。
社長が私に声をかけていただいたタイミングが、私にとってはすごく良いタイミングだったわけです。
だから、私はここでの仕事に何の不満もありませんし、社長には感謝しています。」
「そう言ってもらえると、すごく有難いんだけど。
これからもよろしくお願いしますね。」
「こちらこそ。
よろしくお願いします。」
久美子と山本は、その後も少し会話を交わしていたが…
「では、そろそろ失礼します。」
山本は、時計を見て立ち上がり、久美子に一礼をして退出した。
男子のメジャー団体にいて、バリバリ活躍していたが、ケガで引退。
その後、トレーナーとしてプロレスに携わろうとしていたときに、妻が病気になり、その看病のため、プロレスをやめていた山本だったが、彼の献身的な看病の甲斐もなく、妻は亡くなり、生きる意思を失くしていた。
そんな時に、声をかけたのが久美子だった。
一期一会…
そんな言葉を胸に、山本は駅への道を歩いていた。
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