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漁り
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樋谷奈緒美の強い要望を受けて、後輩の紀藤彩がセッティングしたこのコンパだったが、男性側メンバーが総じて真面目だったのと、奈緒美を引き立たせる為に彩と遥が終始塩対応をした為に、盛り上がりに欠ける場となってしまった。
しかし、奈緒美にとってシステムエンジニアという彼らの職業は何よりも魅力的に見え、たかだか盛り上がらないくらいでそのやる気が失われる事はなかった。
皆山、藤原、平嶋の男性側三名も、奈緒美はともかく、彩と遥のレベルの高いルックスに心を奪われ、何とか盛り上げようと、気持ちは切らさずに頑張った。
ただ、男側と女側のニーズが一致しないがために空回りしてしまっていたのだ。
「休みの日とか何をされてるんですか?」
平嶋は正面に座る遥に質問したが、遥は躊躇して答えず、その間隙をぬって奈緒美が割り込んできた。
「えっと、さっきも言ったんですけど、ソロキャンプにハマってるのと、後は料理が趣味なんで、わりと手の込んだものを朝から時間をかけて作ったりしていますね。」
「ああ、そうなんですね
石川さんは?」
平嶋は業を煮やし、わざわざ遥の名前を呼んで質問した。
「えっと、ワタシは…
ホントにこれといった趣味とかないんですよ
本が好きで、時間さえあれば読んでます。」
つまらない女を演じる為に先ずは趣味なしという言葉を頭に持ってきた。
「あ、そうっすよね
僕もそうですよ、趣味って言われたら困っちゃいますもん。
すいません、しょーもない質問しちゃって。」
「いえ…」
「ところで、どんな本を読まれてるんですか」
遥がやり過ごそうとするのを平嶋は許さず、内容を彫り下げてきた。
「何でも読みますけど…
私小説が好きですね」
「私小説ですかあ
なんか難しそう」
平嶋は笑って言った。
彼自身あまり本を読むタイプではないので、残念ながらそれ以上トークを維持する事は出来なかった。
結局、ビミョーな空気の中、時間だけが過ぎていった。
彩と遥に興味津々で話を聞こうとするが、塩対応に終始。
積極的に答えるのは奈緒美だけ。
また、男側への質問は奈緒美からはあるが、彩と遥からは一切ない。
これでは盛り上がりようがなかった。
幹事の皆山と彩が時計をチラッと見た。
そろそろお開きにしようと、アイコンタクトを取り合い、彩は続いて奈緒美と遥の方を見た。
勿論、そろそろ終わろうという合図をするために。
遥は頷き、支払いのため、後ろに置いていたバックを取ろうとしたが、奈緒美は動こうとせず、代わりに彩をじっと見つめていた。
無表情ながら決意のこもった表情で…
彩はそれがどういう意味かわからなかったが、あまりにも奈緒美が視線を外さないので、しばらくしてハッとしたような表情になった。
そして
「あの、もう時間みたいなんですけど…
よかったらみんなでLINE交換しませんか
遥ちゃん、どう?
オープンチャットなら大丈夫?」
彩は引き攣った表情で遥を見た。
「ワタシは、あ、はい
大丈夫です。
でも、皆さんはアレなのでオープンチャットがいいかもしれませんね」
彩の提案、遥の賛成意見を得て、男側は誰も断る理由がなく、オープンチャットに入る事で皆が同意した。
奈緒美にとっては最低限の収穫はあったと、一人頷いていた。
しかし、奈緒美にとってシステムエンジニアという彼らの職業は何よりも魅力的に見え、たかだか盛り上がらないくらいでそのやる気が失われる事はなかった。
皆山、藤原、平嶋の男性側三名も、奈緒美はともかく、彩と遥のレベルの高いルックスに心を奪われ、何とか盛り上げようと、気持ちは切らさずに頑張った。
ただ、男側と女側のニーズが一致しないがために空回りしてしまっていたのだ。
「休みの日とか何をされてるんですか?」
平嶋は正面に座る遥に質問したが、遥は躊躇して答えず、その間隙をぬって奈緒美が割り込んできた。
「えっと、さっきも言ったんですけど、ソロキャンプにハマってるのと、後は料理が趣味なんで、わりと手の込んだものを朝から時間をかけて作ったりしていますね。」
「ああ、そうなんですね
石川さんは?」
平嶋は業を煮やし、わざわざ遥の名前を呼んで質問した。
「えっと、ワタシは…
ホントにこれといった趣味とかないんですよ
本が好きで、時間さえあれば読んでます。」
つまらない女を演じる為に先ずは趣味なしという言葉を頭に持ってきた。
「あ、そうっすよね
僕もそうですよ、趣味って言われたら困っちゃいますもん。
すいません、しょーもない質問しちゃって。」
「いえ…」
「ところで、どんな本を読まれてるんですか」
遥がやり過ごそうとするのを平嶋は許さず、内容を彫り下げてきた。
「何でも読みますけど…
私小説が好きですね」
「私小説ですかあ
なんか難しそう」
平嶋は笑って言った。
彼自身あまり本を読むタイプではないので、残念ながらそれ以上トークを維持する事は出来なかった。
結局、ビミョーな空気の中、時間だけが過ぎていった。
彩と遥に興味津々で話を聞こうとするが、塩対応に終始。
積極的に答えるのは奈緒美だけ。
また、男側への質問は奈緒美からはあるが、彩と遥からは一切ない。
これでは盛り上がりようがなかった。
幹事の皆山と彩が時計をチラッと見た。
そろそろお開きにしようと、アイコンタクトを取り合い、彩は続いて奈緒美と遥の方を見た。
勿論、そろそろ終わろうという合図をするために。
遥は頷き、支払いのため、後ろに置いていたバックを取ろうとしたが、奈緒美は動こうとせず、代わりに彩をじっと見つめていた。
無表情ながら決意のこもった表情で…
彩はそれがどういう意味かわからなかったが、あまりにも奈緒美が視線を外さないので、しばらくしてハッとしたような表情になった。
そして
「あの、もう時間みたいなんですけど…
よかったらみんなでLINE交換しませんか
遥ちゃん、どう?
オープンチャットなら大丈夫?」
彩は引き攣った表情で遥を見た。
「ワタシは、あ、はい
大丈夫です。
でも、皆さんはアレなのでオープンチャットがいいかもしれませんね」
彩の提案、遥の賛成意見を得て、男側は誰も断る理由がなく、オープンチャットに入る事で皆が同意した。
奈緒美にとっては最低限の収穫はあったと、一人頷いていた。
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