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フロイライン

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最後の夜

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遥、凛太郎、大輝が事あるごとに来た居酒屋が家の近くにあり、最後の夜もここでささやかなお別れ会を開く事になった。

既に目を真っ赤にし、号泣状態の遥は、もう喋れないくらいに泣きじゃくっていた。

実のところ、凛太郎も大輝も、遥との別れがたまらなく寂しかったが、先手を打たれてしまい、悲しい気持ちも吹っ飛び、大笑いしながら、遥の背中と頭を撫でて落ち着かせようとした。


だが、ここでさらに泣かせようとするのが凛太郎で…

宴が始まって一時間くらい経ったとき、急にあらたまって背筋を伸ばした。


「じゃあ、俺から最後のご挨拶を。」


ペコリと頭を下げて話し始めた凛太郎に、遥が首を振って制止した。

「ちょっと、もう

やめてよ。

そんなのいいから。」


これ以上泣かせるなと言わんばかりの遥を尻目に、凛太郎はかまわず挨拶を始めた。


「遥、今まで俺と凛太郎の面倒を見てくれてありがとう。

ここに住み始めたときは男子大学生だったんだけど、いつの間にか女子大生になっちまってた。」

大輝は静かに二度頷いた。


「ちょっと可愛くなりすぎて、俺も大輝も心が揺らぐ事もあったけど、なんとか我慢したために、これまで一緒に住む事が出来ました。

今度結婚する旦那さんは、俺もチラッと見ただけだけど、優しそうなオッサンでした。」


「おい、オッサンはやめたれ」


「お兄さんでした。

俺たちにしてくれていたのと同様に、美味い飯を作って、幸せにしてやって下さい。

結婚、おめでとう。」



凛太郎の挨拶が終わると、遥は両手で顔を押さえたまま、肩を震わせるのみで、全くリアクションが取れなくなってしまった。


「じゃあ、俺も。」

次に大輝が話し始めた。

「俺も、リンタと同じような気持ちで、言いたい事はほとんど言われちゃったんだけど…

俺の場合、リンタと違って、お前にコクって大爆死してしまった過去があるから。」


「マジか!大輝」


「ああ。

真剣に好きになって告白したけど、ダメだった。」

大輝は照れくさそうに頭を掻きながら話を続けた。

「俺は相手の男性の事は全く知らないけど、遥が選んだ人ならきっと良い人だと思うし、幸せにしてくれると思う。

今までいっぱい苦労してきた分、これからの人生は幸せがいっぱい来る事を祈ってます。

本当におめでとう、遥」


大輝は清々しい顔で、そうまとめた。

遥はというと…

もう化粧が取れて顔がぐちゃぐちゃになってしまっていた。
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