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フロイライン

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Lesson20

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優斗が求めてきたキス以上の事を、香菜子は必死に拒絶した。

そして、慌てふためきながら

「新開君
私、こんなに歳いっててオバサンだけど、こういうのに慣れてないの。
だから、軽い気持ちでとか、流れで…とかもムリなの。

ごめん」

と、香菜子は恥も外聞も捨て、この場から逃れるために、自分の事を正直に話した。


「部長、僕の想いを受け止めてくれて嬉しかったです。

でも、こういう事をするのはやっぱり早すぎますか?」 


「…

うーん…

早いとは思わない。

いや、私には早いのかな…

とにかく…

ダメよ」


香菜子はアタフタしながら優斗に言った。


「怖いですか?」


「…

うん…」


香菜子は泣きそうな顔で頷いた。


「怖いかあ

困ったなあ」


優斗は腕組みしてソファーに深くもたれかかった。

香菜子は蚊の鳴くような声で

「ごめんなさい…」

と、言って、隣で小さくなり俯いた。


「あ、そうだ

お風呂に一緒に入りましょうよ。」


「えっ、えっ

何でそうなるの?」


優斗のとんでも発言に、声が裏返ってしまう香菜子だった。


「俺も恥ずかしいんですよ、ホント

でも、お風呂に二人で入ったら、香菜子さんの恥ずかしさっていうか心の壁を壊せるような気がするんだけどなあ。」


「無茶言わないで」


「あの、俺の気持ちを受け取ってくれたんですよね?

てか、俺たち付き合ってるんですよね、今」


「…そうだけど…」


「だったら、恥ずかしがる事ないんじゃないですか。

俺の事を信じて下さいよ。」


「信じないわけじゃないけど、今日の今日だし…

心の準備が出来てないわ」


「でも、避けて通れない事ですし」


「それはそうだけど」


ここでも香菜子は、優斗の勢いに押されてしまい、結局一緒にお風呂に入る事になった。


お風呂の準備が出来るまで、優斗は、香菜子の気持ちが冷めないように、何度もキスをした。


これまでの人生で誰とも付き合った事のない香菜子は、男性経験はおろか、キスさえした事がなく、今日、初めてキスをした。

キスは本当に最高だった。

こんなに良いものだとは思わなかった。

優斗の自分に対する思いも、唇を通して感じる事ができた。

しかし、キス以上の事は、香菜子にとって想定の範囲外だった。

年齢だけを見ればただの中年女だが、その中身は生娘であり、ウブであった。

香菜子は、それでも勇気を出す事にした。
この年齢で怖がる自体が優斗にとってホラーなんじゃないかと…

そう思ったからだった。
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