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堕天使
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「こんにちは、美郷クン。」
「こんにちは…」
ミサトは、か細い声で向かい側に座る男性に頭を下げた。
それは、ミサトが中学校に上がる寸前の春休みの事だった。
ミサトの母静香は、以前から交際していた竹下亘という男性と結婚することを決め、初めてミサトに亘を紹介した。
「この子ね、男の子のくせに昔から大人しくて、全然元気がないのよ。
ねえ、美郷
竹下さんは大学のレスリング部の監督をされててね。
根っからのスポーツマンなのよ。
あなたも竹下さんに鍛えてもらうといいわ。」
静香は、そう言って笑った。
普段、自分といる時と比べて饒舌に話す母。
浮かれているのか、亘に気を遣っているのか…
そんな母の姿を見たくなかった。
しかし、ミサトが幼い時に父と離婚し、女手一つで自分を育ててくれた母の苦労を見てきたこともあり、ミサトは、母に幸せになって欲しいと願っていたのだが…
実際は、それを担うのが亘だったとわかり、落胆するのと同時に、納得もしたのだった。
その年の夏、亘と母は再婚し、ミサトは竹下美郷に姓が変わった。
亘は、血の繋がりのない美郷を我が子同然に可愛がってくれ、その点については、静香もミサトも安心した。
だが、バリバリの体育会系の亘と、内向的なミサトでは根本的に合うはずもなく、その辺りのギャップを埋めるのには相当な苦労があった。
ミサトが内向的な理由は、自身の心の問題で、誰にも言えない悩みを抱えていたからだった。
物心ついたときから、ミサトは自分のことを女の子だと思い、それは中学生になった今も変わらなかった。
いわゆる性同一性障害というもので、彼女は大いに悩んでいた。
しかし、ミサトはシングルマザーで苦労する静香に、その正直な心のうちを打ち明けられず、ずっと悩みを内に秘めたまま生きてきた。
勿論、再婚相手の亘にもそんな話は噯にも出せなかった。
だが、亘は、そんなミサトの心の悩みをわかっているかのように、優しく接してくれた。
それどころか、ミサトが好きな女子プロレスの試合を一緒に見に行ってくれたり、父親以上の優しさを彼女に向けてくれたのだ。
ミサトも次第に亘に心を開いていき、いつしか、本当の親子以上に、遠慮のない関係になっていった。
「こんにちは…」
ミサトは、か細い声で向かい側に座る男性に頭を下げた。
それは、ミサトが中学校に上がる寸前の春休みの事だった。
ミサトの母静香は、以前から交際していた竹下亘という男性と結婚することを決め、初めてミサトに亘を紹介した。
「この子ね、男の子のくせに昔から大人しくて、全然元気がないのよ。
ねえ、美郷
竹下さんは大学のレスリング部の監督をされててね。
根っからのスポーツマンなのよ。
あなたも竹下さんに鍛えてもらうといいわ。」
静香は、そう言って笑った。
普段、自分といる時と比べて饒舌に話す母。
浮かれているのか、亘に気を遣っているのか…
そんな母の姿を見たくなかった。
しかし、ミサトが幼い時に父と離婚し、女手一つで自分を育ててくれた母の苦労を見てきたこともあり、ミサトは、母に幸せになって欲しいと願っていたのだが…
実際は、それを担うのが亘だったとわかり、落胆するのと同時に、納得もしたのだった。
その年の夏、亘と母は再婚し、ミサトは竹下美郷に姓が変わった。
亘は、血の繋がりのない美郷を我が子同然に可愛がってくれ、その点については、静香もミサトも安心した。
だが、バリバリの体育会系の亘と、内向的なミサトでは根本的に合うはずもなく、その辺りのギャップを埋めるのには相当な苦労があった。
ミサトが内向的な理由は、自身の心の問題で、誰にも言えない悩みを抱えていたからだった。
物心ついたときから、ミサトは自分のことを女の子だと思い、それは中学生になった今も変わらなかった。
いわゆる性同一性障害というもので、彼女は大いに悩んでいた。
しかし、ミサトはシングルマザーで苦労する静香に、その正直な心のうちを打ち明けられず、ずっと悩みを内に秘めたまま生きてきた。
勿論、再婚相手の亘にもそんな話は噯にも出せなかった。
だが、亘は、そんなミサトの心の悩みをわかっているかのように、優しく接してくれた。
それどころか、ミサトが好きな女子プロレスの試合を一緒に見に行ってくれたり、父親以上の優しさを彼女に向けてくれたのだ。
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