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公園
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百恵と恭子は、公園まで来た。
「ここまで来たらもう安心よ。
佐野さん、こんなところまで来て…
どないしたん?」
ベンチに腰掛けると、百恵はいつもと変わらぬ、女っぽい声と喋り方で恭子に質問した。
「どないしたって…
袮留君に会いに来たんやないの…」
恭子は、救われた安心感と、女になってしまった百恵の姿に対する衝撃、ついに会えたという喜びと、様々な感情が重なって涙を流した。
「そうやってんね。
ごめんね、そんなことも知らんと。
でも、どうやってここがわかったん?」
「袮留君のお父さんが教えてくれてん。
そこの駅に立ってるって。」
「へえ、お父さんが…」
百恵は何か思うところがあるといった表情をしたが、恭子の気持ちは収まらず
「袮留君、なんでこんな事になったん?
袮留君てオカマとちゃうやろ?
なんで…」
「うーん
まあそうやねんけど、ここに連れてこられて去勢されて女性ホルモン打たれて、男の人の相手してるうちに心境の変化があったっていうか…」
「そんなん、そう思わされてるだけやって。
暗示にかけられてるねん。
絶対そうやって。
何とか逃げられへんの?そこから」
「うん。
借金のカタでやし…
それにもう去勢されてしもたし、女の人と結婚も出来へん体やねん。」
「…」
「だから、諦めの境地っていうか、女っていうか、オカマ?っていうの
このまま一生生きていくつもり。」
「そんなん、残酷すぎるわ。
なんで袮留君がそんな目に遭わなあかんのよ。」
「これも運命やと思って受け入れるしかないねん。
でも、男やったときには佐野さんの事、ウチ好きやってんで。
こんな風になってしもたから素直に言うんやけど。」
「そんなの、私も好きやったよ。
今も袮留君の事考えへん日はないわ。
ねえ、何とかならへんの?
ホンマに。」
「うん。もう何ともならへん。」
百恵は達観したように、あっさりとした口調で言った。
「袮留君…」
「佐野さん、もう暗くなったし、この辺は物騒やから早く帰った方がええよ。
ウチも橋の向こうまでついて行くから、早よ帰ろ。」
百恵は恭子に帰るよう促した。
恭子もこれ以上何を言っても前に進まないのがわかり、素直に従い立ち上がった。
二人は橋の向こうまで並んで歩いた。
足が悪い恭子のためにゆっくりとした歩みで。
さっきとは打って変わって、あまり喋らなくなった恭子だったが、橋を渡り切った後、別れ際に、百恵に向かってハッキリと言った。
「袮留君
私はあなたを諦めないから。
きっと私がここから救い出してあげる。
それまで待ってて」
と。
恭子はそれだけ伝えると、その場から去っていった。
百恵の方を一度も振り返る事なく。
「ここまで来たらもう安心よ。
佐野さん、こんなところまで来て…
どないしたん?」
ベンチに腰掛けると、百恵はいつもと変わらぬ、女っぽい声と喋り方で恭子に質問した。
「どないしたって…
袮留君に会いに来たんやないの…」
恭子は、救われた安心感と、女になってしまった百恵の姿に対する衝撃、ついに会えたという喜びと、様々な感情が重なって涙を流した。
「そうやってんね。
ごめんね、そんなことも知らんと。
でも、どうやってここがわかったん?」
「袮留君のお父さんが教えてくれてん。
そこの駅に立ってるって。」
「へえ、お父さんが…」
百恵は何か思うところがあるといった表情をしたが、恭子の気持ちは収まらず
「袮留君、なんでこんな事になったん?
袮留君てオカマとちゃうやろ?
なんで…」
「うーん
まあそうやねんけど、ここに連れてこられて去勢されて女性ホルモン打たれて、男の人の相手してるうちに心境の変化があったっていうか…」
「そんなん、そう思わされてるだけやって。
暗示にかけられてるねん。
絶対そうやって。
何とか逃げられへんの?そこから」
「うん。
借金のカタでやし…
それにもう去勢されてしもたし、女の人と結婚も出来へん体やねん。」
「…」
「だから、諦めの境地っていうか、女っていうか、オカマ?っていうの
このまま一生生きていくつもり。」
「そんなん、残酷すぎるわ。
なんで袮留君がそんな目に遭わなあかんのよ。」
「これも運命やと思って受け入れるしかないねん。
でも、男やったときには佐野さんの事、ウチ好きやってんで。
こんな風になってしもたから素直に言うんやけど。」
「そんなの、私も好きやったよ。
今も袮留君の事考えへん日はないわ。
ねえ、何とかならへんの?
ホンマに。」
「うん。もう何ともならへん。」
百恵は達観したように、あっさりとした口調で言った。
「袮留君…」
「佐野さん、もう暗くなったし、この辺は物騒やから早く帰った方がええよ。
ウチも橋の向こうまでついて行くから、早よ帰ろ。」
百恵は恭子に帰るよう促した。
恭子もこれ以上何を言っても前に進まないのがわかり、素直に従い立ち上がった。
二人は橋の向こうまで並んで歩いた。
足が悪い恭子のためにゆっくりとした歩みで。
さっきとは打って変わって、あまり喋らなくなった恭子だったが、橋を渡り切った後、別れ際に、百恵に向かってハッキリと言った。
「袮留君
私はあなたを諦めないから。
きっと私がここから救い出してあげる。
それまで待ってて」
と。
恭子はそれだけ伝えると、その場から去っていった。
百恵の方を一度も振り返る事なく。
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