タイは若いうちに行け

フロイライン

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sense of distance

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予定よりかなり早く着きすぎてしまった為、ワタシらはベンチに座り、どうって事ない話をして、時間になるのを待った。


「でも、雫ちゃんは偉いなあ。
俺と同い年やのに、もう働きよんやから」


「そんな事ないよ
ワタシって通信制だし、時間が余ってんだもん。」


「いやいや、凄いことや。
雫ちゃんの事、俺は好きなんと同時に、尊敬もしとんじゃ。」

ワタシは、楓悟の顔を見た。

視線は正面を見ているけど、目が泳いでる。

好きって言われた。

会ってこんなに短期間なのに…

ワタシも女として生きる事を決めたって言っても、男の心象っていうのが消えたわけじゃない。
女の割合の方が増えたって感じても、冷静に見たら男であるという感覚のほうが、まだまだ大きな割合を占めているんだと思う。
いわゆる諦めの境地が、女であるという自覚を強引に持たせたというのが、ワタシの現在地なのかなって思う。

でも…

でも、楓悟は、そんなワタシの心の移ろいとは別のところに存在している。
彼とは会った瞬間から波長が合うし、気を遣わないし、話してて楽しい。

これって、自分のオトコの部分が出て、同性の友人として、そう感じてしまったのかな?
そう思わないでもなかった。

でも、今、ワタシのことを好きって言われて、ハッとした。


ワタシも楓悟の事が好きだ。

今、ハッキリと強く認識した。


「楓悟クン

今何て言った?」


「えっ…」


「ワタシのことを。」


「えっ、あっ…

尊敬しとるって…


それと…

好きじゃ…って」



「ワタシも楓悟クンの事が好きだよ。」


「えっ、マジ?

それやったら、付き合ってくれるん?」


「楓悟クン

ワタシ、あなたにちゃんと話さないとダメな事があるの。
それを聞いても付き合っていいって言ってくれるなら、お付き合いしたいって思う。

ちょっと今は全然心の準備が出来てないし、今度会った時に話したいんだけど、いいかな?」


「あ、うん。

そんなの雫ちゃんのタイミングで言うてくれたらええよ。
俺、全然待ちます。待てます。」


「ありがとう。

そろそろ映画が始まる時間が近くなってきたね。
上に行っとこうか?」


「そうじゃな」


ワタシ達は、ベンチから立ち上がり、エスカレーターの方に向かった。
もう自然に手を繋げた。

なんか嬉しいのと同時に、ワタシの秘密を話したときの彼のリアクションを想像してしまって、何とも言えない不安な気持ちになってしまった。

いや、楓悟を信じてるからこそ、ワタシも好きって素直に言えたんだよ、きっと。

ここは彼を信じるしかない。

今日は、フツーに楽しめばいいよね
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