新•ニューハーフ極道

フロイライン

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厳重に施錠された扉を二枚開けて、医師、佐々木に続いて中に入った佐竹と望は、思わず絶句した。


ベッドの上には、手足を拘束された紗香の姿があった。

いや、一見すると、紗香とはわからないくらいの痩せ細った女が、虚ろな目で天井を見つめていた。


「今は薬によって落ち着いた状態です。」


医師は、三人に向かってそう言った。


「そうじゃない時は、どんな感じなんですか。」


望は、その姿にショックを受けながら、医師に質問した。


「薬が切れてしまうと暴れて手がつけられない状態になってしまいます。、
だから、常時手足を拘束する必要があるんです。」


医師はそれだけ言うと、一礼して部屋から出ていった。


「一回の面会は三十分に限定されているんだ。

時間になったらまた先生がやって来て、我々は出されてしまう。」


佐々木がそう言うと、佐竹は神妙な顔をして頷いた。


「あの、佐々木さん

紗香さんが回復する可能性は?」



「…

限りなく難しいという話だ。」


「…」


「娘が打たれた注射は、BDだったようだ。」



「BD!

熱傷深度…ですか?」


「ああ。

2030年代初めに南米で流行した麻薬で、一気に世界中に広まった…」


「まさか、アレを紗香さんに…」   



「娘が激しく抵抗するものだから、奴らは致死量に達するほどの量を何本も…」
 

佐々木は、そこまで言うと、たまらず嗚咽した。


「なんて事を…」


望は、怒りに震えながら拳を握り締めた。


「覚醒剤ってのは脳の神経細胞が死んでしまうのが特徴だが、娘も…」


「…」


紗香の脳の神経細胞はあちらこちらで血流が無くなってしまっていた。
血流が無いのは、もはや血液を運ぶ必要がなくなっているからであった。


「紗香は、もう自分が誰かもわかっていそない。

この歳で重度の認知症を患っているのと同じ症状に苦しんでいる。

いや、苦しんでいるのどうかも認識できない状態かもしれんのが、せめてもの救いなのかもしれない…」


佐々木は悔しそうにそう言うと、肩を震わせた。





病院を出たところで、佐々木と別れた二人は、車に乗り込んだが…

先ほどの紗香の凄惨な姿に、よほど衝撃を受けてしまったのか、二人共何も語ろうとしなかった。

だが、しばらくすると、助手席の望が前を見つめたまま、ぽつりと言った。


「佐竹さん…

俺、警察に復帰します。

元いた組織犯罪対策部に…


もし、それが聞き入れない場合は、俺も佐々木署長のように警察を辞めてでも、犯人を見つけて、きちんと償わせてやりますよ。」


望は拳を握りしめて言ったが、外見が女性となり、声まで手術で変えられてしまった現状に、佐竹は何も言わず、ただ前を見つめているだけだった。
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