泥々の川

フロイライン

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ジレンマ

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恭子の件が解決に結びつかず、久美子は、焦りを感じながら毎日をすごしていた。


しかし、久美子の気持ちとは裏腹に、自身の芸能界での人気は爆発し、関係者からは、第二の黄金期に突入したと言われていた。


「やっぱり人気が出ちゃったな。」   


ジローは久美子を後部座席に乗せ、家路に着くため、車を走らせながら言った。


「それは本当にありがたいんだけど、恭子の件が最近疎かになってるような気がして。」


「それは仕方ないさ。
恭子ちゃんの事はそりゃ心配だけど、今ここで生きてる人間も大事にしなきゃなんねえだろ。

俺はともかく、お前はまだ若いんだし、もっともっと稼げる時に働かないとな。」


「うん。
ありがとう、ジローちゃん

ホント、ジローちゃんがいてくれてよかったわ。」


「それは俺のセリフだよ。

お前と再会してなけりゃ、今頃多分、ボケが始まってたかもしれねえ。

久美子は、俺に生き甲斐を与えてくれたんだ。

本当にありがとう。」


「やめてよ、ジローちゃん

ワタシ、泣いちゃう。」


「おいおい、泣いとるがな。」


ジローはルームミラーで、後ろの久美子を見て、笑って言った。


「ジローちゃん

話が戻るんだけど、ワタシ

恭子は生きてるって確信してるし、ひょっとしたら、身近にヒントが隠されてるかもしれないって思ってるの。」


「かもしれねえな。

江藤さんも、確かそう言ってたよな。

まあ、あっちはプロの探偵で、こっちも高い依頼料を支払ってんだから、何とか辿り着いて欲しいよな。」


「うん。
江藤さんにもすごく感謝してるの。

いくら仕事とはいえ、あそこまで真剣に取り組んでくれるなんて、思ってもみなかったから。」


「ああ。

久美子、今は芸能の仕事を一生懸命がんばろうや。

何事も全力で取り組んでりゃ、きっとこっちに風が吹いてくるさ。」


「うん。

ところで、ジローちゃん、お腹すいた?」


「あー、そうだな。」


「帰ったら何か作るからね。」


「外で食って帰りゃあいいのに、相変わらず倹約家だよな、お前は。」


「ちがうよ。

ジローちゃんには栄養バランスの取れた食事をしてほしいの。

外食ばっかだと、塩分、カロリー、全部高いから。」


「血圧高めだしなあ、最近。

ありがたいことですわ、お嬢さん。

到着しましたよ。」


ジロー宅に到着した二人は、肩を寄せ合って玄関に入っていった。
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