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フロイライン

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キュウクツナキュウジツ

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日曜は、同居人の男二人にご飯を作ってやる以外に、毎週ではないが、遥は欠かさずに行っている場所があった。

そして、今日も…


「ちょっと出かけてくるわ」

 
「おう、気をつけてな」

出かけると言う遥に、凛太郎が振り向いて声をかけた。



遥は家を出ると十分ほど歩き、最寄駅で電車に乗り、都心に向かった。

日曜で人通りの多い繁華街を進み、一本路地に入ったところにある雑居ビルに入り、突き当たり奥のエレベーターで四階で降りると、正面のドアを開けて中に入っていった。

受付で名前を書くと、ソファに腰掛けた。

すぐに

「石川さん、どうぞ」

と、呼び出され、慌てて携帯をバックにしまって立ち上がり、案内された部屋に入っていった。


「こんにちは」


「こんにちは」


中に入ると、白衣の中年男性が遥に挨拶をした。


「石川さん、今日もプロギノンデポー2本でいいですか」


「はい、お願いします。」

遥はそう答えると、立ち上がり隣のベッドにうつ伏せに寝た。

そして、言われるまでもなく、スカートとパンティを下ろし、お尻を出すと、白衣の男性が素早く注射を準備し、アルコー消毒の後、注射二本を立て続けに打った。

遥は少しだけ痛そうな表情になったが、注射を終えると衣服を整えて起き上がり、礼を言って診察室を出た。

そう…ここは、遥が大学生の時から女性らしい体を得る為に通い続けている美容外科「恵比寿クリニック」だった。

だいたい二週に一度、女性ホルモンの注射を打つ為にここまで通い、既に三年以上になる。

わざわざ電車に乗ってはるばる通うのには理由がある。

この恵比寿クリニックは日曜日も診療を行っており、平日が朝から晩まで忙しい遥にとっては、とてもありがたい存在だった。

タマ抜き、いわゆる去勢手術もここで行い、遥の女性への変化はこの病院無くしては語れなかった。


「石川さん」

待合室のソファに腰掛けてすぐに受付に呼ばれた遥は、立ち上がって財布を取り出した。

「3800円です」

受付の女性が金額を言うと、遥は頷いて千円札を四枚を手渡し、二百円の釣銭を受け取った。

遥は頭をぺこりと下げ、恵比寿クリニックを後にし、さらに人手が増えた街を人並みに逆走するように歩いた。

腕時計に目をやると、11時45分になっていた。

病院のある日は、どれだけ頑張っても昼近くになってしまう。


(ここでお昼食べていくか)

遥は辺りを見回しながら歩き、外から見て少し空席があるコーヒーショップを見つけて、入っていった。

ランチメニューにあった、カルボナーラとサラダ、お好きなドリンク一杯のセットを注文して、呼び出されるのを席で待った。

五分ほどで呼び出されると、トレイに料理を乗せて席に戻った。

カルボナーラを一口食べて、ため息を一つついた遥は、二口目に行こうとして思わず固まった。
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