N -Revolution

フロイライン

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アンライバルド

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「熊谷のヤツ知ってっか?」


先輩レスラー十和田武尊が食事中にエミリに声をかけてきた。


「クマがどうかしたんすか?」


「ウチ辞めて、どこに行くのかと思ってたら、ENWだってよ。」


「ENW?

何ですか、それ?」


「ホラ、たまに地方で前座で出てきてる団体あんだろ?

オカマの。」


「オカマ…


えっ、あの団体ですか?」


「オカマっていっても、NPWの方じゃねえぞ。

あっちは可愛いのを集めてる。」


「あの、クマがその、ENWに入ったってわけですか?」


「そうだ。

あー見えても、アイツ、心は女だったんだとよ。」


「…」


「お前、クマに何かされなかったか?」


「いえ、俺は…何も」


「お前、可愛い顔してっから、アイツにケツでも狙われたんじゃないかってな。

あの力で押さえつけられたら、抵抗出来んだろ。」


「はあ。」



エミリは、衝撃を受けていた。

まさか、あの熊谷が、自分と同じだったとは…

心が女性…

しかも、熊谷は、カミングアウトしてENWに移籍した。
いや、本当の正体を必死に隠しながら生きている自分に比べて、熊谷は真正直に自分と向き合い、進むべき道を選んだ。


エミリはガクッと肩を落とし、箸を置き、食事をやめてしまった。


そして、午後からの練習に臨むため、道場に降りてくると、リングの周りに、見知らぬ中年女性と、これまた見知らぬ中年男性がいて、この団体の社長、久山大介と談笑していた。


エミリは会釈をしてその前を通り過ぎようとしたが、久山が呼び止めた。


「市橋」


「はい。」



「ちょっといいか?」

久山が手招きしているので、仕方なく近づいていくと、中年女性の方と目が合った。

彼女は、そんなエミリに、ニコッと笑って会釈した。
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