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フロイライン

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病む世界

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多くの人が行き交う新宿駅に到着した。
他方出身者の遥にとってハードルの高い場所だ。

リサは新宿の風俗店で働いており、頻繁に会ってた時期はよくここで待ち合わせをしていた。
だが、リサも地方出身者で、新宿ではよく迷子になっていたので、遥と待ち合わせをするときは、比較的人の少ない新南改札で待ち合わせをする事が多かった。

リサは、今回も新南改札を抜けて百貨店のある方に進んだところにあるベンチに座っていると、連絡を入れてきており、遥は改札を抜けると左方向に進み、リサの姿を探しながら早足で歩いた。


「あっ」


遥の視線の先にリサはいた。

ベンチに腰掛けて携帯を見ていたが、遥に気付き顔を上げた。


「遥ちゃん…」


リサは弱々しい声で言うと、笑みを浮かべた。

遥は久し振りに見るリサの姿に驚きを隠せなかった。

遥に負けず劣らずの美貌を誇っていたリサは、可愛いタイプの遥とは違い、正統派美人と呼ぶに相応しい容姿をしていた。

背もスラっと高く、モデルのような体型のリサだったが、その面影は既になく、さらに痩せて顔色も良くなかった。
その顔色の悪さを化粧で誤魔化そうとするあまり、厚化粧となり、ケバさが増していた。


「ごめんね、遥ちゃん

急に呼び出しちゃったりして」

「ううん、たまたま近くまで出てきてたから。
リサちゃんに会いたいって思ってたところだし、タイミングバッチリよ」

遥は敢えて明るいトーンで答えた。

二人共ニューハーフではあるが、声は女性そのもので、知らない者が見ても、誰もが女性二人が会話しているように見るだろう。


「ちょっとだけ話を聞いて欲しくて」


「うん。

どこかお店に入る?」


「この時間帯はどこも混んでるし、ここでもいい?


「うん、いいよ。
隣に座らせて」

遥はくっつくようにしてリサの隣に座った。


リサは力なく笑うと、少し間を置いて話を始めた。


「遥ちゃん…

ワタシ、田舎に帰ろうと思うの。」


「えっ、田舎って?

愛媛に?」


「うん…」


「何かあった?」


「うーん…色々とね

もう疲れちゃった…」


「そうなんだ…

でも、ご両親はリサちゃんの事…」


「知らないわ。
ニューハーフになってるなんて夢にも思ってないんじゃないかな。

ワタシ、宇和島ってところの出身で、家はみかん農家なの。

このままあっちに居ても、親の後を継がさせられるだけだから…
女になりたかったワタシは、家出同然で東京に出てきたの。
それから一切連絡を取り合ってないし…」

「そんな状況で帰っても大丈夫なの?」

「わかんないけど…
もう、こっちで暮らすのはムリ…」

リサはため息をつき、肩を落とした。
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