タイは若いうちに行け

フロイライン

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「楓悟クン」


「うん?」


「ワタシが言っとかなきゃならない秘密の話なんだけど」


「うん。」


緊張してきた

楓悟のほうが緊張してるように見える。

うん。そういう観察ができるって事はワタシもまだ落ち着いてるってことよね?


「ワタシね、本当は男なの」


言っちゃった…


「えっ

男?」


「隠しておくつもりはなかったの。
でも、何となく言いそびれちゃって」

ワタシがそう言うと、楓悟はワケがわからない心境になったと思うけど、真剣な表情でこちらを見つめ、話の続きを聞こうという姿勢を取った。


「高二の時、タイに修学旅行に行って、そこで腹痛になったの。
何か食べたものにあたったのかよくわかんないけど。
すぐに近くの病院に駆け込んで、点滴打ってもらって、あっという間にラクになったんだけど、点滴に眠くなる薬が入ってたのか、そのまま寝ちゃったのね。

で、起きたら…

アソコが無くなってて…女性の体にされてたの。」


「えっ、そんな…」


「ワタシも信じられない思いで、日本から駆けつけた両親と共に猛抗議したんだけど、一度手術した体は二度と元には戻らないって言われて、この体を受け入れるしかなかったの。


日本に帰ってきて、親切に色々教えてくれる方なんかに恵まれて、ワタシは女として生きる事を決めたの。

ホルモン療法っていって、女性ホルモンを体に定期的に投与することによって、おっぱいが大きくなったり、女性らしい丸みを帯びた体に変化してきて、心理的にも段々女っぽい考えに変わっていった。

特例で、すぐに戸籍も女性に変更出来たので、法的には今のワタシは女である事には変わりないんだけど、生まれもっての女性じゃないから、生理もないし、赤ちゃんだって産めないの。
つまり、中途半端な存在なの。」

ワタシは、一気に自分の身に起こった話を喋った。


楓悟は、黙って聞いていたが、弱々しい声でワタシに質問してきた。

「だから東京から岡山に?」


「そう。
向こうは男時代のワタシのことも知ってる人がいっぱいいるし、このまま向こうにいても生きにくいって」


「そうやったんか…」


「楓悟クンに好きって言ってもらってすごく嬉しかったし、ワタシも楓悟クンの事良いなって思ってて、女として生きられるかな?って思ったんだけど、よくよく考えてみると、やっぱりムリなのかなあって…」


何か、言ってて泣きそうになったけど、このまま隠し通せる話じゃないし、今言えてよかったと思う。

でも、楓悟は何も言葉を発さなかった。
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