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愛情
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「ホントに珀なの?」
「…うん。」
母の早紀の言葉に、美月は恥ずかしそうに俯いた。
「早く、中にお入り。
ご飯まだ食べてないんでしょ?」
早紀に促され、美月は玄関で靴を脱ぎ、久しぶりの実家に足を踏み入れた。
「あの…
お父さんは?」
「まだ仕事から帰ってないわ。
もう少ししたら帰ってくるわよ。」
「そう…」
「珀
心配しなくても大丈夫よ。
アンタから連絡来たじゃない?
それからすぐにお父さんに話したのよ。」
「えっ、そうなの?…」
「うん。
びっくりはしてたけど、怒ってはなかったから。
多分、私と同じで、前からわかってたんだと思うわ。
珀がこうなるって事をね。」
「…」
母にそう言われても、美月は今一つ信じる事ができなかった。
幼少期から、美月が女の子っぽい振る舞いをするのを極端に嫌がり、レスリングを習わせたのも父であった。
美月も、そのような空気をすぐに感じ取り、なるべく父の前では本当の自分を出さないように努力した。
レスリングの面白さにハマり、その後、プロレスに興味が出てきた美月だったが、いくら体が鍛えられ、精神力も養われても、自分の性に対する違和感を払拭する事は出来なかった。
そう…
人というものは、簡単には変われないのだ。
つまり、自分がもつ、体と性の違和感に対し、決して認めようとしなかった父についても同じ事が言える。
いくら時代が変わっただの、多様化だの言っても、人は変われないし、変わらない。
父は今も自分の事を認めてくれはしないだろう。
それを否定するわけではない。
人間という生き物は、そう簡単に切り替えられないものなのだから。
美月は、考えれば考えるほど憂鬱になった。
「お腹すいたでしょ?
先に食べる?」
「あ、大丈夫。
お父さんが帰ってきてからで。」
実のところ、食欲などあるはずがなく、緊張と気の重さのせいで、吐き気すらする美月であった。
「ねえ、珀
一つ聞いていい?」
「えっ…
何?」
早紀は、一瞬迷いのある表情になったが、意を決して、言葉を続けた。
「その胸なんだけど…」
「えっ…」
「何か詰めてるの?」
早紀がそう言ったのも無理のない事だった。
どれだけ隠そうとしても無駄なくらいの巨乳が、美月の胸には備わっていたのだった。
「あ、いや、これは…
何て言ったらいいんだろ…
女性ホルモンの注射を定期的に打ってて、そのせいで胸が膨らんできたみたい。
ワタシは、他の人よりもかなり大きくて…」
「そうなの…」
早紀は、感心した様子で、美月の胸を見つめた。
その視線に耐えられず、少し体を横に向けてしまう美月だった。
「…うん。」
母の早紀の言葉に、美月は恥ずかしそうに俯いた。
「早く、中にお入り。
ご飯まだ食べてないんでしょ?」
早紀に促され、美月は玄関で靴を脱ぎ、久しぶりの実家に足を踏み入れた。
「あの…
お父さんは?」
「まだ仕事から帰ってないわ。
もう少ししたら帰ってくるわよ。」
「そう…」
「珀
心配しなくても大丈夫よ。
アンタから連絡来たじゃない?
それからすぐにお父さんに話したのよ。」
「えっ、そうなの?…」
「うん。
びっくりはしてたけど、怒ってはなかったから。
多分、私と同じで、前からわかってたんだと思うわ。
珀がこうなるって事をね。」
「…」
母にそう言われても、美月は今一つ信じる事ができなかった。
幼少期から、美月が女の子っぽい振る舞いをするのを極端に嫌がり、レスリングを習わせたのも父であった。
美月も、そのような空気をすぐに感じ取り、なるべく父の前では本当の自分を出さないように努力した。
レスリングの面白さにハマり、その後、プロレスに興味が出てきた美月だったが、いくら体が鍛えられ、精神力も養われても、自分の性に対する違和感を払拭する事は出来なかった。
そう…
人というものは、簡単には変われないのだ。
つまり、自分がもつ、体と性の違和感に対し、決して認めようとしなかった父についても同じ事が言える。
いくら時代が変わっただの、多様化だの言っても、人は変われないし、変わらない。
父は今も自分の事を認めてくれはしないだろう。
それを否定するわけではない。
人間という生き物は、そう簡単に切り替えられないものなのだから。
美月は、考えれば考えるほど憂鬱になった。
「お腹すいたでしょ?
先に食べる?」
「あ、大丈夫。
お父さんが帰ってきてからで。」
実のところ、食欲などあるはずがなく、緊張と気の重さのせいで、吐き気すらする美月であった。
「ねえ、珀
一つ聞いていい?」
「えっ…
何?」
早紀は、一瞬迷いのある表情になったが、意を決して、言葉を続けた。
「その胸なんだけど…」
「えっ…」
「何か詰めてるの?」
早紀がそう言ったのも無理のない事だった。
どれだけ隠そうとしても無駄なくらいの巨乳が、美月の胸には備わっていたのだった。
「あ、いや、これは…
何て言ったらいいんだろ…
女性ホルモンの注射を定期的に打ってて、そのせいで胸が膨らんできたみたい。
ワタシは、他の人よりもかなり大きくて…」
「そうなの…」
早紀は、感心した様子で、美月の胸を見つめた。
その視線に耐えられず、少し体を横に向けてしまう美月だった。
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